中間選挙開票後の米国株価の下落は、負債のレバレッジ経済が崩壊する兆候か
Written by admin on 2018年11月19日 – 09:00
おはようございます。有料版の、プロローグから8ページくらいを 抜粋して送ります。テーマは、中間選挙後では異例である株価下落 が、米国の過剰流動性相場つまり株価バブルを終わらせる兆候にな るのかどうかの、検討です。 中間選挙開票後の米国株は下落の方向に向かっています。日本株は、 ヘッジファンドによる売買が70%を占めるので(構造的要因)、米 国株の上昇のときは上がり、下落のときは同時に下がるというコ ピー相場の中にあります(個別株ではなく、市場の株価指数)。 【米国株の上昇と下落の、5つの要因】 米国株のバブル的な上昇は、株買いの増加を促した、以下の3つの 要因からきていました。「過剰流動性相場」として、まとめること ができる現象です。 (1)10年で15兆ドル(165兆円)のトランプ減税の開始、 (2)海外での企業利益を米国に還流させた場合35%の税がかかっ ていましたが、2018年の利益についてはリバトリ法(愛国法)によ って0%にしたこと。過年度の利益についても、8%から15.5%に減 税しています。これが、海外のドルの米国への大還流をもたらし、 株買いになっています。 (3)2017年は50兆円、18年は70兆円の自社株買い。 他方で、米国株の下落をもたらす要因は、以下の2つです。 (1)米国FRBの、18年8月の利上げ(0.25%)と、2019年の3回の利 上げの予告。期待金利の上昇は、レポ金融の縮小を通じて、米国内 の流動性を減少させます。 (2)中国輸入(50兆円)の50%対する2018年は10%、19年は25% の課税と、課税品目の全輸入への拡大予想。この関税は、中国と米 国の2019年からのGDPを低下させます。 本稿で検討するのは、以上5つの要因が、今後、どう働くかという ことです。 【HFT】 ヘッジファンドは、瞬間売買をするHFT(1/1000秒単位の売買)を 使っているので、「米国株→日本株」の波及は時間差をおかず起こ ります。確率では50:50の上昇と下落を繰り返して、その日の、株 価の罫線の傾向を作っています。 テクニカルと言われる罫線アナリストの予想は、はずれることが多 い。主因は、世界の株式の売買の60%くらいがHFTのプログラム取 引になったからです。個人投資家が価格の罫線から判断して、ゆっ くり売買する相場は、1980年代までのものになりました。 実は、ヘッジファンドのファンドマネジャーは売買を判断していま せん。代わりに、「クオンツ」と呼ばれるプログラム取引により、 自動売買が発動されています。株価の結果である罫線のグラフから 判断しているのは、HFTのシステムをもたない個人投資家です。正 解か間違いかは不明な、個人投資家の判断の根拠が、経済紙に書か れるものです。 【ロジックはほぼ共通だが・・・】 プログラムのロジックは、(他に真似されるため)公開しないので、 クオンツを作った人以外には、分からない。しかしロジックの中身 は「横並び」であることが多い。同じタイミングに売り、同じ時に 買う。このため上げも下げも増幅される傾向が強くなっています。 【中間選挙後の株価】 2年ごとの定期的な中間選挙のあとは、11月から12月の年末であり、 過去は開票結果にかかわらず、米国株は上げていました。 わが国の、時期が定まらない国政選挙の前にも、与党の関与により、 株価が上がることが多かったことと似ています。与党は、株価を上 げることで、政権への支持を増やす狙いをもつからです。「政治サ イクル」と言われます。 【11月8日までの急騰】 NYダウは、10月29日には2万4429ドルであり、10月16日からは5.4% 下げていました。10月30日からは上げに転じ、開票直前の11月8日 には、2万6129ドルにまで8.9%上げていました。 8日間で+8.9%は、急騰です。「中間選挙後は、株価は上がる」と いう「アノマリーな買い」を期待し、買いが増えたからです。 (注)アノマリーとは、経済合理的な根拠がない売買を言います。 たとえば「太陽の黒点が大きくなったから株価は上がる」といった 原因と結果の関係がわかっていない理由付けの売買です。ランダム に結果が出る「ルーレットの賭け」と同じ売買方法です。 【11月8日以降下落】 その後の、11月12日(月)までの4日間、NYダウは2万5387ドルへと 2.8%下げています。3%程度上がる方向の中の下げですから、「4 日間で2.8%+3%=5.8%」の急落と見なければならない。 DUKASCOPYのリアルタイムチャートで見ると、11月14日現在は、2万 5339ドルを中心に上下100ドルくらいの幅で変動しています。S& P500とナスダックの指数も同じ傾向です。 https://nikkei225jp.com/nasdaq/ 【特にアップル株が下げている】 世界史上最大の、1兆ドル超え(110兆円超え)の時価総額だったア ップルは、10月2日の229ドルで、ピークをうったように見えます。 世界のスマホの売上が、3億5000万台へと前年同期比で6%も減って いたからです(18年7月~9月)。(注)スマホで最大手のアップル は、下落している販売台数の公表を控えています。 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/chart/AAPL 「リーマン危機のあとの過剰流動性」の中で、もっとも大きく上げ ていたアップル株は、11月12日には194ドルへと15%下げています。 1か月で、株主の資産から16.5兆円が蒸発しました。アップル株の 先物やオプションを売買していた投資家は、追い証を迫られていま す。 下がった株を、成り行き価格で損をして売って、現金に換えねばな らない。少なからず破産者も出ているでしょう。多くの人はレバレ ッジで売買しているからです。穏やかな10倍でも、15%の下げは、 証拠金の150%の損になります。 【2017年と18年は、自社株買いが、株価を上げてきた】 アップルは、社債の発行で現金を得て、その現金で「自社株買い」 をしてきた代表です。2018年の、米国市場の大手銘柄の自社株買い は、合計で70兆円という巨額になっています。これが、2018年の米 国株が上昇するときの原因です。 前年の自社株買いは50兆円/年でした。当時も「大きすぎる自社株 買い」と言われ、「2018年はさすがに減るだろう」と見られていま したが、逆でした。70兆円へ増加を見て、来年度の2019年には、自 社株買いが100兆円に増えるとしている投資家もいます。 (注)日本の会社の自社株買いは、2016年3兆円、17年2兆円、18年 が2.5兆円と、米国の1/30です。 【日本株は、日銀の株ETFの買い】 日本株は、日銀による株ETFの買い(月間平均5000億円:年間6兆 円)で、底支えがされてきました。午前中の前場で1%くらい日経 平均が下げると、12:00ころから、日銀の覆面買い(数百億円)が 入って下げが止まり、日銀の買いを当てにした投資家の買いによっ て上げる日も多かった。 株ETFは、先物と違って、限月までに反対売買をして清算がするこ とがない。現物株のように保有し続けることができるので、株価を 上げやすい。 (注)日銀が60%を買っている株ETFは、証券会社が、個別株をグ ループ化して作った指数です(=デリバティブ)。ETFが上がると、 低い現物株を売って高くなったETFを売って利ザヤを得る、自動化 された「裁定取引」が瞬間にはいるので(これが証券会社の自己売 買になる)、ETFと現物株の価格は、時間差をおかず一致していま す。 【テーマ】 米国中間選挙後の、株価の下落は、近い将来に対して何を意味して いるか・・・本稿はこれをテーマにします。「2019年は、米国株場 バブル崩壊から金融危機、つまり10年目のリーマン危機」になるだ ろうと見ている人も、出始めたからです。 【世界のGDPの伸びを低下させるトランプ関税】 日・米・中そして世界の、2019年のGDPの伸びを、1ポイント(IMF 予想)から2ポイント(当方の予想)は低下させるトランプ関税と いう新しい要素が加わっています。これが中間選挙の後の、アップ ルを筆頭にした米国株を下げている主因でしょう。 【企業利益の減少になる】 輸出の減少つまりGDP伸びの低下は、企業の売上収益(粗利益)の 減少です。伸びてきた売上収益が10%減れば企業の利益の黒字はな くなります。リーマン危機のあとに起こった、企業への波及がこれ でした。企業利益が半分に減れば、PER(株価/次期予想純益)は2 倍になって、株価には50%下落調整の売り圧力が加わります。 【リーマン危機】 リーマン危機のときは、日米の株価時価総額(株主資産)が50%に 減少しました。このように、GDPの期待成長率の低下は、株価を大 きく下げます。経済の中で、現在のようにマネー量が増えている過 剰流動性相場では、GDPの期待成長率の2ポイント(%)の下げが、 株価を半分か、それ以下に暴落させ、恐慌めいた経済になっていく のです。 【対策としてのFRBのQE】 リーマン危機のあとの、米国の銀行資産での信用収縮は、世界の実 体経済を恐慌に陥れる規模でした。FRBは3度のQE(長的緩和で約4 兆ドル(440兆円)を信用創造してマネーを増発し、恐慌になる事 態を押しとどめたのです。 FRBの信用創造、つまりマネーの増刷の副作用として、株価と不動 産が値上がりしました。株価は2018年までに3.3倍に上がり、不動 産はリーマン危機前の高値を超えています。 【FRBには、次の金融危機への、対策の手段がない】 今度は、不動産からではなく、株価の下落が先導するリーマン危機 の再来になっても、FRBは08年のリーマン危機のような4兆ドル (440兆円)のQE(量的緩和)という手段は取ることができません。 FRBの通貨発行量を示すバランスシートは、$4.1兆(451兆円)と 膨らんだまま来ているからです。 FRBは、出口政策とは言っても、危機対応で4.1兆ドルに増やしたマ ネー量(「現金+銀行の当座預金」のベースマネー)を、減らして はいません。満期が来た国債と、償還と配当があったMBS分の買い を続けているからです。 https://www.federalreserve.gov/releases/h41/current/ イエレン前FRB議長は、「再びの金融危機のときの対策がとれるよ うに出口政策を進める」といっていました。しかし、FRBが買った 国債を売って量的緩和マネーを減らす出口政策は、金利を高騰させ、 米国債の価格を大きく下げるためとることができていません。 実行できているのは、短期金利であるFF金利の、1回0.25%の上げ だけです(合計8回)。これは「出口政策の15%程度」にしかなら ないでしょう。 【短期金利上昇にもかかわらず、10年債の長期金利が上がっていな い理由】 米国債は、金利が0%付近の円国債を日銀に、1年に40兆円売った日 本の銀行が、「海外投資」として買い増し、米国の長期金利の上昇 は抑えられています。 日本からの米国債の買いがなければ、3.15%の長期金利(10年債の 金利:11月12日)は、4%以上に上がっているはずです(短期金利 2.25%:長期金利4%)。 https://jp.investing.com/rates-bonds/u.s.-10-year-bond-yield FRBは、通貨を増発する量的緩和は、停止しました。しかしゼロ金 利を敷く日銀のマネーが、FRBの下請け機関になって、民間銀行経 由で、金利のつく米国債を買うことにより、量的緩和の役割を果た しています。 「国債のゼロ金利を敷く日銀が、銀行のもつ国債を買って現金を供 給→銀行は、国債を売って、増えた現金で金利のつくドル国債を買 って、米国債をもつ米国の金融機関に現金を供給」。 これは、FRBが国債を買って、米国の金融機関に現金を供給してい ることと同じ量的緩和に該当します。米国は日米の金利差を利用し て、量的緩和を継続しているのです。金融的な波及とは、こうした マネーの流れになります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <974号:負債のレバレッジ経済が崩壊する兆候か> 2018年11月14日:有料版 【目次】 1.過剰流動性相場の作られ方 :日本の資産バブル(1985年~1989年)の場合 2.リーマン危機のあとの米国の過剰流動性(今も続いています) 3.2019年の年初にかけて、バブル崩壊相場になるのか 4.2019年の、世界のGDP伸び率の低下 【後記:その後の改造スピーカー】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.過剰流動性相場の作られ方 :日本の資産バブル(1985年~1989年)の場合 日本の銀行融資は、不動産を担保にしていました(現在もほぼ同 じ)。1985年のプラザ合意は「ドルを1/2に切り下げるもの」だっ たため、2倍の円高になった日本からの輸出は、急減したのです。 日銀は、米国が求めていた「内需拡大」の掛け声の中で、利下げを し、銀行に積極的な企業融資を行わせます。 【土地神話から過剰流動性が生じた】 そのマネーは、「日本の地価は上がり続ける」という土地神話の中 にあった不動産の買いに、向かったのです。 貸す銀行も、「不動産は上がり続ける」と考えていたため、担保価 値が1億円の土地に対して、1億5000万円というような過剰融資をし たのです。土地をもつ人や企業に対しては、「どうか、使ってくだ さい」と融資姿勢だったのです。 借りた企業や個人は、そのマネーで不動産を買っていました。この 買いにより、不動産はスパイラル上昇のサイクルに入ったのです。 1985年に100だった商業地は、1990年には4.3倍に上がっています。 住宅地も3.8倍に上がったのです。大都市部では6倍から8倍でした。 下がったのは、米国FRBの、利下げによる2000年代住宅価格バブル (2006年)と同じ2年後の、1992年からです。 この融資は危険だと言っていたのは、知る限り、独眼流のペンネー ムでコラムを書いていた立花証券の石井久社長でした。石井氏は、 「日本は、これから人口減に向かうから、土地の必要性が減って、 地価は下がっていく」と見ていたのです。 企業は不動産をもつので、地価上昇で純資産が増えたようになり、 株価(日経平均)も1985年の1万円から4倍の3万8915円にまで、地 価と同じ割合で上がって時価総額は600兆円に膨らんだのです。 (注)上場株数が約2倍に増えている現在の時価総額は約650兆円。 価格は日経平均で、バブルの頂点の、56%の2万1846円(18年11月 13日) http://honkawa2.sakura.ne.jp/5075.html 資産バブルの発生と崩壊の原因は、いつの時代も、中央銀行のマ ネー政策です。 以上が、銀行が土地を担保にして融資マネーを創造している日本の 過剰流動性バブルです。 ■2.リーマン危機のあとの米国の過剰流動性(今も続いています) 米国での過剰流動性の発生は、土地という直接担保ではなく、銀行 間のレポ金融(債券担保制)がからむので、すこし入り組んでいま す。経済・金融のメディアが、一向にこれを書かないので、ここで 改めて示します・・・(中略)。 ・・・無料版は、ここまでにさせていただきます。続きの有料版の 全体は、以下のページで申し込めば購読ができます(↓)。 https://www.mag2.com/m/P0000018.html 有料版のバックナンバー(以下に過去の全部があります↓) https://www.mag2.com/archives/P0000018/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源無料版:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です 】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、テーマ選択 と内容記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は励みと参考になり、うれ しく読んでいます。時間の関係で、返事や回答ができないときも、 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