中央銀行とガイジン買いによる金融相場に注意[特別号]
This is my site Written by admin on 2012年3月20日 – 10:00
おはようございます。2011年の冬以来、PIIGS債の3月危機が言われ
ていたにもかかわらず、日米欧の株式相場が上がっています(10~
15%)。通貨では、同時に、ユーロ高(=円安)にも向かってきて
います。

多くの方にとって、
(1)日米欧の株価が10~15%上がり、
(2)2011年の秋から冬には、ユーロとドルの下落リスク回避のた
めに買われ、80円割れという史上最高に上がっていた円が、12%安
くなった主因が何か、見定めるのに困難を感じるのが普通でしょう。

とりわけ、今後も、株高と円安が続くのかどうか、関心の所在は、
ここでしょう。2011年の、円高、株安での損を回復する機会が来た
と、思われている方も多いかもしれません。

わが国で、株式投資を行う個人は約700万人、通貨先物やオプショ
ンのFX(外為)口座を持っているのも、6業者合計で700万人です。

FXには、30代から40代が多い。女性も20~30%です。2011年は、
おそらく90%の方が、損をしています。

2011年冬には、損のためほぼ50%が休眠口座になっていましたが、
2012年の円安と株高を見て、2月、3月から、やおら再開している人
が多い。後追い(少し下がったときに買う押し目買い)の懸念も感
じます。本当は、ヘッジ・ファンドに先行せねばならないのです
が・・・

いつまでが、回復の機会になるのか? 2012年度の経済にも大きく
関係します。

以降の論を進めるため、最初に、2項の事実データの確認をするこ
とから始めます。マネーの動きつまり金融から、経済を先行して理
解できます。

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     <中央銀行とガイジン買いによる金融相場に注意>
              無料版 2012年3月20日号

【目次】

1.為替相場、つまり、各国通貨の売買市場
2.日本の株式相場、買いと売りから見る
3.2012年の、投資家別売買を分析する
4.結論
5.明確に、政府・中央銀行が主導した「金融相場」である
6.今後はどうなるか・・・

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■1.為替相場、つまり、各国通貨の売買市場

円は、2011年9月から2012年1月末までの約5ヶ月間、1ドルが76円か
ら78円の間を波動していました。

【昨年冬の、超円高の原因】
11年の8月から12年1月に、円が高騰した主因は、ヘッジファンドに
よる、(1)ユーロ債とドル債の売りと、(2)円国債(短期債)と
日本株の買い越しでした。海外から、円が買い超になっていたので
す。

とりわけ2011年は、ガイジンのヘッジファンドが、世界で最低の名
目金利の円国債(短期0.12%:長期1%)を買い越すという、
2010年まではなかった、特殊な動きを見せていました。

特殊と言うのは、ヘッジファンドが円国債を買い越す(2011年に約
30兆円:驚き)ことは、かつて、なかったからです。

このため、外人の円国債の手持ちは、60兆円から100兆円に膨らん
でいるでしょう。2012年も、円国債を買い越しているからです。

円が最高値(=ドル・ユーロが直近の最安値)をつけていたのは、
いずれも、12年1月中旬でした。この、ヘッジファンドによる円国
債の買い越しこそが、$1=75円、1ユーロ97円の円高の理由です。

円が高くなることは、円が買われて(=ドルやユーロが売られ)、
わが国に、海外の資金が流入することです。本来、通貨が高いほう
が国益です。通貨安は、その国のマネーが、外為市場で売り超にな
って、マネーが海外に逃げることだからです。

円安になって輸出額が増えるより、原油を筆頭に資源・穀物国際場
が上が、わが国の貿易が恒常的な赤字になると、日本経済は、大き
く沈みます。海外からの資金流入に依存する経済になるからです。

ただし、わが国は、2010年までは輸出超過の経済であり、しかも
20年の経常収支の黒字から累積した海外投資(563兆円:主はドル
の証券)があるため、ドル安では損をする会社と金融機関が多い。
このため、円安・ドル高を歓迎する風潮が強い。

▼世界の外為の売買額

円を中心に見て円高や円安とは言いますが。本当は、国際基軸通貨
の米ドルが、1日500兆円の外為の売買で、変動しているのです。
円・ドルの間の、世界市場での売買は、その1/10の50兆円に過ぎ
ません。1日50兆円といっても巨額ですが・・・。

その多く(77%)は、通貨の実需ではないデリバティブの投機です。
貿易の実需のための必要な通貨の売買(世界で1年に1200兆円)に
対し、通貨デリバティブの残高は$64兆(5120兆円)と、4.3倍も
あります。しかもこれが、年々大きくなっているのです。

この通貨デリバティブの未決済の残高の内容は、
(1)先物売買の残$31兆(2480兆円)、
(2)通貨スワップ$22兆(1760兆円)、
(3)通貨オプション$11兆(880兆円)です。
(2011年6月:BIS)

こうした、世界の店頭デリバティブ取引が、各国通貨の水準を決め
ています。店頭(OTC)とは、一般が参加できる公開市場ではなく、
金融機関の間の、相対(あいたい)で行われるデリバティブ取引で
す。

契約者と損益の内容が分からない金融の闇(=シャドー・バンキン
グ)とも言えます。ほとんど全部が、企業年金を2000億円も飛ばし
たAIJも使っていたオフショア金融(ケイマン島など世界の100カ所
のタックスヘイブン)です。

株の売買でも、公開されていない店頭売買のデリバティブ分の決済
前の残高が、$6.8兆(544兆円)もあります。

日本の東証の売買の2年分と言えば、株式デリバティブの大きさも
わかるでしょう。統計データは、BIS(国際決済銀行:スイスの
バーゼル)に、半年サイクルで掲載されます。(注)拙著『国家破
産』ででは、こうしたデリバティブ化した金融の全体を論述してい
ます。

(注)期限日の決済を待つデリバティブの残高が6京円(2011年6
月)にまで巨大化したのが2000年代の世界金融です。2%の含み損
でも1200兆円です。このため、2000年代の、世界の金融機関の本当
の損益は、AIJやオリンパスのように、分からなくなっています。
AIJやオリンパスの損失飛ばしは、1000億円や2000億円とは言って
も、デリバティブの残高6京円から見れば、ほんの一滴です。
http://www.bis.org/statistics/otcder/dt1920a.pdf

【相場の反転】
円高の2011年1月中旬は、
(1)欧州中央銀行(ECB)が、PIIGS債危機を回避する目的で5000
億ユーロ(約50兆円)の追加投入を決める前であり、
(2)日銀が、資産買い受け基金を55兆円から65兆円に増枠して、
1%のインフレターゲットを言う前でした。

この政策表明の後、相場は反転しています。

(注)欧州ECBは11年12月に、5000億ユーロを投入しています。今
年との合計で、1兆ユーロ枠(100兆円)の政策資金です。これは大
きい。

ECBがなりふりを構わず、ユーロを増加発行し、欧州の金融機関が
もつPIIGS債を買うか、あるいは担保にして貸し付けているのです。

普通の時期は、中央銀行による、こうした通貨の巨大な増加印刷
(金融の緩和)は、その国の通貨の価値が下がる原因になります。

しかし、2011年秋から冬のユーロはPIIGS債危機の非常時でした。
金融機関が切望していたECBによる1兆ユーロのマネー投入によって、
ユーロの3月危機が回避されたとの市場の認識から、2012年1月中旬
までは売られていたユーロ債が、買い戻されたために、上がってい
ます。

直近の12年3月19日は、1ドルが83.4円(2ヶ月で12%上昇)です。
ユーロは110円(同13%上昇)です。

【円債の売り超】
円は、2月と3月で、ほぼ12%下がっています(=ドルは12%上昇、
ユーロは13%上昇)。

これは外為市場で、円債の売り超の分(円安要素)が、米欧債の買
い超(ドル・ユーロ高要素)になったことを示します。

▼わが国財務省の、為替介入も加わっていた

日本の財務省が、1ドル75円の円高阻止の目的として、2011年には、
16兆円の「円売り・ドル債買い」の介入をしています。介入の中心
は、11年11月の、緊急だった9兆円の円売り・ドル買いした。

このため、財務省が管理する「外貨準備」は、2011年1月の$1.1
兆(88兆円)から、11年11月は$1.3兆(104兆円)へと、$2000
億増えています。

▼相場の価格:金融資産の性格

通貨にせよ、株にせよ相場がこのように、今回のように、短期で大
きく動くときは、当局による介入があります。株にせよ通貨にせよ、
「市場で買い超ななら上がり、売り超なら下がる」からです。

理由は、短期の利益を求めた、市場の買いと売りの差であり、経済
のファンダメンタルズ(株なら次期予想利益、通貨では経常収支と
いう基礎指標)からではないのです。

【介入と追随】
市場で動く総資金に対し、金融当局(中央銀行と政府)の介入額は
下の(注)に示すように少ない。

しかし、通貨や株を売買する投資家・投機家は、一度に大きな資金
を動かす当局の政策的な動きに追随することが(まだ)多いのです。
特に、政府のインサイダー情報も使うヘッジ・ファンドは、直接に、
金融当局の意向を受けて、あるいは反対に、買いや売りに回ること
も多い。(注)PIIGS債(特にギリシア債)では、米国のゴールド
マン・サックスは、CDSをかけた売りでインサイダーでした。

これが、当局の介入(あるいは介入の言明)を先導として、相場が
動く理由です。こうした動きを「当局による金融相場」と名付けま
しょう。

●【結論】11年2月からの円安・ドル高、および円安・ユーロ高は、
金融相場です。注意すべきは「当局の先導」であったことです。

(注)世界の為替相場では1日に500兆円の外為売買です。円とドル
の交換はその10%の1日50兆円と巨大です。当局が1日に数兆円の介
入をしても、後が続かねば、少ないのです。

市場(投資家)に、政府の政策介入の後を追う「追随の売買」があ
ると、相場が動きます。

■2.日本の株式相場、買いと売りから見る

【日経平均の19%上昇】
以上の「金融相場」による2012年1月中旬以降の円安・ドル高・
ユーロ高と歩調を合わせ、全く同じ時期から、日経平均は8500円以
下だった価格が、1万141円(1年3月19日)へと、2ヶ月で1640円
(19%)も上がっています。

【次年度利益の回復期待もあるが・・・】
次年度である2013年3月期の企業利益予想(東証一部上昇1676社の
合計経常利益)が、12年3月期より30%は上がったからだ。相場は
「業績回復相場」であると言う人も多い。

確かに、(1)3.11の大震災、(2)原発問題、(3)秋のタイ大洪
水、(4)加えて1ドル75円の円高という、日本企業の合計利益を減
らす4要素が、2012年は、程度の差はあれ解消しています。

このため、2012年3月期に比べ、政府の復興対策費(5年間で19兆円
:建設需要になる)もあるため、1年後の2013年3月期の企業利益が
好転する可能性は高い。

【リスク要素も大きいが・・・】
しかし、2012年は、「イスラエル・イラン戦争の危機(原油高
騰)」、そして、原発の停止による原油とLNG(液化天然ガス)の
輸入急増から、貿易赤字が大きくなって、海外からの所得収支と合
わせた日本の経常収支の黒字(2011年は9兆6289億円と急減)が、
大きく減る可能性も高いのです。

相場は、科学的なものではなく、心理的なものです。この意味は、
何を要素として大きく見る人が多いかということです。現在の日本
の株価では、2013年3月期には、12年3月期より経常利益が30%大き
くなるだろうという可能性を、大きく見ている人が多い。

何を、大きな要素として見るかは、情報と時間とともに移ろいます。
これを、見極めねばならないのが、通貨や株への投資および投機で
す。

・投資は保有のための買いですが、
・投機は短期のほぼ3ヶ月のキャピタルゲインを得ることが目的の
ものです。買って上がった後に売ります。期間3ヶ月が多いのは、
ヘッジファンドの決算が4半期毎に来るからです。

1万円の大台を回復した株式市場は今、「利益の回復期待」に賭け
ています。この株価の現在と今後を見極めるには、売りと買いの主
体と、金額を見なければなりません。

東証は、約2週間遅れで、投資主体別の売りと買いの金額を公表し
ています。これを見ると、誰が売って、誰が買って上がったのか、
その理由の多くが分かります。公表が2週間遅れであることが難点
です。

■3.2012年の、投資家別売買を分析する

東証の原表は見にくいので、当方で加工し、単純化したものを示し
ます。ここから、投資事情が分かるからです。
http://www.tse.or.jp/market/data/sector/b7gje6000000jkrj-att/J_stk2_120301.pdf

・証券会社の自己売買、
・銀行・保険・投資信託を含む事業会法人の売買、
・個人投資家の売買、
・海外ヘッジファンドからの売買という4主体に単純化します。

集計時期は、株価が上昇し始めた2012年1月中旬からです。

[薄商いの市場が続いている]
わが国株式市場は、株価が上がった2012年3月でも、1日の売買額
(東証1部)は、1兆1000億円しかない薄商いが続いています。時価
総額(約300兆円)に対し、わずか1/300の売買です。

つまり保有されている300株のうち、1日にほぼ1株が売買されるだ
けの閑散さが続いています。このため、少ない売り越しや買い越し
(週間で2000億円規模)で、相場全体を、大きく動かすこともでき
ます。まずここを認識しておくことです。

(注)毎週の売り超と買い超は、全体を見れば一致しますが、捨象
したものがあるため、下表では一致しません。数値は、売り超をマ
イナス、買い超をプラスにしています。誰が買ったため上がったか
を見るためです。

▼4主体別週間売買と、株価上昇率の相関を分析する

      証券会社   金融を含む                    日経平均
      自己売買    事業法人     個人    外人    週間上昇率
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1月3週   641億    -451億   -4986億  1939億   +3.1%
1月4週  1391億    -795億    -913億   450億   +0.9%
2月1週   599億    -536億    -347億   233億   +0.4%
2月2週   179億    -443億    -643億   961億   +0.2%
2月3週   301億    -624億   -1899億  2364億   +4.3%
2月4週   574億   -1403億    -772億   654億   +1.7%
3月1週   818億   -2136億     -62億  1382億   +1.5%
3月2週  1542億   -1118億    -768億   391億   +2.4%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
8週合計 6044億   -7506億 -1兆410億  8373億    +19%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【買い手は、ヘッジファンドと日銀だった】
8週間合計では、証券会社の自己売買の買い超が6044億円、外人ヘ
ッジファンドが8373億円の買い越しです。つまり、日本の2月、3月
の株式市場は、

(1)オフショアからのヘッジファンドの買いと、
(2)証券会社の自己売買と、投資信託(上記事業法人に含む)の
中に覆面買いとして含まれる「日銀の資産買い受け基金」によって、
上がったと言えます。

【売り手は、国内の事業法人と個人】
一貫した売り手は、

・国内の金融機関(保険・銀行・投資信託)を含む事業法人(8週
で7506億の売り超)と、
・個人投資家(1兆410億円の売り超)です。

注目すべきは、1月も2月も、第3週のヘッジファンドの買い超の大
きさ(1月は1939億円、2月は2364億円)によって、週間で3.1%、
4.3%と高騰していることです。

■4.結論

●毎月の第二週の金曜日は、先物取引の精算日です。先物で売って
鋳れば買いの、買っていれば売りの反対売買をせねばならない。こ
の清算の売買をした後、第3週に、ヘッジファンドが大きく買い越
して、相場を上げています。

3月になると、売り越してきた個人に、相場が上がったための買い
戻しが見え、3月の第1週の売り越しは、62億円に減っています。

以上の分析で、明確にお分かりでしょう。

2012年1月中旬以降、日本の株価が上げてきた理由は、
(1)外人ヘッジファンドによる、2011年の損(8000本のヘッジフ
ァンドで合計6.5%の損害)を回復する目的での、欧州ECBが注い
だ100兆円のPIIGS債対策マネーの一部を使った、日本株の買い、
(2)日銀による覆面介入での買いです。

以上2つの買い超の要因で株価が上がったのを見て、2011年の株と
外為での損から売り越しを続けていた個人投資家も、「遅れてはな
らじ」と、3月の1週は売り越し額を減らしています。

■5.明確に、政府・中央銀行が主導した「金融相場」である

【まとめ】
売り手:金融機関を含む事業法人+個人
買い手:ECBの印刷マネーを使うヘッジファンド+日銀

政府の介入を期に下がった円(=上がったドル.ユーロ)と同じく、
2012年の株価上昇は、日米欧の、同時増発されている中央銀行マ
ネーによる金融相場です。もっと言えば、「政府介入の相場」です。

2008年9月のリーマンショックの後(2010年~11年6月)も、米国
FRBが約200兆円のドルを増加供給し、それが暴落していた米国株、
欧州株を買い支えて、回復させた主因でした。

この金融相場がQE21の停止(2011年6月まで)として切れたとき、
2011年8月初旬の暴落につながったのです。

●今後の問題は、日米欧の、中央銀行によるマネー供給を、いつま
で増やし続けることができるのかという一点です。

2011年11月から2012年3月までのマネーの増加供給で、もっとも大
きかったのは、欧州ECBによる約100兆円(12月50兆円、2月から追
加の50兆円枠)です。

【大切な参考情報】
(1)2010年1~4月には、FRBが増加供給したドルを使い、外人ヘッ
ジファンドが日本株を3兆1146兆円も買い越しています。
(2)同じく、2011年1月~7月には、4兆1720億円もの、日本株の買
い越しを見せています。

しかし、こうした買い越しをいつまでも続けることはできません。

【外人が売り越しに転じると・・・下落する】
(1)の3兆1146億円の買い越しの後、2010年5月~6月には、1兆
5922億円の売り越しに転じて、株価を下げています。

同様に(2)の4兆1720億円の買い越しの後、11年8月~9月は、1兆
8182億円を売り越したため、日経平均は8000円の安値に沈んだので
す。

日本の株は、上げも下げも、わが国株式市場の日売買の60~70%を
占める外人ヘッジファンドによる、買い越しか(上昇)、売り越し
(下落)で決定されます。

外人ヘッジファンドの売り越しを、国内の金融機関、事業法人そし
て個人が買い支えて、買い超にもって行くことはできないからです。

(注)本稿は、株価としては、金融のマクロの動きから判断ができ
る日経平均(225種)を言っています。利益の成長性で買われ、利
益予想が減ると下がる個別銘柄の動きは別です。この個別銘柄の平
均値が、日経平均です。日経平均は、わが国で代表的な225社の株
価の単純平均です。

225種に含まれる小型株だけが上がっても、単純平均値は、上がり
ます。このため、少額の資金で上がる小型株を買って(あるいは空
売りして)、日経平均を上げる(下げる)投資手法も見られるので
す。

●更に言えば、この外人ヘッジファンドが使う資金の源は、欧州
ECBと米国FRBが、株と通貨、およびPIIG債の保有で損失を蒙った銀
行に、資金繰りを助けるために貸し付けたマネーです。

金融機関は、中央銀行から借りたお金を運用し、利益を上げねばな
らない。現金のままでは利益を生まないからです。ヘッジファンド
のマネーは、米欧の金融機関が、ファンドに運用を預託したもので
す。

■6.今後はどうなるか・・・

金融相場と言う理由が以上です。このため、中央銀行が、供給マ
ネーを増やさなくなった時期に上昇が止まり、いずれ来る回収を迫
られる時期には、相場は下落します。

当然に、株式市場だけではなく、資源の代表である原油も1月末の
$95(1バーレル)から2月末には$109(+15%)をつけ、$105~
$107辺りを波動しています。これも、ヘッジファンドの買いによ
るものです。

1月半ば以降の円安(=ユーロ高、ドル高)も同じです。日本政府
の為替介入が止まる時期に横ばいに入り、介入の短期マネーを回収
する時期が来ると、反転するでしょう。

【米欧の消費者物価インフレは、長期金利より高い】
現在、米国の消費者物価のインフレは3.0%(11年1月)、ユーロ
圏は2.7%(2月)です。10年債の長期金利(米国2.28%:ユーロ
1.96%)より、1ポイントくらいインフレ率が高い。

インフレ率があと0.5ポイントくらいも上がる勢いになると(3.
5%付近)、米国FRBと欧州ECBはともに、急いで金融を引き締めて、
増発マネーを回収しなければならない。肝心なのが、このインフレ
率の動きです。

【後記】
3月9日の東京講演(263名の参加)には行けなかったが、その時の
講演の録画やレジュメを見たいという方から、当方にメールを多く
戴いています。ビデオで撮った2時間半の映像を編集中です。いず
れ、何らかの手段で頒布します。そのとき、またお知らせをします。

本稿で書いたような、1998年の過去から幾度も繰り返してきた相場
の動きも(PKO相場と言っていた)、その原理的なことから書いて
います。金融のPKOは、平和維持ではなく、当局の介入買いです。

拙著『国家破産』をお読みの上で、講演に参加された方も多く、当
方も感激しています。

アマゾン(紙)            : http://www.amazon.co.jp/
紀伊国屋Web(紙+電子)  : http://bookweb.kinokuniya.co.jp/
楽天書店(紙)            :http://books.rakuten.co.jp/
廣済堂bookgate(紙+PDF版): http://www.bookgate.info/
セブンアイネット(紙)    :http://www.7netshopping.jp/
books/

【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】
yoshida@cool-knowledge.com

●インターネットで、偶然見つけた、書評サイトでの評価のひとつ
です。気恥ずかしいのですが、当方の意図をよく理解していただい
ていると感じたので、掲載します(掲載の承諾は、頂戴していま
す)

**は今、世界を覆う財政危機や金融不安の本質がどうなのか気に
なっているのですが、
本書はこれ一冊読めば、
・国債の信用リスク
・デリバティブの恐怖
・米ドル安と円高の行方が及ぼす影響
・不動産価格の見通し
・国家破産の可能性
・資産防衛のためにすべきこと
など、すべてが関連付けて理解できます。

とはいえ、ひとつひとつ理解しながら読んだので、読み終えるのに
たっぷり1週間かかってしまいました。この本のすごいところは、
徹底的に数値をもとにした論理展開を行なっていること。

読者をいたずらに怖がらせたり脅したりするような表現は、一切使
っていません。類書では、著者が金融ビジネスに携わっていたりす
ると、自分の商品の販売に結びつけたり、自分の権威を高めようと
したりするポジショントークが含まれていたりするものですが、そ
んなポジショントークも一切なし。

著者の吉田繁治さんは、【ビジネス知識源】というメールマガジン
の発行人で、ビジネスメールマガジンではNo.1の人気を誇ります。

書いてあることは難しそうに見えるのですが、変に楽観論や悲観論
に偏っておらず、データを丁寧に紐解きながら、重要な部分は繰り
返し解説してくれるので実にわかりやすい。

読了した後、もう一度ななめ読みしただけで、理解がさらに深まり
ました。ここに書かれている事実を自分はどうとらえるか、そして
どう行動すべきか。腑に落ちるまで、何度も読み返すべき本だと思
います。

現在、そして今後の世界経済を語る本の決定版ではないでしょうか。
http://blogs.yahoo.co.jp/kit_45104/29108188.html

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。以下は、項目
の目処です】

1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点、ご意見はありますか?
4.その他、感想、希望テーマ等
5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ
と記述の際、より的確に書くための参考になります。

気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、
うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ
ないときも全部を読み、共通のものは、記事に反映させるよう努め
ています。

【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】
yoshida@cool-knowledge.com

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【有料版の最近号の目次】

    <581号:マネーの本質から見れば、世界金融危機の、
                                         今後が分かる>
               2012年3月14日号:有料版

【目次】
1.日本の2012年の株価は、なぜ上がったか?
2.中央銀行のマネー増発の効果は、金融危機の飛ばしである
3.ECBとFRBが恐れていることは、PIIGS債の下落ではない
4.中央銀行が刷ることができる、マネーの本質
5.準備銀行の発明
6.ジョン・ローが、ペーパー・マネーを発明し、
                           フランス王立銀行が発行した
7.20世紀の中央銀行は、国債を買って紙幣を発行した
8.紙幣の増発は、国民(民間企業と世帯)への見えない課税であ
る。
9.古典には、あらゆることで、考え尽くされたものを見つけるこ
ことができる。

■2.解約していないのに、月初めから、有料版メールマガジンが
来なくなったとき(このメールが当方によく来ます)。
主な原因は2つです。

(1)クレジットカードの有効期限:
登録しているクレジットカードの有効期限(期間は数年)が切れて
ないか調べてください。
ほとんどの原因は、登録していたクレジットカードの期限切れで
す。お手間をかけますが、「新しいカード番号と有効期限」を再登
録してください。月初めからの分の再送を含み、再び届きます。
https://mypage.mag2.com/Welcome.do
↑
この「マイページ・ログイン」から、メールアドレスとパスワード
でログインし、出てきた画面で、新しい期限と番号を再登録します。

(2)迷惑メールに入っているどうかを確認する:
メールソフトは、頻繁に自動更新されているため、時折、メールマ
ガジンが不特定多数への「迷惑メール」になってしまうことがあり
ます。
該当のメールに、カーソルをあてて右クリックし、出てきた迷惑
メールの項で、「送信者を、差し出し人セーフリストに追加」すれ
ば、元に戻ります。
(以上)


◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則
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