世界金融危機に向かう中で高騰する金
This is my site Written by admin on 2023年4月15日 – 12:00
米国の銀行危機から、世界的な危機が迫ると予想できるなか、ひとり
金が上がっています。(注)長期的な原理を示して書きます。22ペー
ジです。

4月13日は、1オンス2016ドル、円では9546円です(1グラム)。
金の円価格は「ドル/円のレート」で1グラムに換算し、1%前後の小
売りマージンと、10%の消費税を加えたものです。円ではなく「長期
のドル価格」で見ないと価格の原因は見えません。

【金価格の、第一の性格】
◎ドルの「実効レート」が下がる期待があるとき、米国とロンドンの
市場で「金買い/ドル売り」が起こります。実効レートは、「ドル/
円」の通貨ペアではなく、主要通貨に対するレートです。
↓
ドルレートは、1)米国の期待インフレ(予想インフレ)、2)期待金
利(予想金利)、3)外為市場でのドルの売買で決まります。

◎ドルレートと逆に動く性質がある金価格は、1)米国インフレと金
利の予想、2)外為市場でのドルの売買予想、3)ドルへの信認という、
3つの要素を基礎に決まるといっていい。

◎金価格は、原油のように、ドルレートより何倍、何十倍も大きく動
く時期があります。これは、基軸通貨ドルへの、3つめの要素である
ドル債券とドルへの信認が弱くなったときです。
↓
23年3月からの金の急騰は、米国の銀行危機の発生により、「ドル預
金への信認が低下」したから起こったものです。

◎今回の金価格の上昇は、米銀の破産として現れたドルへの信認の低
下という、数十年サイクルの長期的変化によるものだと、推計してい
ます。もちろん相場商品ですから、上がる途中での、利益確定や先物
の売りが勝ち、価格が下がるときもあります。

しかし今回は、金価格の上昇の主な原因が、ドルからの逃避であるこ
とから、一定の変動幅(ボラティリティ)をもって、2~3年の長期で、
上がる兆候が見えるのです。
(参考図;ドルと円での金価格の推移:5年:三菱マテリアル)
https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/#gold_5year

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<Vol.1330号:増刊:世界金融危機に向かう中で高騰する金>
      2023年4月15日:有料版・無料版共通

【目次】
■1.22年11月から4月まで、350ドル(19%)上がった原因
■2.22年11-4月の、金価格の動きからの洞察
■3.事例:リーマン危機のあと3年で2.4倍
■4.銀行の破産のパターン
■5.銀行経営の基礎のALM(Asset Liability Management)が
  守られていなかった
■6.今回の銀行危機の原因は、時間を追って増える
■7.2023年11月からの、金価格の上昇
■8.50年の長期での金価格の性質
■9.信用通貨の性質

■10.安定したインフレ目標2%が実現すれば・・・
■11.政府・日銀への国民の対抗は、ドル平均法での金買い
■12.1971年の金ドル交換停止のあと、50年の金価格
■13.2023年から、金の価格はどういった上がり方になるか?
■14.2023年は、BRIC中央銀行の金買いが、急に増えている
■15.後記:感想・・・22ページになりましたが、まだ言葉と数字が
頭で舞っています。

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■1.22年11月から4月まで、350ドル(19%)上がった原因

金は、22年11月の1650ドルを底値にして、5か月、一本調子で、2000
ドル台に上がりました(23年4月)。

最初の原因は、インフレ率の低下から、FRBの利上げは5%付近(3
月)でピークを打つ・・・23年の夏からは、逆に0.25ポイントの利下
げがあるかもしれないと市場が見ていたことです。米国の期待金利の
低下は、短期的には、金価格の上昇要素です。

しかし期待金利(3か月から6か月先の予想金利)による金価格の短期
予想は、要素が多すぎる複雑系であり、株と同じように難しい。

【23年3月からの価格上昇】
一方今回は、「基軸通貨ドルへの信認の低下→金価格上昇」になる強
い傾向があることから、長期での高騰の時期は、予想しやすい。

◎今回の上昇は、コロナによる世界のゼロ金利のなかで、40年ぶりの
世界インフレを引き起こしたドルへの、信認の低下からきたと判断し
ています。

◎現在、米欧の銀行危機を起こしたドル預金の流出として、その一端
が現れた、ドルへの信認の低下が、23年3月、4月の金価格を一本調子
で上げているのです。

■2.22年11-4月の、金価格の動きからの洞察

22年11月から23年4月までの、1650ドルから2000ドル台へと350ドル
(21%)急騰した原因は、何でしょうか?
2つが想定できます。

(要因1)この時期、米国インフレの鈍化(23年3月コア物価5%)か
ら、ドル金利に約5%のピーク(ターミナルレート)が見えました。

ドル短期金利の上昇は23年3月の5%で終わるか(30%の確率)、6月
の5.25%までの上昇で終わるか(70%の確率)という、金融市場の期
待。6%台も言われていたのでたいぶ下がっています。

(要因2)他方、市場が織り込んでいなかった銀行危機が発生しまし
た(3月)。1前からのドル金利上昇の裏で起こっていたのは、固定金
利の債券(国債、MBS、社債、ハイイールド債)を資産とする、銀行
とノンバンク(ファンド)の経営危機でした。

約4ポイントの金利の上昇から、
・時価価格が下がって売りが増えた米国債とMBSの債券から、
・それを持つ米銀に含み損失が出て銀行危機になったのです。

〔結果〕この時期から、安全資産とされている金への、マネー逃避
(避難)が、世界的に起こりました。これが「22年3月から見せた金
価格高騰の長期化の傾向」の原因です。
◎現在は、「米ドルへの信認の低下」という、マレな時期の金価格の
上昇でしょう。

◎今回の上昇は「長く続き、上げ幅も大きくなる可能性」があるでし
ょう。もちろん鵜の目鷹の目の、相場の金融商品ですから,ダマシに、
利益確定の先物やオプションの、ポートフォリオ売りで下げる時期が
あります。そのときに売ると、損をすることが多い。
長期保有のポートフォリオを奨める理由が、これです。

◎繰り返せば、今回の金価格上昇には、「長期化する、ドルへの信認
の危機」があると見るからです(当方の見解;反対の見方をする人が
多いでしょう。予想の違いは、相場ではいつもあることです。)。

〔米欧の銀行危機は長期化する〕
銀行の預金流出の危機に対する、FRBの緊急マネー投入(国債貸しの
レポ金融)で、株価が一時的にもどっても、銀行危機は債券のポート
フォリオの、バランスシートの中で、深化しています。

時間とともに、簿外損失が増加し、資金繰りのための換金売り(=成
り行きの投げ売り)で巨大損が出てくるプロセスです。

多種の債券に、時間をかけて玉突きにように波及するので「今回の、
債券の売り損失の増加に比例する、金価格高騰は長期化する」という
見方が生じます。

【米欧の不動産価格】
銀行危機が長期化する原因として大きなものは不動産です。

1)米国の商業用不動産の下落が始まり、銀行がもつC-MBS(商業用
ローン担保証券)が25%も下がっていること。これは、23年8月ころ
からの、リーマン危機のときのような住宅価格下落にもなって行くで
しょう。

2)欧州では、すでに、住宅価格が下がっています。欧州でも、住宅
ローンは,米国と同じように証券化されていて(10兆ドル:1300兆
円)、R-MBSは銀行が買って銀行資産になっています。これが下落す
ると広範囲の銀行危機になります。EU経済の中心のドイツではすでに、
住宅価格が前年比6.5%下がっています。

米欧ともにインフレのなか、ローン金利が、21年比で米国は2倍、ド
イツは4倍に上昇しています(米国では7%台:ドイツ4%)。ローン
金利が下がる見込みは、当面ない。とすると、コロナ期の約3年の
ローン金利の低さ(米国では3.3%)が原因だった、米欧の不動産の
上昇はない。不動産の方向は、下落でしかないのです。

政府系シンクタンクのフーバー研究所は、「全米で186の銀行が流動
性危機を引き起こす可能性が高い」というリポートを公開しています。
普通、政府機関は、研究員がこうしたレポートを書いても、「マズ
い」と封印します。なぜ、公開されたのか? 元日銀政策委員の木内
氏も普段の論とは逆の債券危機のリポートを出しています。
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2023/fis/kiuchi/0405

コロナ後の金利が上がり、債券が下落したことが原因の、米欧同時の
銀行危機は,通貨の危機です。金価格の、大きく上がる要因になりま
す。

■3.事例:リーマン危機のあと3年で2.4倍

◎2008年9月15日のリーマン危機(=ドル危機)のあと、金は、1オン
ス700ドル(1グラム2500円)から、2011年10月の1700ドルまで2.4倍
に上がりました。

3年間で2.4倍は、年率換算では34%上昇です。
↓
今回の金価格上昇の、年率換算31%とほぼ同じです。
仮説的原則:ドル危機のときは、金価格は年率30%台で上げる。

〔原則〕
ドルの、数十年に1度の金融危機のとき金価格は、3年間で2.4倍に上
がるものかも、知れません。

ただし今回の銀行危機の内容も、断片的なメディア情報では、論理化
した体系的整理がされていないので、以降で整理します。

■4.米銀の危機の原因は2年のゼロ金利のあとの金利上昇

米銀と世界の銀行は、
・ゼロ金利の時代に低い金利の、満期の長い長期債の買いを増やし、
・金利が上がった現在、資産の現金化、問題をかかえています。
売れば金庫(バランスシート)から出た含み損失が大きくなるからで
す。
・自己資本は、総資産の5%しかないのに、時価が10%、20%、30%
下がった債券を大量に持っていのが、銀行だと想像してください。
(注)バーゼル3のTier1(資本金+準備金+劣後債)の計算をすると
きは、分母から安全資産(国債、MBS、AAA級社債)は、除外されてい
ます。これで計算すると、世界の国際銀行の自己資本比率10%以上で
す。
 しかし安全資産を含む総資産に対しては、世界の大手銀行の、自己
資本の平均は、5%しかない。三菱UFJ、JPモルガンも5%です。金利
が上がると国債、MBS、AAA級社債の資産は、売却価格が下がります。

◎今回ALM(=銀行資産と負債の期間バランス)に不適が生じていた
上位銀行が、破産しました。(注)債券期間のミスマッチともいう。
↓
今後もALMの問題から銀行危機が起こります。次の大きな危機は、毎
月下落が大きくなっているMBS(長期債:住宅ローン担保証券)を多
くもつ大手のチャールズ・シュワブ(グールプの総資金量7兆ドル:
910兆円)かとされています。バブル的に上がっていた米欧の商業用
不動産が、下落しているからです。
https://stock-marketdata.com/cppi.html

遅行指標の不動産価格に先行する、米国REIT(不動産の配当金を担保
にした上場証券)は、以下のように1万7000(22.04)から1万3500まで
21%下げています。
https://emaxis.jp/fund/261366.html

今後2年、米国の不動産価格が上がる可能性があるでしょうか。ほと
んどありません。

ということは、米欧の銀行危機は、およそ確定しています。2022年4
月からの不動産価格の下落幅は、毎月、大きくなっていくからです。
不動産ファンド(投資信託)では、「解約禁止」が広がっています。
戻す現金がないからです。

■4.銀行の破産のパターン

預金=銀行にとって短期負債。預金は短期で引き出され回転します。
↓
銀行の資産であるマネーのポートフォリオ(各種債券と貸付金)が、
長期債券に偏っていると、
・何かの原因で、預金の引き出しが増えたとき、
・買ったときより、市場の金利が上がっていると、大きな損が出る、
長期債を売らねばならない。

【短期金利が1年で4.75%~5.0%に上がった、米国】
1)2年前のゼロ期利のとき買った、満期20年の長期債の金利を2%と
します。
2)2023年には、長期債券市場の期待金利が、5%に上がったとします。
↓
この20年債を、資金繰りのために銀行が売るとどうなるか。
1兆円分売るとします(満期までの残存期間は18年)。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◎1兆円×(1+固定金利2%)の18乗÷(1+債券市場の金利5%)の
18乗≒1兆円×1.43÷2.41≒1兆円×0.59=5900億円・・・4100億円
(41%)の、巨大損が出ます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

以上が、3月10日から、シリコンバレー銀行とクレディスイスが
・資金をショート(支払いに不足)させ、
・緊急の、政府資金を受けて、顧客の預金は、100%守られながら、
・企業は破産し、二束三文で買収された原因でした。

NYのシグネチャー銀行は、2022年の、仮想通貨の約50%の下落損が破
産の原因です。資産額で全米14位のファーストリパブリック銀行は、
株価が91%下落し、破産危機が言われます。銀行団は同行に4兆を支
援し、破産を防ごうとしています。

■5.銀行経営の基礎のALM(Asset Liability Management)が守られ
ていなかった

◎銀行は、預金引き出しがいつ大きくなっても資金ショートしないよ
うに、ALM(短期負債と、マネーポートフォリオの期間バランス)を
守って経営しなければならない。

銀行経営の基礎です。ALMが適度に守られていれば、銀行破産はない。
銀行は、利益より、破産を避ける安全な運用すべき業態です。預金信
用が、第一だからです。
↓
ところが、2019年からのコロナ期の2年間(21年3月まで)、FRBは、
米国の金利を、下限のゼロに下げました。ごくマレにときかないゼロ
金利が、世界の銀行のALMを攪乱させたのです。

約2年の、ゼロ金利のなか、
1)負債である預金を運用し、利益を出さねばならない銀行は、
2)固定金利が1%から3%(平均2%)の、
・ゼロ金利のときは利回りが高く見える長期債のポートフォリオと、
・金利は高くリスクがあるハイイールド債を増やしていたのです。

コロナで、集団的な意識が混乱したなかのゼロ金利は、米・欧・日に
共通でした。日本は、10年間もゼロ金利でした。ユーロも8年間ゼロ
金利でした。

多くの銀行には、金利ゼロが5年は続くだろうと想定し、
・固定金利の債券と国債の、
・金利が上がったときの下落リスク(↑上記の計算事例)を軽く見る
という経営者の予想の誤りが生じていました。

長い期間のゼロ金利が犯人です。

ALMは、経営者の管理責任に属します。
社員は、決まったALMの枠の中で債券の売買をします。
↓
ロックダウンで、街の動きが停止していました。人は自宅に閉じ籠も
った。
・FRBが金利を0%に下げた。
・政府の補助金とゼロ金利の貸付金で300兆円も、世帯と企業の預金
が増えた(米銀)。

世界中の銀行、コロナ=ゼロ金利のなかで、
・銀行経営に必要な、ALMの安全性を軽視し、
・「高い金利の、リスクの高い利益をもとめた経営」に走ることが、
普通になっていたでしょう。

◎ゼロ金利なかで、固定金利が高い債券は、その分リスクが大きい。
金融の基礎の原理です。債券の固定金利=FRBの0%+リスク率。

◎リスクが低い短期マネーを、リスクのある長期にして運用し、長短
の金利差(=本質的にはリスクの差)の、利ざやを稼ぐことが、銀行
が介在するときの金融原理です。このためゼロ金利は、ムリなものに
なります。

銀行は、ゼロ金利のなかで、長短金利差の利ざやを得るため、
1)ALMではムリな長期債を買い、
2)金利は高いが、リスクの大きなハイイールド債を持つことになる
からです。

例えば、危機もいわれる日本の楽天が、米国市場で発行する社債の金
利は10%と高い(ハイイールド債)。ベニスの高利貸しか買わないと
も思える高さですが、ゼロ金利に慣れた銀行やノンバンクが競ってこ
れを買う。

理由は、日本の0.5%の金利でキャリートレード(円で借りてドルで
投資)ができるからです。円高をヘッジするコストは、約5%です。

「社債金利10%-円金利0.5%-ヘッジコスト5%=固定金利4.5%の
利回り」になるのが、楽天が発行するドル社債です。

・ここまで示すと金利10%の社債を買う銀行が多いでしょう。
・しかし、このハイイールド債は、デフォルトの確率が買い。

【日本での貸し出しは、赤字になる】
例えば日本の銀行の、552兆円ある貸し出しの長期金利は0.5%です
(23年2月)。
・融資額の0.5%はかかる事務・設備経費(三菱UFJの事例)と、
・1%は必要な貸倒引当金(=有税引き当て)を入れると赤字です。
赤字が増える融資は、できない。

このため、銀行は事務と管理経費がかからず、貸倒引当金(銀行の経
費)も要らず、しかし、0.25%しか金利がない10年国債を買ってきた
のです。

借り入れの回収ときは赤字になる貸し出しの金利が、平均で0.5%だ
ったからです。日銀の増発マネーは、
1)比較金利が2%は高い米、国債の買いと、
2)純資産倍率(PBR)が低く、出遅れているとされ、上昇期待もあっ
た株式市場に流れ、株価を上げるだけでした。

コロナ後(23年4月~19か月)の株価上昇、
・日経平均(225社)1.8倍、
・S&P500社 2.0倍が、燦然と輝いて、
コロナとゼロ金利で、経済が好転したかのような幻想を、与えていま
した。(本当は、逆でした)

世界の金融の、ゼロ金利の舞台が暗転したのは、22年2月24日のウク
ライナ戦争からです。

【コロナがもたらした、世界の空気】
コロナパンデミックのなかでは、最初ワクチンもなく、原因が不明で、
その先何回襲うか、先行きが不明の濃霧でした。(注)今日もまた、
東京で1000人以上の罹患者が出たとTVが報じています。

2年前に買ったゼロ金利時代の、金利が低い10年~20年の国債を含む
債券は、満期まで、7年から18年は残ります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◎売っても、それを買った、どこかの銀行が、持ちます。
このため、銀行危機は、2023年3月を起点に、「米国→欧州→アジア
→日本」と広がっていく可能性が高いでしょう(80%か)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■6.今回の銀行危機の原因は、時間を追って増える

2023年の夏からは、長期債券に加え、金融危機を引き起こす本命の
MBSの25%~40%の下落が、加わってくるからです。(不動産ローン
担保証券:米国で10兆ドル:欧州で10兆ドルの発行残)

・米国の商業用不動産のMBSが、25%下落しています(23年3月)。
・欧州も、MBSは米国並みにあるので、同じ状況です(10兆ドル)。

MBSは、不動産ローンの返済金と金利を配当の権利とする。証券です。
◎不動産の価格(商業用、住宅用)が、ローン金利の6%台、7%台へ
の上昇から下がっていくと、過去に発行されたMBSの価格は、不動産
の下落率より、約1.5倍は下がります。
↓
しかし、MBSは、国債より約1ポイント金利が高いため、2022年までは、
銀行と機関投資家から、競って買われていたのです。

リーマン危機での、CDS、CLOの5兆円の損に懲りず、天下り機関、農
林中金もまた買っています。ドル安のヘッジコストは5%と高いので、
保有するドル債券の50%にしか、かけてないでしょう。

■7.2023年11月からの、金価格の上昇

◎米銀の危機は、ドルの危機と同義です。
金価格は5か月で21%(年率換算で32%)の急騰を示しました。

5か月で21%の上昇は,同じ傾向で行ったと仮定した年率換算では、
21%×√(12/5)≒21×1.55≒32%の上昇に相当します。

(注)ビジネス知識源では、創刊以来、6か月に1回くらい、将来のた
めに金の買いを奨めてきました。金融商品としての金は十年の長期で
見なければならない。買われた方も、幾分かおられるでしょうが、買
っていない人が多いでしょう。

■8.50年の長期での金価格の性質

通貨の価値(ドル価値=購買力)の長期趨勢での下落と、金価格の高
騰は、逆比例します。

端的にいえば、
・ドルの,世界の通貨に対する実効レートが上がるときは、金価格は
停滞か、下落し、
・ドルの実効レートが下がるときは、金価格が上がるからです。
(実効レート:金/ドル交換停止後の、変動相場の1970-2023)
https://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html

金とドルのリンクが離れた「金・ドル交換停止(ニクソンショック:
1971年)」のあと2年間のスミソニアン体制が崩壊し、金とドルのリ
ンクが外されました。

1)1973年以降は、金の公定価格と、通貨の固定相場制がなくなって
変動相場になりました。

2)米国は、金にリンクしていた1ドル360円の1971年から、変動相場
での、1994年79円という、4.6分の1(22%)へのドル安の23年間、
1973年と80年の二度の石油危機を挟んで、没落していきました。

ドルから離れ市場が価格を決めるようになった金は、下落したドルと
逆に、9年間で24倍に上がっています。
(1971年:固定レート35ドル→1973年:73年から金価格は変動:127
ドル(3.6倍)→1975年186ドル(1.5倍)→1977年168ドル(0.9倍)
→1980年850ドル(イラン革命:5.1倍)
https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/y-gold.php

米国の没落は、1973年から1994年の実効レートのドル安(160→100)
に現れています。(ドル:ユーロ:円:人民元の実効レート)
https://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html

経済の没落は、通貨の下落であり例外がない。トランプがMAGA(米国
産業の復活)を訴えている理由は、1980年から米国中部・南部の工
業・農業が、没落したからです(共和党の地盤)。伸びたのは東部と
西部の金融、IT、軍需、医薬です(民主党の地盤)。両者の支持基盤
は、融和ができない南北戦争。

【英国と日本の、通貨の暴落は、似ている】
1)戦後の、1ポンド1000円から下がる一方の英ポンド(166円):
2023年4月)は1/6。
↑↓
2)1994年からの円安;実効レートでは、ゼロ金利と量的な緩和で、
150→50(2023年)という1/3への円安になってしまった日本。

1994年からの日本には、実質成長を促し、国の経済を引っ張る三本の
矢がなかった。他国より大きいものは、毎年40兆円の赤字国債の増加
だけでした(国債のマイナスの矢;累積残高1200兆円)。

GDP(経済の規模)に対する、国債残の増加では、世界1です。
金額では米国が世界1(31.4兆ドル)です、GDP比では、日本(1200兆
円)が1位の260%です。

MMT(現代貨幣論=国債の日銀の買いによる円の増発)による成長論
は、倒立したものです。MMTは現在、40%のインフレをいとわずトル
コが実行しています。

日本も、赤字国債の日銀買いを、2023年も大きく実行しています1月
から3月は、異次元緩和より多い年間110兆円のペースです。

2023年1月からの、日銀の、意図せざる国債買いの原因は、世界イン
フレのなかで、世界1低い金利の国債(平均が0.25%)に、内外から、
売りが殺到し債券市場に混乱が起こっているからです。

日本もインフレは4%台です。金利は2%でなければならない。

しかし2%の金利になると政府財政が破産します。日銀の金利限界は
0.75%でしょう。日銀は出口のない袋小路に嵌まってしまった。

■9.信用通貨の性質

日本のMMTと、ゼロ金利の10年の結果は、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1)6000万人の、働く人の実質賃金(購買力)の2.6%の低下(2022
年)、
2)年金世代3000万人の、年金の4%の、購買力の低下(2022年)、
3)世帯の金融資産2023兆円の、購買力の4%低下(80兆円の金融資産
の目減り)になっています(2022年)。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

1)コロナ(100兆円の財政支出)、2)ウクライナ戦争(エネル
ギー・食糧価格高騰)、3)MMT(日銀の国債買い)、4)そして10年
のゼロ金利の、複合した結果が現在の4%インフレでしょう。

・金利ゼロ政策で1200兆円の国債の、政府の金利負担は減らしていま
すが、
・その分が、現在、国民のマネーの、購買力低下の4%負担になって
いるのです。

メディアで、上の実態が示されれば、国民は、年金の支給年齢引き上
げのフランス(100万人のデモ)のように騒ぐかもしれません。

いや日本の国民は、総額80兆円(世帯あたり160万円)の金融資産の
通貨価値がなくなった損失に耐えるか・・・耐えるでしょうね、きっ
と。優しい人々の優しい社会。

【増税とインフレは、同じもの】
しかし、国民は、80兆円の増税(1世帯当たり160万円)には、猛烈に
反対するでしょう。
↓
ところが、経済学的には同じである、世帯の2000兆円の、金融資産の
預金金利ゼロと、インフレ4%での、1年に80兆円の通貨価値の下落に
は、反対の声を上げない。

【ケインズが言った、貨幣錯覚】
◎原因は、預金の1万円は、いつまでも1万円という「貨幣錯覚(ケイ
ンズが指摘)」があるからです。天才的頭脳のケインズは、高みから
皮肉をいう人でした。マルクスを、ひどく馬鹿にしていました。

マネーの価値は購買力です。4%のインフレでは、4%実質価値は下が
っています。経済学では、実質でしか通貨を見ません。

【4%のインフレが2%に下がっても、物価は上がる】
仮にインフレ率が、政府・日銀が安定目標とする2%に下がっても、
価格は、昨年比で2%上がります。昨年比で2%下がったと錯覚する人
もいるので、注意しておきます。このときも、預金金利は、ほぼ0%
でしょう。

【世帯の損】
5300万の世帯の、2023兆円の金融資産では、1年の物価上昇2%で、毎
年、40兆円(1世帯あたり80万円/年)損をします。
◎1世帯あたり、1年にマイナス80万円です。向こう30年で、-2400万
円。大抵の世帯の金融資産は・・・幻のように消えます(戦後と同
じ)。マクロ経済学では、インフレは、実質賃金と、実質預金を減ら
す見えない増税です。

一方で、1200兆円の国債(負債)は、2%インフレの30年では「0.98
の30乗=0.546」→1200兆円の実質価値は546兆円。2%インフレの30
年で、自動的に返済されたかのようになって、654兆円がどこかに消
えます。これが、政府・日銀の2%インフレという安定目標の内実で
す。

◎1万円の通貨は、名目ではなく、いつもインフレを引いた実質で見
るべきです。低金利の国債をかかえてインフレ詐欺を行う政府、2%
のインフレで預金の抜き取り詐欺を行う日銀。あからさまな強盗より、
役人の顔をして、マネー価値を1年に2%ずつ確実に抜き取る政府がは
るかにヒドい。

過去から、政府が、国民の資産の搾取をすることは同じです。巧妙に
なったものが、2%インフレのなかでの、預金ゼロ金利です。2%の期
待インフレなら預金金利は2%でなければ、通貨の価値は守れません。
経済学には「実質金利=名目金利-期待インフレ率=0%-2%=-2%」
という概念があります。期待インフ率は、実際のインフレから、人々
が予想する将来インフレです。2%の物価上昇が安定すれば、期待イ
ンフレ率は2%に近づくでしょう。

ここを知っていないと(こうした知識の提供が、ビジネス知識源)、
日本人のたぶん95%は、ほぼ永遠に豊かになることができない。哀し
むべき未来です。

東京都区部の3月の、もっとも新しい、生鮮食品を除くコア物価の上
昇は3.2%でした。一見、23年1月比で1ポイント下がっているように
見えます。政府の電気・ガス・ガソリンへの企業補助金のためです。
実際は前年比4%台の上昇が続いています。2021年に比べると7%くら
い上がっています。食品スーパーの実感の物価は+10%くらいでしょ
う。

■10.安定したインフレ目標2%が実現すれば・・・

政府・日銀が目標にしている、「安定したインフレ2%」では、1200
兆円の国債が、毎年、返済しなくても、実質で「1200兆円×2%=24
兆円」減っていくことです。実質が、通貨の価値です。

政府がいう「安定した目標」ですから、物価の2%上昇が30年続くと
すれば、政府は、1円の返済をしなくても、国債の実質残高は国債の
平均金利が0.5%なら、「1200兆円÷(1.02-0.005)の30乗=1200÷
1.56=769兆円(30年後の国債の実質残高)」へと36%減ります。

(注)政府財政を破産させないためには、日銀は10年債の金利を2%
のインフレに中立的な2%上げることはできない。1.5%が上限か、い
や1.5%では危ない。1%でも、危ない。0.75%が利上げの限界でしょ
う。

◎国債が減る431兆円(-36%)に対応し、一体、誰のどの金融資産が
消えるのか。
↓
インフレ2%、金利が0.5%の円の預金をもつ世帯の損が431兆円です。
これが、われわれの、30年後として政府・日銀が、想定していること
でしょう。

これが、現在の政府&日銀の基本ビジョン、2%の安定したインフレ
目標の隠された意味です。前任者を踏襲し「安定した物価目標2%」
という植田日銀に申し上げておきます。

「あなたは国民の金融資産2000兆円を、実質では毎年2%、40兆円抜
き取って、30年で総額1200兆円を減らす。日本人の95%を貧困にしま
す。それがあなたの使命ですか?」

安定した2%のインフレなら30年後の物価は、「1.02の30乗=1.8倍」
に上がるからです。現在の通貨価値1万円で10個買えるものが、30年
後は5.5個です。3000万人の年金生活者、2000万人の非正規労働者、
4000万人の中小企業勤務者は、食べるものに事欠くでしょう。賃金と
預金が、毎年4%増えることのできる少数者の天下になります。こん
な社会が許せますか・・・。

■11.政府・日銀への国民の対抗は、ドル平均法での金買い

現在の預金を「ドル平均法」で、通貨の価値が下がると価格が上がる、
本源的な通貨の金に換えていく資産防衛の必要があるでしょう。

ご夫婦と子供たちの、借金せず欲しいものは買える自由な生活のため
です。これからの金は自由を与えてくれます。マネーは自由の獲得の
ためのものです。

勤務が精神にきついなら辞めてもいい。金融資産が増えていれば、収
入は半分で、リモートワークでいい。リモートは21世紀的な自由です。
子育てを中心にした田舎や、温泉がある海のきれいなリゾート住まい。
不動産売買や投資は、方法を学習すれば退職後もインターネットでで
きます。常勤のファンドマネジャー自体が、リモートワークです。

コロナ後も、NYやサンフラン、LAでは、すでに40%がリモートであり、
空き家になって借り手がないオフィス価格は、住宅より6か月前に25
%下がっています。会議はZOOMの、ワークスタイル。
10年もすれば、第5段階(到達点)の100%自動運転になります。

近代化は、都市化の密集でした。現代化は、分散と離散です。

当方もコロナの仕事と生活が続いています。最近、お昼や夕刻、食事
に出かけると、約50%だった客が、評判がいいところは、満員に増え
ました。アクリルの仕切りはまだあります・・・無能な厚労省の指導
でしょうか。

■12.1971年の金ドル交換停止のあと、50年の金価格

     1971年の金価格 2023年4月    上昇率
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・ドル(1oz)  35ドル  2000ドル   57倍(年率8.4%↑)
・円(1g)   400円   9500円    24倍(年率6.5%↑)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/#gold_longspan

ドルではなく金なら、1971年の、普通の世帯の、5万ドルの預金は、
57倍の285万ドル(3億7000万円)になっていました。
仕事をしなくても1億円の住宅を買って、ほぼ一生、普通の生活なら
できていたでしょう。返す返すも、惜しいことです。

これが、平均で8.4%複利の金のマジックです。金との比較では、50
年前の100ドルの価値が、1/57(1.75ドル)に下がったことを意味し
ます。

円なら、500万円の預金が24倍の1億2800万円。信用通貨の1万円の価
値は1/24(416円)に下がっています。円の価値の目減りは、ドルの、
1/2.4だったのです。

■13.2023年から、金の価格はどういった上がり方になるか?

過去3年の国際コモディティ(貿易で取引される商品)の価格上昇率
を示します。(ドル価格:円安の円では20%くらい上です)

・原油   124%(2.24倍:エネルギー、化学の根幹)
・大豆    69%(食料、家畜用飼料)
・銅     62%(電気用)
・小麦    38%(パン、家畜用飼料)
・プラチナ  34%(排気ガスの触媒:宝飾)
・金     26%(金融商品:本源的通貨:宝飾:電気回路)

なんと・・・インフレのなかで上がっていると錯覚されている金は、
コモディティのなかで上昇率がもっとも低い。インフレの3年間たっ
た24%(平均年率7.4%)です。

金は、まだ、価格が中庸に下がるくらいの上がりかた(3年間で原油
2.24倍)はしていません・・・これをどう評価するか、第一の課題。

【金と原油の、長期での上がり方は一致している】
過去50年、原油とおよそ同じ上がり方をしてきたのが金です。
1972年石油危機前1バーレル1ドル付近→2022年12月60ドル付近(60
倍)・・・平均年率8.5%≒8.4%/年の金と、ほぼ同じです。

現在の原油価格(上質なWTI)は、生産量が980万バーレル/日の、サ
ウジの減産の決定(1日-110万バーレル;世界の総需要の-1%:5月か
ら2023年の年末まで)のため、4月は、84ドルに上がっています。再
び、昨年比でのインフレの要素になりました。

【原油価格の基礎についての、重要な注】
原油が、60ドル台に下がると、他の収入がないサウジの国家財政は赤
字になります。産油国が協調減産をして原油価格を引き上げます。世
界の、1日1億バーレルの原油消費は、安定しているからです。

金融都市ドバイの、オイルダラー金融が建てた超高層ビルの谷間と砂
漠で、灼熱のなか、考えたことです。日本のエネルギーの、脆弱な首、
ホルムズ海峡の見える海岸にも行きました。石油を燃やし、海水を煮
て、真水を作り、芝生を作る。食物は輸入、建物はインド移民が建て、
フィリピンからお手伝いさん。一級の高級車を輸入し、衣服は日本の
綿がベストという。中東に行くと、日本人の多くが考え込むでしょう。
いったい何だ、これは・・・ガーシーもドバイ。

日本人にとってコメが富と命だったように、アラブでは、石油が富の
金です。その中東が信用通貨のドル圏を離脱しようとしています。

80億人の世界の原油消費は、1日当たり1億バーレルです(1人当たり
1日2リットルを消費(ミネラルウォータ1本分)、0.5ドル:65円)で
す。石油が上がると、中東の富を世界が物価上昇として負担します。

世界の総供給から1%(100万バーレル)減らすと、価格は、40%くら
い上がります。世界は電気、ガソリン、給湯、冷暖房を絶やすことは
できないからです。

生産を3%(300万バーレル/日)を減らせば、ウクライナ開戦後の、
ロシアの原油輸出(330万バーレル)が途絶したときのようにスポッ
ト価格は、再び2倍、3倍に上がります(2020年30ドル→2022年6月
120ドル:4倍)。原油価格は、産油国の中東とロシアのコントロール
下にあります。

サウジは、原油の生産を110万バーレル/日、減らすと発表しました
(23年3月)。60ドルに下がっていた原油は、3週間で再び84ドルに上
がっています(23年4月14日)。金を買うことは、済学的には、石油
の富に与ることでしょう。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/clc1.html

■14.2023年は、BRIC中央銀行の金買いが、急に増えている

中進国のBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)と、
新興国のグローバル・サウスは、ウクライナ戦争以降、〔ロシア-中
国〕に側に立ち、「新国際連合という上海機構」につきました。

◎EUの委員長、女優風のフォンデルライエンと、マクロンは、北京詣
をしています。中国の資源、商品の輸入、産業への浸透のためです。
ウクライナ戦争は、実質的には終わっています。今の戦闘は、ゼレン
スキーが生き延びる意味しかない。

日本のメディアは、リバース情報を伝えています。

Wikiリークス第二弾の「米国の軍事機密情報」の流出の影響は大きく
なります。デクラス(政府の機密解除)の一環でしょう。バイデン大
統領への軍部、CIAの作戦報告書です。米国からのウクライナへの、
軍事支援の停止を、意味するものかもしれない。

◎BRICS連合は、身勝手な振る舞いをするドルから離れるため、金・
コモディティリンクのデジタル通貨(CBDC)を、国際通貨にする構想
を進めています。国をもたないIMFの通貨バスケットSDR(各国通貨引
き出し権)のようなものです。

米国が、ウクライナ戦争のとき、制裁としてロシアのドル外貨準備
(6300億ドル:82兆円)を凍結し、米国が許すまで引き出せないよう
にしたからです(ときどきこうした暴挙を米国は行います)。

このためBRICSと南アジアも含むグローバル・サウスは、ドル離れを
決定したのです。世界のGDPの50%を占め、GDP成長力は5%と高い。

ドル圏に残る米国、EU(=NATO)、英国、カナダ、豪州、日本は老大国
です。GDPの成長力は、高くても2%しかない。10年後の勝敗は明らか
でしょう。

【ドル売り、金買い】
中国は、約3兆ドル持つ外貨準備(80%はドル)を目立たないように
少しずつ売って、金を買っています。BRICS連合も、中国に倣(な
ら)っています。嫌う人も多い中国は、われわれから見るより、はる
かに強く新興国のリーダーです。

【中央銀行のゴールドバーの買いと、金ETFの買いが価格を決める】
◎金価格は、中央銀行の金地金と、機関投資家による金ETFの買いが
増えたときに上がり、
◎金ETFが売り越されたとき下がるという単純な性格をもっています。

1年間でいえば、中央銀行の地金買いと、ETFの合計で、
・400トン以下の買い越しのときは、価格が下がり、
・およそ600トンのとき、価格維持、
・およそ1000トン以上のとき、価格が上がっています。

金の供給は4800トン/年で一定しています。個人とファンドは、ゴー
ルドバーを先物を含んで、売買しています。宝飾需要46%(2200ト
ン)と工業用は6.5%(310トン)です(2022年)。

【増えた中央銀行の買い】
中央銀行の、金地金の買いは、生産量の24%(1150トン:2022年)に
増えました。リーマン危機から、ドルが下がったあとの2010年から、
中央銀行は買い越しだけをしています。リーマン危機(2008年~
2012年の4年間)は、ドル危機だったからです。

◎ドル基軸が安定していた2007年までの約30年間、年平均400トン
(合計1万2000トン)を売り越していたのですから、信じられない変
身です。中国が先頭の、ドル圏だった国々が、ドルと金への見方を変
更したからです。日本政府と日銀は、変更していません。

中央銀行の買いは、
・2018年は金地金とETF の両者で650トン(価格維持)、
・19年730トン(価格維持)、
・20年1006トン(価格上昇)、
・21年261トン(価格下落)、
・22年1025トン(価格上昇)でした。
https://www.gold.org/goldhub/research/gold-demand-trends/gold-demand-trends-full-year-2022

中央銀行と個人に買われた金地金は、売り越して市場に出ることはな
い。
・ただし銀行・ファンド・機関投資家が売買しているペーパーゴール
ドの金ETFでは、売り越しの年度があります。金ETFが売り越され年は、
金価格は下がる傾向があります。

◎2022年の四半期には、中央銀行は417トンの金地金を買い込んでい
ます(1年1600トンのペース)。これが22年11月から金が上がった原
因です。

【個人の金地金買い】
2022年の9-12月に、個人で金地金(投資用ゴールドバー)を大きく買
った筆頭が、中国人(228トン)、ユーロのEU(314トン:うちドイツ
人185トン)、米国人(128トン)です。
(WGCの、金の供給と需要データ:2022年)。

2023年1月から3月のデータは、まだ公開されていません。
この時期の、価格急騰から見ると、
1)ドルから離脱する中央銀行の買いの増加、
2)銀行危機からの個人の投資用バーの買いの増加が推計されます。

2023年の金価格上昇を予想する要素は、
1)ドル離れのための、BRICSの中央銀行の、買いの増加、
2)世界の個人投資家の、買いの増加、です。
  現物が市場で足りないので、金ETFの買いも増えるでしょう。

◎4800トンの年間供給は、変化しても100トン(±2%)です。需給の
関係から、2013年から2015年は、1980年(4倍)や2005年から2011年
(4.5倍)のような、約20年サイクルの金価格の高騰期にはいったと
見ています。

大きな要素は、BRICSとサウジが先頭の産油国(OPEC)の準備通貨の
「ドル離れ→金買い」です。

中国は、世界1の産金国(370トン/年)ですが、輸出は厳禁し、輸入
して貯め込んでいます。ロシアは世界3位の産金国(300トン)である
ため、輸入は25トン(2022年)。産金国の世界2位は豪州の330トンで
す(2022年)。

日本は、2022年に11トンを売り越しています・・・なんということか。
GPIF(公的年金基金:国民のマネーを200兆円運用)は、2022年10-
12月期に1.8兆円の損をしている100兆円のドル国債とドル株の1%で、
金を200トン/年、買うべきでしょう。200トンでも1.9兆円でしかない。
世界最大の年金ファンドが金を買うというだけでも、金価格は上がり
ます。

ドル債券の100兆円は、世界のドル離れのなか多すぎます。GPIFがも
つ50兆円のドル国債・債券は20%(10兆円)は、下がっています(簿
外の含み損)。

2021年比で18%の円安(ドル高)で、まだ目立っていないだけです。
2023年、24年、25円がドル安になると、ドル高/円安で隠れている為
替差損が現れます。

◎1980年には米国が、イランのホメイニ革命のとき、イランのドル預
金を凍結しました。中東は、米国が凍結のできない金を買って対抗し
たのです。
・この産油国の買いのため、金価格は1オンス200ドルから800ドルに
1年半で4倍に上がりました。
・このときと、2023年からは似ています。

もちろん、あくまで、金価格の性格を元にした、線的論理の推理です。
線的論理は、70%の可能性と理解してください。要素が多い複雑系の
金融商品の価格予想は、確率です。未来は確率です。
(金価格/ドル・円:再掲)
https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/#gold_longspan

■15.後記:感想・・・22ページになりましたが、まだ、言葉と数字
が頭で舞っています

円預金のリスク・ヘッジのため、円預金33%、スイスフラン33%、金
33%の長期ポートフォリオが、推奨できます。スイスフランの下落危
機は、クレディスイスを、UBSが4300億円という破格値で買収し、ス
イス中銀がマネーを入れ、当面は去りました。

◎2023年の8月に向かい、米欧で20兆ドル(2600兆円)のMBSの下落に
よる銀行危機の深化から、ドルとユーロが危なくなってきた感じがし
ています。

金の買い方では、毎月、無理のない一定額を買い続け、下がっても、
長期でもつ「ドル平均法」がいいでしょう。1800万円の非課税に拡大
されたNISAを利用してもいい。政府・日銀の、インフレでも金利を上
げないことからの、世帯の2000兆円の、60年の金融資産詐欺に対抗す
る方法は、金を買って、長期でもつことです。

ドル平均法の買いでは、
・価格が高くなったときは少なく買い、
・安くなったときは多く買うので、
総原価は、買い始めた月からの長期移動平均に一致していきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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