世界同時の、株価下落がむかうところはどこか
This is my site Written by admin on 2018年11月3日 – 09:00
おはようございます。夜明けのオレンジに色づいた太陽が、しば
らくすると、銀鱗のように海を光らせ、その光は、隙間なく繁茂
する木々の間に建つビラを、靄(もや)だって囲む大気を霞(か
す)ませる。

バリ島のリッツ・カールトンの、ベランダに置かれたソファに掛
けて、書いています。海辺の、マングローブが生い茂るジャング
ルの崖に道を作り、積み木のような建物を、並べた風情。早朝に
は、姿は見えませんが、たぶん大きくて極彩色の鳥の鳴き声が、
仲間に餌のありかを教える合図であるかのように、飛び交ってい
ます。

かつて、ジャングルの王は、蛇さえが恐れる鋭利なくちばしの鳥
だったのではないかと思えるのです。共同体を作って、群れる人
間の存在は、多くの動物と並ぶ、自然の一部であったことがわか
ります。

旅行では、ホテルが、全部の印象の50%以上を決めると思ってい
ます。ジュニア・スウィートであることもあり、部屋の広さは、
約30畳。キングサイズのベッドは、よく研究された適度なクッシ
ョンで、シーツは絹のように柔らかい。大きなカウチがあり、家
具は木が豊富なバリらしく、無垢の重い楢とチークです。

床は柔らかい大理石で、脚を伸ばしても届かないくらいの大きな
浴槽があり、広い洗面台も2つで、さらに、女性の化粧用の鏡は
別のコーナーです。クロゼットも、3畳の広さはあるでしょう。
世界中にあるリッツも各所で違いますが、バリのリッツには、長
期滞在したいと思わせるものがあります。

ゴルフ場にあるようなバギーが、電話をかけると数分で迎えに来
て、ロビー棟からビラに乗っていく。運転は、中学生に見えるく
らい小さく、ホテルが選別したのか、キュートな少女が多い。笑
顔のスマートに応接です。英語は、ほぼ完全に通じます。文章語
的な単語を使いすぎ、ぎこちない私より滑らかです。

人件費の水準は、日本の4分の1から5分の1くらいなので、サービ
スには多くの人が立つ。玄関ではいつも5人くらい。バギーの停
車場には10人くらいいて、いつも、レモンと果物をいれた冷水を
準備しています。

海のリゾート風の、このホテルを出ると、一挙に湿度が高く暑い
東南アジアの文明と文化です(気温は32度付近)。チャコールグ
レーの、刻まれた石の角が崩れ、椰子の繊維で屋根を葺いたヒン
ズー教の古い寺院があちこちにあります。

南国の果物は豊富ですが、総じて味は薄い。日本の果物と野菜は、
品種改良を経て世界最高の位置にあるのではないか。牛、豚、鶏
の肉類も同じでしょう。機械、自動車、家電に通じるかのように、
日本の食物は価格が高くて「精密」です。

小売業は、近代化以前です。家々は、沖縄に似たオレンジの瓦で、
低く、地面にへばりついています。日本のコンビニ、サークルK
が目立ちます。世界中に中国人は多いのですが、ここでは地球の
裏になるヨーロッパ系(特になぜかフランス)と、飛行機で3時
間のオーストラリアから異文化を求めて来ているようです。

町と建物、そして室内のクリンリネスは、文化の洗練であること
もわかります。水道の蛇口が灰色に曇ってごみが溜まり錆びてい
ても平気とか・・・お金がかかることではない。人々の意識の共
通基準、つまり文化の問題です。精密な機械も、整理が行き届い
たクリーンな環境でないと、作ることはできない。

単調にも見える海を、ベランダから長く見つめても飽きないのは
なぜか。太陽と海と酸素が、あらゆる生命の母だからでしょうか。
太陽も究の美です。今日は、ディナーつきのナイトクルーズです。
おいしいワインとチーズがあればベストですが、期待しにくいか
な・・・。
            *

10月5日からの、米国株急落で始まった、世界の株価の同時下落
と、ボラティリティ(≒価格変動の標準偏差)の上昇が、来年の
2019年と翌20年にとって、何を意味する動きかを見極めるために、
書きます。

(1)第二のリーマン危機(資産収縮からの金融危機)の始まり
か、(2)あるいは、世界の過剰流動性つまり中央銀行による通
貨増刷(日・米・欧・中で合計11兆ドル(1210兆円))が収束に
向かうことを予想した、株売りの、短期的な動きかということで
す。

過剰流動性は、米国の銀行間に、特に多い債券担保金融(レポ金
融や、株式担保の金融)を膨らませています。

・国債や優良株式を担保に差しいれて、相手銀行から現金を借り、
・借りた現金で、国債や株を買い、
・更に、買った国債や株を担保にいれて、現金を借りる・・・と
いうことを繰り返すレバレッジです。

中央銀行が大きく買うと、
・国債価格は上がり(金利は下がって)、
・中央銀行への、銀行が保有する国債売りと同時に買われる株価
も上がります。

リーマン危機のあと、FRBを中央銀行の盟主(リーダー)として
る日・欧・中の中央銀行は、国債を買って国債金利をゼロに誘導
し、通貨を増刷して、銀行を、現金でじゃぶじゃぶにさせること
で、不動産と株価が上がる過剰流動の相場を作ってきました。

これが、2009年から2018年正月まで、9年間も続いたのです。

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 <971号:世界の同時株価下落は何の始まりか(2)>
       2018年10月31日:有料版

【目次】

1.リーマン危機の経緯
2.今回の、世界的な株価下落の原因は二つ
3.トランプ・ショックという要素
4.2019年と2020年の株価

【後記:改造スピーカー】

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■1.リーマン危機の経緯

まず、
・2000年代の住宅バブルを警戒した2006年からのFRBの利上げと、
・2007年からの、米国住宅価格の下落から始まったリーマン危機
を振り返ります。

今回のような金利の上昇から、約2年の時間差があって、デリバ
ティブ証券の下落(保証保険のCDSは高騰)がもたらす、金融縮
小の危機になったからです。株価の平均指数は、50%下落してい
ます。

【2年という期間】
この2年という期間は、金利上昇が波及し、マネーの動きに与え
る影響を見るとき、重要です。今回のように金利、つまり米国長
期債が下がっても、すぐマネーの動きに影響を与えるものではな
いからです。

(注)米国長期金利(10年債の金利)は、2018年1月は2.4%でし
たが、18年10月は3.13%付近です。もっとも低かったのは2012年
と2016年の1.5%です。それに比べると、約2倍です。
https://nikkeiyosoku.com/dgs10/

【経済と長期金利】
資産と資源価格(株価、不動産、原油)と、実体経済に与える影
響は、長期金利の要因がもっとも大きい。長期金利は、投資の金
利に近く、投資利回りの基準にもなるからです。

(注)PERの逆数である株式益回りは、期待長期金利+利益実現
のリスク率、です。米国ナスダックPERは21倍付近ですから、株
式投資家の多数派から期待されている益回りは「1÷21=4.8%」
です。株式益回りは、リスクがあるので期待長期金利より、2%
から4%は高い。なお、18年10月の、ナスダックの21倍のPERは、
5倍分(約30%)は高すぎるバブルでしょう。

経営者によってROI(利益/投資)が、長期金利の約2倍は見込め
ないと、投資増は行われません。長期金利の2倍が、期待利益と
して必要なのは、投資するときの期待収益としてのROIには、実
現リスクがあるからです。

雇用を増やすことも、企業経営からは賃金を延べ払いする投資で
す。雇用期間の平均月収が、賞与を含んで60万円の正社員では、
15年勤務すると、延べ払いされる予定投資額は「60万円×12か月
×15年=1億800万円」です。ある年度に100人を増加雇用すれば、
108億円の設備投資と同じです。

投資と雇用増は、長期金利の約2倍の、期待ROIがないと実行され
ないことが、以上からわかります。このように資本主義における
長期金利は、重要です。ももとも、資本(マネー)の、基準とな
る利益率が長期金利だからです。

金利は、資金配分を決めるものです。金利には、2種があります。
(1)中央銀行がコントロールできる短期金利(米国ではFF金利
=政策金利)、
(2)短期金利をベースに、リスク率を加味して、債券の売買市
場が決める長期金利です。

中央銀行は、一般には長期金利の操作はできず、短期金利によっ
て長期金利に影響を与えることより、間接的に誘導できるだけで
す。

▼リーマン危機の経緯

住宅価格が上がっていた2005年のFF金利は、2.25%と低かった。
2000年の、IT株バブル崩壊後の不況への対策として、FRBの議長
グリーンスパンがFF金利の利下げをしてきたからです。

ところが、下がった金利の副作用として、2005年ころになると住
宅価格の上昇が激しくなり、2000年の2倍に上がります。低い金
利の住宅ローンが、ふんだんに供給されたからです。全米の平均
価格では、1500万円付近だったものが、3000万円に上っています。

一方、世帯所得は、同じ5年では、2倍になっていません。ローン
金利が低くなったので、世帯は「普通の金利なら利払いと返済が
できない無理な借り入れ」をして住宅を買っていました。失業者
にも住宅ローンがおりたのです。日本の不動産バブル期(1980年
代後半)のように、不動産担保の掛け目もなかった。

5000万円の評価のものでも、プラス2000万円の自動車買い替えと
内装の改造費も貸し付けられていたのです。「住宅価格は、年率
10%で上がる」と金融機関が見ていたからです。米国では、住宅
価格と株価の上昇が、負債での自動車や家具の購入と、消費を増
やしてGDPを上げるのです。

貸付の資金は、デリバティブである証券化金融で集めていました。
住宅ローンを買い集めて証券化して(MBSやABS)、リスクのない
国際並みの信用のAAA格をつけた債券として、小分けして売るこ
とで、住宅ローンのマネーが供給されていたのです。米国での
ローン原資の調達方法は、預金が原資になる日本の住宅ローンと
違っています。

【2006年からのFF金利の上昇】
2005年になると、「住宅価格の2倍への上昇」に危機感をいだい
たFRBのグリーンスパンが、1回が0.25%の利上げ(短期金利)を、
2007年まで12回続け、5.25%に上げています。
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_int_america-seisakukinri

▼FF金利上昇の波及から起こったこと

(1)債券担保金融の縮小
この3%の短期金利の上昇は、国債価格を下げ(既発長期国債は1
8%下落)、米国でとくに多い債券担保金融を縮小させます。

担保の国債価格が18%下がると、18%の追加担保が必要になるか
らです。この債券担保金融の縮小は、住宅ローン資金の減少にな
ります。

(2)住宅価格の下落
金利の上昇による住宅ローンの減少から、2006年にピークを打っ
た米国の住宅価格は、2007年には、目に見えて下落が始まり、20
08年には、下落が鮮明になっていったのです。

知識として記憶すべきは、金利の上昇から金融危機への波及の時
間が、2年ということです。

(3)デリバティブ証券の暴落
住宅価格の下落は、まず住宅ローン証券の市場価格を下げます。
AAA格とされていたMBS(不動産ローン担保証券)は60%に下がっ
たのです。

同時に、債権の回収を保証しているCDS(債権回収の保険)の料
率は高騰します。事故率が高まったときの自動車保険料、死亡率
が高まったときの生命保険料と、同じ原理です。

(4)リーマン・ブラザーズとAIGの破産
金利と配当の高いMBSを多くもち、CDSを売って保証を引き受けて
いたのが、投資銀行の5位だったリーマン・ブラザーズと、世界1
の保険会社のAIGでした。この2社は、約2週間で、CEOも知らない
間に、瞬殺されたのです。

2018年で現在では、海外への融資が多いドイツ銀行がもっとも多
くCDSを抱えています。債券が下がったときの補償の推計額は、5
0兆円です(エクスポジャーという)。ドイツ銀行の危機が、約
4年も続いている理由がこれです。

中国を含む、新興国の通貨と株価下落で、CDSの補償が実行され
れば、AIGのように破産する含み損を抱えている、と推計してい
ます。今はまだ、ユーロの中央銀行であるECBの増刷マネーを使
った「飛ばしと繰り延べ」でしょう。繰り延べは、銀行間で行わ
れています。

【金融機関の相互連鎖】
預金が少ない米国の金融機関は、特に大きく債券担保金融で連鎖
しています。お互いの、貸し借りが大きいのです。相手銀行(カ
ンター・パーティ)が、ある日、支払い不能になると、予定して
いた入金がなくなって自行も破産します。

貸し借りの期間が、1日や1週間という短期金融は、相互に、蜘蛛
の巣のようにつながっているので、時間的な余裕はありません。

システムを破壊するウィルスも、瞬間に、拡散して伝播するイン
ターネットのWEB(蜘蛛の巣)と同じ構造です。

このためAIGとリーマン・ブラザーズとともに、全米の大手銀行
も、約2週間で支払い不能になりました。医学で言えば、ペスト
のような、急性期の伝染病でした。

【FRBと政府による、急性期の病状への対症療法】
方法は、ふたつしかなかった。
(1)FRBのドルの増刷と、
(2)政府からの資本供給です。

米国は、瞬時にこれを行いましたが、CDSの支払い不能に陥って
いたAIGは救っても、同じ症状のリーマンは破産させています
(選別の本当の理由は、言われませんね)。

FRBは、08年の5.25%から、09年の0.25%にまで、5%もの大幅利
下げを行ったのです。同時に、FRBの信用創造力を使ってドルを
増刷して、下がっていた国債と、暴落していたMBSを額面価格で
買い上げて、金融機関の含み損を引き受けることにより、救済し
たのです。

「大きすぎてつぶせない」というのがFRBの言葉でした。このFRB
のマネー増刷によって、米国発の世界恐慌は回避されたと言って
いい。

ただし、金融的な緊急貸付による救済は、負債を膨らませますか
ら、危機の先送りです。債務超過になった企業に、追加で貸し付
けることと同じです。

その後、業績が回復し、利益を継続して出すことができれば、破
産は避けられます。1998年の日本の、資産バブル崩壊から来た銀
行危機のときは、ほぼ2006年まで、約8年かかっています。危機
からの回復には8年という期間も重要です。

実証的に言えば、
・金利上昇から2年で、資産価格の暴落に波及し、
・金融機関の、連鎖しているシステミックな危機からの回復には、
8年かかる。

複雑系の中における、科学的な事実は、将来経済を予想するとき
のカギになります。気象で言えば、台風の方向のようなものです。

■2.今回の、世界的な株価下落の原因は二つ

今回も、リーマン危機のように米国発でした・・・

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