こんにちは、吉田繁治です。有料版の定期発行日です。本稿も、
テーマの性格と緊急性から、有料版・無料版共通とさせていただき
ます。有料版の読者の方々、どうか理解をお願いします。本稿は読
むのに、30分かかるでしょう。怒濤の二週間が過ぎました。
この期に及んで、と感じます。米英仏の多国籍軍がリビアに空爆を
行っています。米政府は展開を読んだ上のものか。
カダフィ体制を倒すことが、目的でしょうが、(当然に)市民の犠
牲が多数出た。アラブ諸国は反米国、反西欧に向かっています。反
発は予測できているはずです。そうすると目的は何か?
バーレーンに、サウジ軍が侵攻しています。イスラム主義と、米英
仏が関与していた、「北アフリカとアラブの原油利権の戦い」が本
質でしょう。
イスラエル・イラン戦争も、想定できます。中東全域の情勢が、ア
フガンのように「カオス化」に向かっています。方向を持たないエ
ネルギーの衝突です。「第三次石油危機」へ向かう可能性が高くな
っています。
あぁ、書いている今(am7:36)、福島県を震源に、内陸型の震度5
強(M5.8)の余震が起こっています。震度5強は、家具が倒れ、立
って歩くことができないくらいの強い揺れです。脆弱になっている
原発設備への、諸々の修復パッチは大丈夫か。(注)余震は大小で
70回近く起こっています。
M9級の地震の後は、数ヶ月、最大M8級の余震の可能性(一説では
70%)が高いという。M8が万一直下なら再びの大震災。日本海溝に
プレートの歪み(エネギーの凝縮)があるはずで、400kmという
巨大活断層の南北(三陸沖と千葉県東沖)での反発が怖い。
この10年、金融・経済・事象で、原因を分析し、予測することを行
っています。今回ほど「不確定(カオス)」感じたことは初めてで
す。何が原因で、過酷すぎる試練を多地点同時に、次々与えている
のか。
【震度は、設計の想定を超えるとは言うが・・・】
日本の原発(運転中)は55基です(米国104基)。建設中が3基。
この10年、原発が立つ地域での設計想以上の地震は今だけではない。
・00年10月 鳥取県西部(直下型M7.3)→直下型の想定はM6.5
・04年10月 新潟中越 (直下型M6.8)
・07年 7月 新潟中越沖(M6.8)+余震→刈羽原発の緊急停止
わが国原発の最大問題のひとつは、福島のように、同じ敷地に数機
~6機の原子炉が、隣接して立つことです。先に行ったフランスで
は、リスク分散されていました。
大地震と津波のとき、複数の炉、配管、建屋が同時に壊れる可能性
が高い。原発PLANTの設計原則つまり「多地点分散」を守っていま
せん。理由は、各地で建設反対が強かったことです。われわれの文
明と生産は、それを支える電力の恩恵を、受けています。福島県の
苦難は、われわれが押しつけたとも言えます。
【文明の基盤】
冷暖房がふんだんに効いた生活は、皆が抑制せねばならない。家庭
の使用はエアコン25%、冷蔵庫16%、照明16%、テレビ10%、カー
ペット4%、温水便座4%、衣類乾燥2.8%、食器洗浄1.6%、パソコ
ンを含むその他家電が20%です。
スリーマイル事故(1979)のあと、米国では40年原発の新設は停止
しています。他方今建設中は、日本(3基)、ロシア(8基)、韓国
(6基)、中国(8基)、インド(6基)です。特に新興世界は「ク
リーン・エネルギー」とされる原発に向かっています。
今後、設計の安全基準をM9級に上げねば世論が赦さない。同時に、
福島原発のように、先進国で建設後40年を経過し、ベースが古い設
備(部品交換は行われています)が問題です。終結処置はどうする
のか。
今後われわれは、節電、高い電力費、そして電力会社の国有化へも
向かう。電気自動車はどうなるか。加えて第三次オイルショックも
想定できます。
一次エネルギーに占める電力は、44%(08年)です。残り56%が原
油や石炭。
産業の部門別電力消費では、製造業42%(4200億KW/時)、非製造
業の業務使用28%(2800億KW/時)、家庭27%(2700億KW/時)です。
全体では1兆KW/時です。家庭が15%節電しても、全体量の4%に過
ぎません。製造業(主は動力用モーター)の使用構成は42%です。
これを10%も減らせるか・・・この問題になる。
2011年のGDP(商品生産、流通量)に、直接かかわります。直接の
被害(物損で20兆円くらいされる:阪神淡路は10兆円)も甚大です。
今回、その後の波及が、深く、長く、大きい。計画停電でコンピ
ュータが止まれば、今の企業活動は、何もできないのです。
震災特例国債を最低20兆円、最高では50兆円発行せねばならない。
仮設住宅は短期です。社会インフラも消えた。マネーが必要。
ヘッジファンドは、日本国債のCDS(回収保証保険)を、急遽、1.
178%に上げています。カントリー・リスクの高まりです。新興国
の国債並みの信用度です。
政府財政は金利高騰の危機を迎えます(金利はCDSの料率+α%)。
実質GDP低下の中での、44兆円に加えた20~50兆円の、新規国債増
加だからです。皆で負担せねばならない。
部品ロジスティクスと生産活動の急低下で、物価は上がります。身
も蓋もない大天災が準備したシナリオがこれだったのか。至る所、
大空襲での爆破の跡に似ています。
原発での発電割合は、関西48%、九州41%、北海道40%、四国38%、
北陸33%、東電23%、東北16%、中部15%、中国8%、沖縄0%です。
全国では、約30%(3000億KW/時)が原発での発電です。火力(石
油・石炭・天然ガス)が60%、水力は9%に過ぎません。太陽や地
熱は全部合わせて1%です。
産業と生活のエネルギー基盤に方向転換が生じます。世界中で、で
す。文明はハードウエア、文化がソフトウエアです。若干、以上の
ようなことにも言及する余裕が出ました。
2万人を超える犠牲者と、数十万戸の家屋被害には、言及しますま
い。映像を見て、どう言っていいか、分からない。
当方が描写しても意味はない。若干の献金しかできない。おばあち
ゃんが、一緒に高台に向かう車に乗っていた孫を「逃げろ」と叫び
ドアを開け、自分は津波に流されたという。私が、何を言えるか。
日銀は当座預金を、大震災前の18.5兆円から緊急に41.6兆円へと
23.1兆円増やしています。これは民間金融機関と政府の、金利ゼロ
の口座です。10日間で23.1兆円のマネーを印刷(=貸し付け)した
ことと同じです。
更に、短資市場では短期国債を10兆円分買って現金を振り込む。売
買があるので増加とは言えませんが、市場介入の累計額は92.5兆円
という巨額に達しています。目的は言うまでもない。金利の高騰
(=国債売り)を抑え、政府と金融機関の資金ショートを埋めるこ
とです。
*
福島県内では、昨日の、ほうれん草や牛乳のみならず、ほぼ全部の
野菜で、放射性物質(気体性)の高い値、つまり安全基準の5倍~
160倍が検出されています(3月23日午前)。検査が進めば、他の食
品や隣接県にも広がる。30Km圏の、海の汚染濃度も高い(安全基準
の25~120倍)。
ヨウ素やセシウムの。気体性の放射性物質は拡散し、蒸気が雲とな
り、雨や雪になって降るとき、濃さが高まる。
放射線量の半減期が短い、放射性ヨウ素131(8日)の線量は、ほぼ
1ヶ月で6%に減る。しかし土壌や水が濃縮して含む、放射性セシウ
ムの半減期は30年と長い(セシウム137:融点が28度と低く、蒸発
して気体になる)
資料を読んでも意味の解読がとても難しい食品の汚染と関連事項を
取り上げます。原発事故の展開が、安定したわけではない。
現場での戦いは、万一の危機をはらむ数ヶ月、安定期の数年と続き
ます。そして石棺や巨大プール、または他の方法で2000トン余の核
燃料を閉じ込めねばならない。
燃料は、ウランが壊変(原子の崩壊:核分裂)したあとの20種くら
いの強い放射性物質(気体性、重金属性)を含みます。
放射性物質は、何らかの原因で冷却水が不足すれば、崩壊熱がたま
り、温度が上がってついには溶解します。
使用中、使用済み燃料でも変わらない。燃料の温度が高まれば、ま
ず、気体性の放射性物質(ヨウ素やセシウム)が出ます。
半減期が、地球時間で長い重金属の放射性物質は、数億~数十億年
経っても消えません。熱と放射線を出して崩壊しながら、別の放射
性物質に壊変してゆきます。熱を抑える戦いです。
世界が注視しています。
当方は何の党派にも属していません。今後も属しません。原発反対
論者でもありません。原子力や建設関係に、何の利害関係もありま
せん。ただし、原発PLANTの安全の想定基準に疑問をもっています。
記述に誤りがあれば、どうか、ご指摘をください。
転送の際は、全部か、項目単位でお願いします。
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<3月22日号:食品と飲料と安全の原理>
Vol.530 有料版・無料版共通
【目次】
1.風評の構造
2.「安全」ということ
3.食品の安全基準に関係する8つの概念
4.食品・飲料の、安全基準の予備知識4項
5.全食品の安全基準(「5-3」の基準」)
6.ヨウ素剤とは何であり、どんな薬効か
7.誤解を生む、あいまいな言い方
8.飲料水、料理水の安全
9.(参考)物理的半減期と体内半減期
【後記】
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■1.風評の構造
3月22日の午後12:10に書き始めました。途中までの情報は、午後
5時30で書いています。事柄の性格から、書いた後の確認に、時間
を要します。
日本各地で、風評を含む問題になっている生鮮食品と(野菜、食
肉)、牛乳等の飲料、及び飲料水(本稿ではまとめて食品と言う)
の安全です。
(1)公的な安全基準に関しては、長文で用語が難しい「第52回原
子力安全委員会資料第5-3号」です。グーグル等で、この名前で検
索すれば、出てきます。
実に難しい。しかし全111ページを、辛抱して読めば、食品の安全
だけでなく、どの地域がなぜ避難になり、どう退避すべきかの基準
がわかります。この委員会資料を本稿では「安全基準(または単に
「5-3」)」ということにします。
本稿を書く理由のひとつが、元資料(「5-3」)の難しさです。
(2)放射線医学に関連した数値と内容は、多くが、原子力資料情
報室の崎山比早子氏による、記者会見と資料に基づきます。
(医学博士:元放射線医学総合研究所主任研究員)
動画サイトのUSTREAMでも、視聴できます。
▼風評の構造と対策
風評は、以下の3要素の構造で、生まれます。
風評=社会不安
=事象の重大性×情報のあいまいさ×当人の知識差
事象が重大で、マスコミ、インターネット、メールで、多くの異な
る情報が個人に流れると、情報の曖昧(あいまい)さから、社会不
安が生まれやすくなります。現在が、その時点でしょう。
今回は社会不安(大↑)
=(1)事象の重大性(最大級)×(2)情報のあいまいさ(大↑)
×(3)当人の知識の差(大↑)です。
このことから、本稿では、(1)事象、(2)情報、(3)知識に触
れねばならない。
【難問】
難問は、原発PLANTの破壊の、進行・修復・同程度の予測です。
これは、予断(確定的な予測)を許さないと政府も言う。
諸条件の仮定をした上での推理はできますが、実際は、分からない。
原子炉の内部、外部の状態を示す、肝心な計器(いわば神経)が、
充分に働いていないからです。電源が接続され、給水ポンプが動い
て、配管を通じ、燃料の崩壊熱の発生以上に、水が入る時期(安定
期)を待たねばならない。
それにしても、今のところ、よくあの程度の破壊で済んでいると思
います。
時々、高い熱でなければ出ない蒸気の噴出や、火災と思える灰色の
煙が出るのはなぜか、原因が公表されていません。もし現場で原因
が分かっていないなら、問題です。なお、重要なことでの隠蔽はな
いと思わねば、論は進みません。
大爆発を起こし、膨大な量の使用済み核燃料が外部に露出してしま
った三号機のプールに、ホースから遠隔補充した水を漏らす、ヒビ
や穴が空いていないのか・・・これも分からない。(23日:午後5
:30時点)
事態は落ち着いている、危険はないと発表され、最悪(内部容器や
格納容器の、破壊、漏れ)はないだろうとされています。
あぁ、今、「暗闇だった三号機の中央制御室に、照明が灯ったと報
じられました(22日:午後23:15)」 動く計器は、常時読めるで
しょう。
そうすると、今日(23日)からは、重大な事故過程にある3号機の、
原子炉の内部状態や外部状態(格納容器)、配管の状態も、つまび
らかに分かる。「暗闇からの一縷の希望」です。どこがどう悪いの
か分かる。(注)今まで、充分に分かってなかった。
肝心な、冷却水を炉に入れるポンプへの通電は、これからです。そ
して計器は正常に機能するかどうか・・・
津波と放水の海水(電気を通すNaClの電解質)に濡れ、大電力でシ
ョート(=火災)を起こす可能性のある部品を、一個一個、通電テ
ストし、安全を検証せねばならない。壊れた部品は交換せねばなら
ない。これも、放射線が強い原子炉近くでの作業ですから結構大変
です。
■2.「安全」ということ
▼避難・退避の安全
3月22日午後の、福島原発の全6機の情勢では、
・政府指示による避難が20Km圏、
・自宅退避が30Km圏は、正しいと判断します。
・区域の外は、毎日生活していても、今は安全という意味です。
(注)6機を、同じ敷地に隣接させる設計は、「分散するという安
全設計での基本原則」を守っていると思えません。コンピュータの
バックアップ機や電源も同じ場所なら、地震や火災のとき安全の意
味がない。
上記は、崩壊熱と圧力の高まりが原因の、蒸気爆発等で放射性物質
についての急な悪化があれば、別です。なお福島第一原発から
30Km圏の人口は13.6万人です。
米政府は、米国人に対し、80Km圏内を避難対象区域としていますが、
これは、米国の、法的安全基準からです。
可能性としての、
(1)格納容器(耐圧設計は約4気圧)の破壊と、
(2)核物質を含む蒸気の、外部漏洩の多さを予想したものでしょ
う。
これを逆に言えば、1機の格納容器の、相当程度の破壊が(万一)
あったときは、爆発の程度と風向きで変わりますが、ほぼ80Km圏が
避難区域になるということでしょう。
(万一の注)炉心の核燃料を囲む、内部の圧力容器の破損や爆発
(高圧爆発:設計耐圧は86気圧付近)になれば、チェルノブイリ級
(危険度7)です。このときは、北関東は危険域になるでしょう。
設計耐圧の、経験的な余裕度を設計耐圧の2倍(190気圧付近)と言
う人もいます。しかし(1)配管の接続状態や溶接、(2)部品の老
朽化、(3)蓋を閉めるボルトの状態等の、多くの複雑な要素があ
って、設計責任者は余裕度という概念に反対しています。40年の歴
史があるからです。中性子が当たり続けると、鋼鉄も、ももろくな
る。
▼食品(生鮮、牛乳、水)の安全基準(「5-3」」について
3月21日以降、福島県、茨城県、栃木県、群馬県の4県に対し、ほう
れん草とカキナの、出荷停止が図られています。
出荷停止は、物流を止め店舗に並べないということ。牛乳では、福
島県内の「原乳(家畜から採った生乳)」が出荷停止です。
政府は、「(出荷制限の)対象品目を摂取し続けたからといって、
直ちに健康に影響を及ぼすものではない。出荷制限措置は、暫定基
準値を超える状態が長く継続することは好ましくないため決定し
た」と説明しています。
「直ちに、健康、影響」という言葉に、風評を生む「あいまいさ」
があります。(風評の構造=事象の重大性×情報のあいまい×知
識)
この点をとても微力ながら以降で補います。書く方法は難しい。
「核物質」と言うだけで、感情の反応が起こるからです。しかしわ
れわれは、とても微弱ながらいろんな放射性物質に囲まれています
(日本は、年間で平均1ミリシーベルトに被曝)。
【1.「直ちに」の推測】
政府の安全基準では、100mSv(ミリシーベルト)/年以上の、放射線
量の累積被曝が、健康障害を起こす可能性があるされています。
(注)実際は、体内での内部被曝を生む放射物質の違いで、累積度
が変わる。
政府発表は、福島県、茨城県、栃木県、群馬県産の、ほうれん草を、
普通の人が「1Kgではなく日常量分」食べても、「慢性の健康障害
を起こす可能性がある内部被曝(臓器内への放射性物質の残留によ
る被曝)」を受けることはないという意味だと解釈します。
【2.しかし、食品・飲料による複合作用の課題が残る】
[食物・飲料では、累積的な複合作用がある]
人はいろんなものを食べます。このため野菜各種と飲料での、表面
付着(または内部の核物質の含有)が課題になります。その意味で、
安全基準の5倍~160倍の含有率は問題です。(注)そのための出荷
停止です。
表面への付着は、水や温水で普通に洗えば、農薬のように、70%く
らいは落ちるとされます。汚染のない流水でよく洗うか、多い水で
の煮沸でこの効果がある。周辺では、これを実行することです。
食品・飲料では「複合作用」が問題です。
複合作用を防ぐため、食品・飲料の、相当に厳しい安全基準が定め
られています。「第52回原子力安全委員会資料第5-3号」:以下
「5-3号」という。今回の事故の前に決められた全食品の安全基準
です。
【安全基準(「5-3」)】
食品の安全基準は、同じものを、毎日1Kg(大量)、食べるという
ことではなく、普通の人が、普通の量、1年間に摂取する平均食品
量で、50ミリ・シーベルトに達する可能性が低い基準です。絶対の
確定ではない。可能性です。科学は全部がこれです。100%はない。
このため、安全基準の25倍の、気体性放射性物質(特に放射性セシ
ウム)を含む食品を食べれば、[平均的な摂取量での365日分÷25
=平均量の14.6日分]が限度になります。現在は、これに該当する
ものは出荷禁止対象になっています。
この観点に立つと、TV報道や発言では、疑問に思えるものがありま
す。(注)本稿は、読者の方からのメールでの、指摘を受け、調べ
て書いたものです。
(注)今の官房長官の発表は、非現実な1Kg/日食べることではなく、
普通の人の、1日平均摂取量を言うように変わりました。(3月23日、
午前11時) 正しい言い方です。ポパイでもない限り、ほうれん草
を、1日1Kgも食べる人はいない。
■3.食品の安全基準に関係する8つの概念
まず、以下の予備知識が必要です。臓器内での、半減期が109日の
放射性セシウムの、安全基準は以降で示します。半減期は、内部被
曝の放射線の量が1/2に減る期間です。
▼「ベクレル(Bq)」と「シーベルト(Sv)」という計測単位
【(1)まず、ベクレル】
ベクレル(Bq)は、
・1秒に1個の原子核が崩壊することを言う単位です。
1000Bqなら1秒間1000個の原子核が、エネルギー出し崩壊する。
その壊変で、人体のDNAを傷つける1000本の放射線が出ます。
これが核物質の基本原理です。
食品・飲料・水でいう、例えば1000ベクレルは、1Kgの量当たりで、
1秒間に崩壊する原子核が1000個含まれ、体細胞に1000本の放射線
の飛跡(透過した跡)を残すという意味になります。
【(2)次に、シーベルトとBqの関係】
◎放射線量の単位である、1ミリシーベルト(年間安全基準量の1/
100)の放射線を浴びると、
・人体の1個の細胞につき、
・1本の放射線の飛跡を浴びると理解していい。
人体の細胞数は、重なった60兆個とされます。
理解のためには、このイメージです。
(注)自然界からの平均被曝量は、日本人は1ミリ・シーベルト/年
です。世界平均が2.4mSv/1年です。この点、マスコミ情報はちいさ
なことですが、間違いです。自然な状態での2.4ミリシーベルトは
X線撮影や、空港での金属探知機を含む被曝量と見ていいでしょう。
【(3)1000mSvは、ほぼ致死】
1000mSv(安全基準である100mSvの10倍の被曝)は、1個の細胞に
つき、放射線(いわば微細弾丸)の1000本の飛跡(飛んだ経路)が
残ることです。
1つの細胞を突き抜ける放射線1000本が、細胞の核内にあるDNAを傷
つけることは、イメージとしても了解できるでしょう。
このため、1000ミリシーベルト(1Sv)/年以上の被曝は、人体に、
死に至ることが多い急性の障害を起こします。
体中のDNAを破壊し、血液を含んで、正常細胞の再生ができなくな
るからです。細胞の再生がないと、生物は、急速に死にます。
【(4)安全基準の100MSv/年 以内】
日本政府が年間安全値とする100ミリシーベルトは、この1/10であ
り、1つの細胞あたりで、1年間に100本の放射線が透過する値です。
100mSv/年以内を、微弱放射線と言います。細胞核のDNAの破壊は
ゼロではなくても、慢性のがん疾患を大きく増やす値ではない。長
期間喫煙の害が、はるかに大きいでしょう。当方もダメです。
年間で100~50ミリシーベルトの累積被曝量は、タバコの害より小
さいと理解していい。
放射線の害を、比較的に厳しく見ている医学者も、100ミリシーベ
ルトの年間被曝で、100人に1名(1万人で100名:1%)のがんが増
える確率的な可能性と言っています。(注)被曝は、体が放射線を
浴びること。
【(5)X線撮影】
放射線は、減衰しながら、体内(物質)を突き抜けます。感光版へ
のX線が、ある部分で強く、別の部分は弱く当たるため、外からは
見えない体内の写真が撮れます。
金属は一般に、放射線を通しにくいので、その形が黒く見える。空
港の金属探知機の、ディスプレイを覗くと、これがわかります。
【(6)DNAとは】
◎DNAの傷や破壊が、がんの原因です。
DNAは、細胞のいわば「鋳型」です。新しい細胞は、DNAの働きでコ
ピーされて出来ます。この鋳型が多く壊れると、体内にがん細胞
(異状細胞)が出来やすくなる。
核物質が放つ放射線は、累積量が、身体にとっての問題です。
ただし核物質の違いによる害の差はない。同じ被曝量(シーベル
ト)なら、同じレベルの害が現れます。プルトニウム同位体が、害
が強く、セシウム同位体やヨウ素同位体が弱いとも言えません。
【(7)重金属の、微細粉末】
しかし重金属のプルトニウム同位体のように、臓器に蓄積されて残
留し、放射線を放つ期間(半減期が2.4万年)が長い物資は、量が
少なくても害が大きい。長期の内部被曝と言います。(後述の表)
(注)同位体は、同じ原子番号の元素の原子において、中性子数が
異なるものを言います。放射性の元素(ヨウ素やセシウム)では、
放射線を出しながら、物質が壊変(放射性崩壊)することがおこり
やすい。
微量の核物質が、長期間、臓器に沈着して起こるのが、その放射線
による内部被曝です。
【(8)気体性放射物】
大気や蒸気とともに、広く拡散しやすい気体性物質(ヨウ素同位体
やセシウム同位体等)は、
・1秒当たりに放つ放射線量が多く、
・逆に、体内沈着したときでは、半減期が8~100日と短い。
これは、尿や便で、外部に自然排出されるためでもあります。
ただし、一旦臓器に沈着したプルトニウムはほとんど排出されず、
一生の間、放射線を出し続け、当人が死んでも残って終わらない。
【(9)食品・飲料のベクテルのイメージ】
確認ですが、食品・飲料の1Kgで200Bq(ベクテル)なら、それを
1Kgを飲食すれば、体内で、1秒間に200本(=200Bq)の放射線が出
るという意味です。100gなら20本(20Bq)/1秒に減ります。
体内に核物質が留まる間、核物質で大きく異なる半減期で、線量を
半分に減らしながら、放射線を出し続けます。
再確認すれば、ベクテルは時間では、1秒間(短時間)の放射線量
です。1時間なら、ほぼ3600倍になる。1日で、8万6400倍です。
このため半減期の長さが重要になります。プルトニウムが。微量で
猛毒とされるのは、その半減期が人の寿命をはるかに超えて長いか
らです(半減期2万4000年)。寿命をはるかに超えるので、ウラン
やプルトニウムは、出る放射線量がまるで減らないと思っていい。
■4.食品・飲料の、安全基準の予備知識4項
まず、予備知識の4項からです。
【(1)各種食品と飲料の、単独摂取量】
食品の1Kg(キログラム)は、相当な量です。1回の食事では、各々
の食品は、多くても数100グラム単位でしょう。1回の食事で、全部
を合わせて、1Kg食べる人も、お相撲さんや格闘技のスポーツ選手
以外は少ない。(注)飲料水は別です。
ステーキ1枚で、(日本人は)160グラムくらいの量です。牛乳のコ
ップ1杯は、180グラム(1合)でしょう。当然、水やお茶も同じで
す。毎日なら、1回摂取量を掛ければいい。
各種の野菜は、大食する人を除き、1回の量は多くとも数百グラム
でしょう。
【(2)各食品単独で、50ミリシーベルト/年以下が安全基準】
安全基準(「5-3」)の上限は、飲食での摂取量が多いと慢性の障
害が起こる「確率」が高くなるという意味です。
これが、複合して食べる、各食品(3区分)においての50ミリ・
シーベルトの安全基準(「5-3」)の意味です。
なお個人で安全か安全でないかは、確率です。安全基準を大幅に上
回れば、障害の確率は高くなりますが(例えば300~500ミリシーベ
ルト)、50ミリや100ミリシーベルトでは、障害確率は低い。
【(3)身体障害の意味】
確率は、被曝後の、DNAの破壊量によるがんの発生の、増加です。
累積&複合で100mSvという安全基準以下の微弱放射線量でも、
1mSvの被曝量増えると、ほぼ0.01%(1万人1名)の、慢性期のがん
の発生が、高まるとされています(晩発的効果という)。
50mSvの余分な被曝(内部+外部被曝)では、1万人のうち50人
(0.5%)のがんが増える。100mSvなら100人が増える。(以上の医
学的見解は、崎山比早子氏による)
なお再確認ですが、各食品・飲料の安全基準は、普通の量を1年食
べたとき、累積で50mSv(50ミリ・シーベルト)の被曝に達する値
です。
これは、いろんな食品・飲料の複合作用を考慮にいれためです。
補足の1号(11.03.18日号)で示した累積被曝量と、疾患の関係は
以下です。
本稿の食品汚染の安全基準を知った上で再読すれば、もっと分かり
やすくなるでしょう。
【(4)累積被曝量と、人の疾患の関係】
【累積被曝線量】 疾患
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[急性疾患]
7000~10000mSv ほぼ即死
4000mSv 短期間で死亡
1000mSv 悪心・嘔吐
500mSV 血中のリンパ球の減少
[慢性疾患]
400mSv 白血病が増える
100mSV 健康被害は少ないとする政府基準
[以下は日常値とされている]
100mSV がんの確率が1万人で100名(1%)増える
50mSv がんの確率が1万人で50名(0.5%)増える
25mSv がんの確率が1万人で25名(0.25%)増える
1mSv(1000μSv) がんの確率が1万人で1名(0.01%)増える
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(いずれも可能性:個人差、年齢差は大きい。100mSv以上は日経
新聞、100 mSv以下の微弱放射線量の分は、原子力資料情報室の、
崎山比早子氏の公表データより)
■5.全食品の安全基準(「5-3」の基準」)
次は、食品分類毎の、各食品の、基準放射線量です。6項を順に理
解してください。
【(1)放射性ヨウ素の安全基準:体内半減期7.5日】
放射性ヨウ素は以下です。臓器内や動植物内、及び水や牛乳内での
半減期は7.5日と短い。
半減期が8日なら、放射線量は1ヶ月で約6%(0.5の4乗)に減りま
す。1年なら、ほぼ消滅です。ただし1秒に出す放射線の量(シーベ
ルト)は、崩壊期間が短い分、大きい。何事も裏腹です。
それに、放射性ヨウ素は、集中的に甲状腺に集まる性質があります。
飲料水・牛乳・乳製品・・・・・・300Bq/1kg 未満
野菜類(根菜、芋類を除く)・・・2000Bq/1kg 未満
ほうれん草で、この安全基準の25倍というのは、45000Bq/1kgの、
放射線量が検出されたということです。1Kgのほうれん草(全量)
が、1秒に4500本の放射線を出す。これを知らず、100g食べると
100本です。半減期は短くても、短期集中が問題になる。
1Kgあたりで8万2000ベクレルという高い値(安全基準値41倍)を示
した野菜もあります(福島県)。これを100g食べると、8200Bqで
す。1年続ければ問題です。数日なら、自然放射線の範囲で何ら問
題はない。
次に示す、半減期がヨウ素131より長いセシウムで入っている肉類、
魚、穀類は、上記の放射性ヨードによる安全基準からは除かれてい
ます。
理由は、放射性ヨウ素の半減期が、7.5日程度と短く、肉類、魚、
根菜類に蓄積しても、その中で何回かの半減期を迎え、放射線量が
減った後に食べる、人間への移行の影響が小さいからです。
しかし人間は、野菜類、穀物類、魚、肉類、及びそれらを混ぜた加
工物と、微量の残留農薬や化学物資、それに必ず弱くとも副作用が
ある医薬など、実にいろんなものを食べ、動植物の食物連鎖の頂点
にいますから、その分リスクは高い。
このあたり複雑な複合性が、食品の安全基準で、一般の常識での理
解をはばむややこしいところです。
【(2)放射性セシウムの安全基準:体内半減期108日】
飲料水・牛乳・乳製品・・・・・・・・・・200Bq/1kg 未満
野菜・穀類・食肉・卵・魚・その他食品・・500Bq/1kg 未満
その他食品は、書かれたもの以外の全食品(everything)で種類が
多い。
【(3)ウラン235(半減7億年)と、
ウラン238(半減45億年)の、安全基準】
飲料・牛乳・乳製品・・・・・・・・・・・20Bq/1Kg 未満
野菜・穀類・食肉・卵・魚・その他食品・・100Bq/1kg 未満
【(4)プルトニウム239:半減期2万4000年:
安全基準はウランと同じ】
飲料・牛乳・乳製品・・・・・・・・・・・20Bq/1Kg 未満
野菜・穀類・食肉・卵・魚・その他食品・・100Bq/1kg 未満
今回検出された、以上の基準の5倍~25倍は、長期間(一ヶ月以上
等)、毎日、多く食べればやはり問題でしょう。
【(5)飲料、牛乳、幼児】
飲料と牛乳で安全基準(「5-3」)が厳しい理由は、成長のための
細胞分裂が極めて盛んな乳幼児が飲むことが多いからです。
なお念のために言えば、半減期が長いウランとプルトニウム以外の、
ヨウ素同位体とセシウム同位体は、大人も幼児も、おなじ基準です。
理由は、半減期が短いからでしょう。
【(6)洗って、水と熱を加え、調理】
安全基準は、野菜・肉等を洗って普通に調理(つまり煮沸)した後
のものです。つまり、表面の放射性物質が「普通の洗い方で、ある
程度、落ちた後」で食べた時のものです。
(注)安全基準を超えた野菜を、洗わず、多く、そのまま食べれば、
安全性は厳しくなります。
なお食品で畑内だけではなく、流通ルート(ロジスティクス)で
の、放射性物質での汚染も想定できます。
■6.ヨウ素剤とは何であり、どんな薬効か
この項は理解が容易です。放射線被曝にはヨウ素剤が有効とされて
います。しかしヨウ素剤の薬効は、以下で示すように限定的です。
【(1)注意】
なお、ヨウ素を含む昆布類(昆布、とろろ、わかめ)を沢山食べれ
ば効果があると言われます。調べてみましたが、医学的にはほとん
ど有効な意味がないとされています。
効果がゼロとは言えないが、仮に効果があっても、検出できないく
らいわずかで、大量に食べる意味はない。スーパーの棚から消えて
いますが、やめたほうがいい。当方、海草や昆布は好きですが味を
楽しむものと分かりました。
また、うがい薬に含まれるヨードは、飲めば、逆に危険です。これ
は即刻やめたほうがいいとも知りました。うがい薬のヨード以外の
ものの害が大きい。
【(2)大気中の放射性ヨウ素の量と、ヨウ素剤の効果】
大気中の、放射線の線量が100mSv/時(安全基準の上限)になると予
測されたときは、医師から「ヨウ素剤」が処方され、服用すること
と決められています。(注)線量がそれ以上なら、緊急処方です。
原発の現場対策員や消防隊は、100%飲んでいるはずです。
24時間前からあるいは同時に服用すれば、放射性ヨウ素の甲状腺
(首の部分ん)への沈着を、93%も抑えるといいます。
(補注)40才以上の人は、放射性ヨウ素を基準値以上に浴びても、
その原因よる、甲状腺がんの発生率が増えることがないので、服用
対象になりません。
妊婦は子宮内の胎児のために、40才以上でも服用します。
【(3)薬効】
ヨウ素剤は、放射性ヨウ素(131)にしか薬効はなく、甲状腺への
放射性ヨウ素の沈着だけを押さえます。甲状腺以外の臓器への防護
効果はないとされます。(日本医学放射線学会)
2時間後の服用では80%、8時間後で40%、24時間後では7%阻止の
効果に落ちます。
【(4)大気内放射性ヨウ素の量と被曝の関係】
大気中の放射性ヨウ素が4200ベクレル/1立方メートルになった中で、
呼吸への防護がなく24時間その大気を吸い続ければ、体内の放射性
ヨウ素の量が、100mSv(安全値の上限)に達するとされます。
一旦、安全基準の上限に達すれば、事故現場での次回作業への出動
はできず、安全な場所に避難するか、避難圏外の自宅に戻ります。
このため、今回のような、6機が対象の大規模な同時事故では、多
くの延べ人数が、対策作業には必要になります。
放射線の強い現場では5分や15分くらいで、走って交替せねばなら
ない。命をかけた現場は、凄まじい状況と拝察します。
建屋から数十メートル以上離れ、放水する消防より、原子炉がある
屋内で作業をする人が一層たまらない。下請けとされる大手会社の
技術者が多いでしょう。職の使命感(プロフェッショナル・オブリ
ッジ)から、これが行われています。(注)普段の作業では、建屋
内の現場は季節的な労働が多い。
■7.誤解を生む、あいまいな言い方
待避圏や、原発の現場にいないわれわれの安全は、気体性放射物質
の拡散と、食品と飲料です。
TVで言われることがある、「A食品や飲料水の放射線は、安全基準
(200Bq)以下の150Bq/1Kgである。1Kgという大量を1年間食べ続
けても、安全」という表現法。
この言い方が、適切かどうかという問題です。
人は食品・飲料を、普通は同時に多種、1日に3回とるので、「複合
的な作用」を考えねばならない。ただし、同じものを1Kgも、1回
の食事で飲食することは、(ほぼ水やビール以外は)ない。
(注)毎日、欠かさず多く摂る水の汚染は、この点で問題です。
単に食品・飲料のベクレルだけではなく、
・上記の気体性(体内での半減期が8~100日と短い)の放射物と、
・重金属性の放射性物質(体内半減期が数十年以上)も、考慮せね
ばならない。
・X線を使う医療検査も加わります。
放射性物質が何であるかの、詳細発表は、まだありません。
【(1)政府の、3月19日の表現】
「今回検出された放射性物質濃度の牛乳を、仮に日本人の平均摂取
量で、1年間摂取した放射線量は、CTスキャン1回分(6.9ミ
リ・シーベルト)程度である。ほうれん草も、年平均摂取量で1年
摂取して、CTスキャン1回分の5分の1(1.4ミリ・シーベル
ト)程度だ」というのが政府見解です。(NHKニュース:3月19日:
17:35)
わが国の、一般人での、複合&累積の放射線量の安全基準は、100
ミリシーベルト/年です。(注)普通の生活での大気被曝は、日本
では1ミリシーベルト(mSv)です。世界平均が2.4mSvです。
食品・飲料の1Kg当たり安全(「5-3」」では、放射ヨウ素で、甲状
腺(等価)線量50mSv/1年の、累積量以下が基準です。
▼(2)等価線量:この項は最難関
等価線量=吸収線量×放射線荷重係数です。
難しい概念ですが、その意味は、「吸収線量」は人体に与えられる
放射線の量(=エネルギー)に、「放射線加重係数」、つまり放射
線の種類の違いを考慮した加重値をかけたものです。
基準の、上記の食品での50mSv/1年は、「各種の食品と飲料からの
複合摂取を想定」した基準です。
50mSvは、意外に高い数値です。間違いを防ぐために、「5-3」の
原文を載せておきます。この文もわかりにくいでしょうが・・・
50mSv/年と記されています。
報道する記者やキャスターは、この文を読む義務があるでしょう。
【(1)放射性ヨウ素について】
<ICRP Publication 63((筆者注)国際基準) 等の国際的動向を
踏まえ、甲状腺(等価)線量50mSv/年を基礎として、飲料水、牛
乳・乳製品及び野菜類(根菜、芋類を除く)の、3つの食品カテゴ
リーについて指標を策定した。
なお、2つの食品カテゴリー以外の穀類、肉類等を除いたのは、放
射性ヨウ素は(体内の)半減期が(約8日)と短く、これらの食品
においては、食品中への蓄積や人体への移行の程度が小さいからで
ある。
3つの食品カテゴリーに関する摂取制限指標を算定するに当たって
は、まず、3つの食品カテゴリー以外の食品の摂取を考慮して、50
mSv/年の、2/3を基準とし、これを3つの食品カテゴリーに均等に
1/3ずつ割り当てた。
次に、わが国における食品の摂取量を考慮して、それぞれの甲状腺
(等価)線量に相当する、各食品カテゴリー毎の摂取制限指標(単
位摂取量当たりの放射能)を算出した。(P108):以上で引用終わ
り>
事故を起こしている福島原発から遠方の県(茨城県、栃木県、群馬
県)も、ほうれん草が出荷禁止になっていますから、多分、体内半
減期間の短い、気体性(ヨウ素、セシウム)でしょう(推測)。
ほうれん草(葉野菜に属する)が、
・放射線が弱く気体性の放射性物質(セシウム、ヨウ素の同位体)
が少ない地域で、
・安全基準の5倍から25倍とされた理由は、放射性物質の濃度が、
雨や雪で凝縮されたからです。
【(2)凝縮】
上空の雲は水蒸気(気体)です。これが冷えて集まり、気体から液
体・固体に収縮して、雨滴や雪になります。
これが、雨や土壌の水を吸う植物(または飲む動物)に入る。葉野
菜は、葉の表面積が広いため、粉塵状になった放射物質が、根菜類
より早くつきやすい。
ただし原発事故が新しいので、地中にしみこんだ累積の放射性物質
は、まだ少ないでしょう。
このため、同じ畑で、地中の根から水と養分を吸い上げる穀物
(米・小麦等)は、安全基準をクリアしています。(注)放射性物
質の拡散を防ぐよう、早く、原発事故が終息せねばならない。
◎以上に関しては、食品・飲料における放射線と放射物質量に関す
る、政府の発表を信頼していいでしょう。個々の食品の安全基準は、
人間の、複合的な摂取を考慮したものです。
【(3)誤った言い方】
ただし「この食品は安全基準の150Bq/1kg内に過ぎない。だから
1Kgを毎日食べても、安全だ。」とは言えません。
食品・飲料の安全基準は、「上記の5-3のように」日本人が、普通
の食事で普通の量(1kgよりはるかに少量)を1年間食べたという
前提だからです。(さっき、NHKに登場した学者は、1Kg食べ続け
ても安全と言っていました)
食品の放射物と、医学的な検査、個々人の被曝量、これから、また
は過去の内部被曝の放射性物質が累積し、複合作用を起こすからで
す。
今はまだ、原発事故の事態が収まっていない緊急時です。
放射性物質の量が、時間単位で変動しています。
◎政府による、地域別の放射性物質の、測定と発表を望みます。
「複合作用」には、個々人で(少しですが)注意が必要です。
個々人が動いた場所、居た場所、防護の状態でいろんなケースがあ
り、測定と計算が難しいからです。(注)放射性物質が少ない、退
避圏の外は、大丈夫でしょう。
◎結論としては、「(1)対象食品が少なく、20Km圏は、一般人は
立ち入りが禁止されているため、圏外は政府対策の範囲で安全であ
る。(2)今、基準値を超えた葉野菜と牛乳は、政府によって出荷
停止されているから、店舗には出ず、安全」と言えます。
以上が、食品スーパーやコンビニでは肝心なことになるでしょう。
今店舗に並んだ食品・飲料の普通の摂取では、原発の状態が悪化し
て、放射性物質の範囲が広がらない限り安全ということです。
なお避難圏(20km圏)の土壌で、通常より相当高い(1600倍の161
μSv/時:IAEA)放射線濃度が検出されてます。この土が、いろん
な農作物にどういう影響を及ぼすか、政府は調査中です。
飲料水についても、観測地点で安全基準(放射性ヨウ素で300Bq/
1Kg、放射性セシウムで200Bq/kg)を超えれば、発表があるはずで
す。
■8.飲料水、料理水の安全
先ほど、福島県の5市町村で水道水に、安全基準(100Bq/1Kg)を超
える放射性物質が検出されたとの発表がありました。(22日:午後
20:34:毎日新聞オンライン)
伊達市(120Bq/kg:21日)、郡山市(同150Bq:21日)、田村市
(同348Bq:17日、161Bq:19日)、南相馬市(同220Bq:21日)、
川俣町(同293Bq:18日、130ベクレル:21日)。
政府の、原子力災害現地対策本部が財団法人・日本分析センターな
どに調査を依頼したという。この値は、日々変わります。
半減期が8日の放射性ヨウ素ならまだいいのですが、放射性セシウ
ム137は半減期が30年と長い。これは累積するので危険です。海水
や、動植物でも同じです。
(注)海水を放水しているので、海洋汚染がありますが、これは短
い時間で拡散します。しかし、近くを泳いでいた魚の内臓には、食
べるプランクトンを通じてたまる。近々、魚の汚染状況も発表され
るでしょう。安全基準は、上記の表に書いています。
100Bq/1Kg未満という、水道水の安全基準を約3倍超えた調査地域
(田村市:川俣町)では、数日で累積して増えていることが、上記
から分かります。
近々、福島県は全域で水道水の安全基準を超え、他の県からタンク
で運ぶ必要が出るかも知れません。一日も早く原発事故が収束しな
いと、他のことでも、この水道水のようになってしまい、範囲が拡
大します。
■9.(参考)物理的半減期と体内半減期
さてやっと、本稿の最後です。
「物理的な半減期」と「体内での半減期」には、違いがあります。
人体は、異物を自然に排出するからです。(崎山比早子氏の資料よ
り転載)
(地面等での) (排出による)
物理的半減期 体内半減期
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヨウ素131 8日 7.5日
セシウム137 30.2年 109日
ストロンチウム90 28.9年 18年
プルトニウム239 2万4000年 一生
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)気体の放射性物質と重金属の放射性物質(微細粉末)は、呼
吸のとき、口・鼻を通じて体内に入ります。
(2)いろんな食品と飲料の放射性物質は、飲食で体内に入ります。
以上が組み合わさるのが「複合的な摂取」です。
複合作用が理由になって、食品と飲料への安全基準は、「第52回原
子力安全委員会資料第5-3号」が示すよう厳しい。
1Kgの意味を取り違えた、報道も多い。これは1Kg食べ続けてOKと
いうことではない。普通の食事での平均量です。
【後記・御礼・お知らせ】
「第52回原子力安全委員会資料第5-3号」は、読者の方からのメー
ルによって、知りました。多数の方からのメールと、ご意見ありが
とうございます。全員の方には、返事する当方の時間がないので、
返事を送っていない方には、本号をそれに当てます。
原子力に関することは、表現法が難しい。
数理的な可能性と確率だからです。
今、世界と日本の経済・金融が、激しく動いています。リビアでは
米軍の空爆がありました。次回以降、今後の見通しを含めて書きま
す。この2週間が、6ヶ月や1年を凝縮しています。
仮に近い知人に転送されるときは、以下のバックナンバーも参照し
てください。時間単位で、危機への態度は変わっています。
http://www.mag2.com/m/0000048497.html
http://archive.mag2.com/0000048497/index.html
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目の目処です。】
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と記述の際、より的確に書くための参考になります。
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