ビジネス知識源:ユーロ危機の終着点は、世界恐慌か?
Written by admin on 2011年11月24日 – 22:10
おはようございます。2か月ほどもご無沙汰していたことを、お詫 びします。月曜日に、新刊書の著者校正を終え、後は、12月初旬の 印刷を待つだけです。中味は、世界の金融・経済論です。90%は、 2011年8月に書いたものです。11月の校正で新しい数値と論理の修 整(アップデート)の必要を感じたのは、400ページで一箇所 (BISのデリバティブの数値)だけでした。 3ヶ月後の現実(特にユーロの国債リスク)は、3ヶ月前の予測通り に進んでいます。感情や期待(形容詞と副詞)をはさまず、論理と 数値で書いたためでしょうか。数値から導く論理だけが、当方の武 器です。 いろんなテーマについて、書いていると、以下のことに気がつきま す。 事実=測定された数値 論理=数値の組み合わせ=数学 期待=形容詞と副詞→人間が事実に対してもつ感情(=観念) 経済学は、科学と言うなら、数値と論理でなければならない。 多くの人が、「太陽や花は美しい」と感じる。美しいという形容詞 は人間の感情(または、人がいだく観念といってもおなじ)です。 人類史上最高の古典とするひとも多い『源氏物語』では「もの(= 事実)のあはれ」とこれを言った。紫式部が、人の世界の事実を見 て感じたことが、この「もののあはれ」でした。これが、情感であ り観念でしょう。 いつか、源氏物語の現代語訳を読まれることをおすすめします。人 間世界の、いろんなことがわかる。掛け値なしに、おもしろい。青 空文庫の、与謝野晶子訳で読めば、タダです。 ただし、横書きです。青空文庫は、読む人がすくない昭和初期まで の古典小説は、多くを、網羅しています。書棚のスペースがふえ、 財布がいたむことはない。50年たって著作権がきれたものを、ボラ ンティアで電子化しています。 http://www.aozora.gr.jp/ 縦書きフォントで、本のように読みやすくするには、わずかなライ センス料をはらって、確か数百円だった青空文庫ビュワー(数種あ ります)を使えばいい。 夏目漱石や森鴎外のほぼ全集(買えば数万円)を、当方は、これで 読んでいます。再読すると発見があります。インターネットが、今 後5年で、書籍、雑誌、広告を変えるでしょう。ウィキペディアの ようなものです。音楽のiPODのソフトに相当します。 http://www.point-at.co.jp/products/digishelf.html 小説というメディアは、文字で、ひとの観念(脳の中)、つまりイ マジネーションの世界を書くものです。映画や演劇は、それを俳優 に言わせ、映像に変える。歌もおなじです。観念と感情の世界を歌 う。ジャパン・ポップスもおなじです。詠嘆や悲哀の、感情の世界 です。 身(み)も蓋(ふた)もない事実の世界(天空のような物理の世 界)を、人間の観念が詠嘆、悲哀の感情で彩っているのです。 経済と金融は、事実である価格を、人の感情が「高い・安い」と感 じて、売買が発生します。 PIIGS国債を安いと思うひとが買い(金利を下げ)、高いと思う別の ひとが売って金利を上げます。高いと思って売られる金額と、安い と思い買う金額が一致した点が、今日の価格(=金利)です。 なぜ、PIIGS債を、高いと思って売るのか? アイルランド、ギリ シア、ポルトガル、スペイン、イタリアが、今後、経常収支を黒字 にし(これが原資、これ以外にない)、対外債務を返済しながら、 7%~10%への金利上昇で年々増える利払いができるとは、とても 思えないからです。なお、本稿は、有料版と共通です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <565号:ユーロ危機の、終着点は世界恐慌か(2)> 2011年11月24日号 【目次】 1.政府財政の破産から、通貨暴落とインフレまで(仮想風景) 2.増え続けるデリバティブとその巨大損失 3.BISの、最新のデリバティブ統計から読み取れること 4.BISのデリバティブ統計から推察できるのが、金融機関の、デデ リバティブの保有での巨大含み損 5.EU当局(政府)の、(金融面では)愚かな対策の三連発 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.政府財政の破産から、通貨暴落とインフレまで(仮想風景) 経営改善が予測できない企業へは、貸付金の金利が7%や10%に上 がり、過去の社債(あるいは貸付金)の価値が、30%や50%下がる のと、全くおなじです。これを、不良債券化という。 総額で約300兆円のPIIGS債が、これです。すでに、ほぼ150兆円の 損が生じています。この損は、持ち手である欧州の主要90行の自己 資本(100兆円)を消し、債務超過にして、破産させる金額です。 PIIGS債の価格下落(=金利の高騰)だけでも、すでにこうなって います。 (注)ハンガリーの金利高騰と国債・株の暴落に見られるような、 東欧の債務危機も同時です。フランス・ドイツ・英国の銀行がもつ 東欧債の不良債権も100兆円はあるでしょう。 不良債券が生じると、その債券を持ち、貸し付けをしている金融機 関の損になります。つまり、欧州(特にドイツとフランス)の銀行 危機です。銀行の危機が起こると預金者が預金を、ファンドの危機 が起こると投資家が預け金を、引き揚げにかかります。 銀行やファンドの資金が引きあげられると、銀行とファンドはそれ が払えず、破産します。銀行には、預金額に見合う現金はないから です。 現金は金利がゼロなので、銀行もファンドも、金利がつく債券・証 券の購入または貸し付金として運用しているからです。銀行とファ ンドは、負債を運用する機関です。 日本の銀行は、土地を担保にとり、企業と世帯に貸し付けていまし た。1992年以降、地価は1000兆円以上下がっています。このため、 銀行には200兆円規模の不良債権(回収できない貸付金:公称は100 兆円でした)が生じました。 政府・日銀は、金利をゼロに誘導し、緊急資金も貸し付けて、銀 行・金融機関の不良債権での損を埋めたのです。日本の世帯の金融 資産は1500兆円(預金が800兆円)くらいです。定期預金の金利が 普通のときの3%なら、1年の金利は、800×3%=24兆円です。銀行 は、これを払えなくなった。このための金利ゼロ政策です。 銀行には、普通の金利3%との差額、24兆円の超過利潤が生じます。 10年間で240兆円です。ゼロ金利にされた2000年代の世帯・企業か ら移転した超過利潤で、日本の銀行は、公表のバランスシート(時 価会計では嘘が多い)では、自己資本を回復したのです。 (注)株価の下落と、20%以上ドル安で、今日本も、1997年のよう な、ふたたびの、銀行危機です。銀行全体でドルとユーロ債券を 200兆円持っているとすれば、200兆円×20%=40兆円が、含み損に なります。 2012年3月には、この含み損を計上せざるを得ないでしょう。ある いは政府が、特別に「ドル債の時価計上の停止」を発動します。計 上しなくても、オリンバスの1300億円の証券での飛ばし損失のよう に、実体は、おなじです。 銀行からは預金が、ファンドからは投資預け金が、とりつけになる と、大変です。もともと、預金に見合う現金は、貸付金、国債、株 の購入として運用し、当座の支払い用の、小口現金(総預金の5% くらい)しかないのが銀行ですから、即日に、窓口を閉鎖せねばな らない。 全国の銀行には、行列ができ(暴動も起こって)、インターネット でも預金が引き出されます。これが、金融崩壊です。 金融崩壊が起こると、銀行から、商取引に必要なお金が消えます。 このため、売買の経済取引が激減する。これが恐慌です。生産と販 売ができなくなります。生産力はあっても生産ができず、経済は突 然死します。 こうなると皆が困る。このため、政府・中央銀行は、なりふりを構 わず、取り付けに見合う現金紙幣を印刷し、トラックで皆に見える ように運んで「政府・中央銀行には現金がある」と見せます。 人々が中央銀行、つまり通貨を信用し、取り付けがおさまればいい のですが、信用しないと、取り付けは続きます。預金封鎖も想定で きますが、それは取り付けからの暴動に火をつけるので、ないでし ょう。 ただし、知っておかねばならないのは、定期預金は、法的には、満 期日までは、銀行は支払いを拒絶できることです。定期預金の取り 崩しに応じているのは、銀行が預金取り付けを恐れているからです。 日本を例に言えば、預金は、ゆうちょの約174兆円(11.9.31: 171兆円を国債で運用)を含んで、800兆円です。(ゆうちょはの資 産と負債は↓) http://www.jp-bank.japanpost.jp/aboutus/financial/pdf/zim2012q2_gaikyo.pdf 世帯には、引き出した現金が溢れます。預金1000万円の世帯なら、 全額を引き出せば、1000万円がタンス預金になる。171兆円の国債 が資産のゆうちょを見ればわかるように、金融危機(1997年以後) の日本の銀行は、企業への融資を減らし、もっぱら国債を買って運 用しています。銀行は、この国債を現金化するため売らねばならな い。 世界もおなじです。不動産担保をとった貸し付けより、証券の運用 が銀行業務になったのです。その証券も、中味はデリバティブ(金 融派生商品)が50%以上でしょう。2000年代の世界の銀行は、2. で示すデリバティブの売買を主業務とするように変わっています。 そうなると、今度は、日本国債が、ギリシア債(2年債で70の金 利)のように高騰します。 国債を含む債券は、売り手が増えて、買い手がないと、ほぼ100日 (3ヶ月)でギリシア債のように売買市場が消えて、金利が暴騰し ます。 これが、国家の財政破産です。国家の破産は、数年かかるのではな く、PIIGSの事例に見るように、債券市場で国債が売られ始めると、 ほぼ3ヶ月です。 (注)ギリシア政府には、国債の満期償還のお金がなく、事実上で は、1年半前の2010年5月からデフォルトしています。この1年半、 ギリア国債の買い手がなく、毎月の償還に必要な金額を、ECBが買 って、ユーロを与えているだけです。このため、デフォルトでない とEUは言っていますが、金融機関やファンドで、毎日ディーリング をしている債券投資のトレーダー(ファンド・マネジャー)なら、 誰も、そうは思っていません。 タンス預金が巨大化すると、どうなるか? 国債価格が暴落し、国 債金利が仮に20%になると、どうなるか? 1000万円の現金の価値 は、金利で割り引きます。 1年後の1000万円の価値は、1000万円÷(1+20%)=1000÷1.2= 833万円になって、現金のままもつと177万円も損をします。今の中 国のように、預金(金利3%)も、タンス預金も損だとなる。そう なると、モノの購買に向かうでしょう。その結果として起こるのが、 中国のような「インフレ(中国は6%)」です。 物価が10倍、100倍になるハイパーインフレは起こらないと思いま す。多分、20%くらい物価が上がるインフレになる。 戦争後にハイパーインフレが起こるのは、戦時国債の償還のための マネーの印刷に加えて、生産力と流通が戦乱で破壊され、1973年の トイレット・ペーパーのように商品不足が起こるからです。 2000年代の世界は、1990年代からの新興国の工業化で、世界に、 20%くらいの過剰生産力(物価を下げる圧力)がありますから、モ ノ不足にはならない。そのため、ハイパーは起こらない。 以上が予想できるのは、「国債の均衡金利(仮に20%)≒物価上昇 率+実質経済成長率+政府財政の信用リスク率」だからです。 先進国の実質経済成長をゼロとすれば、物価の上昇は20%です。物 価の上昇は、通貨の下落(輸入物価の上昇)で起こります。 ただし、政府財政が、ギリシアのように破産し、政府が予算支出が できないとなると、以下のようになるでしょう。 国債の均衡金利(50%)≒物価上昇率(20%)+実質経済成長率 (マイナス10%)+政府財政の信用リスク率(40%):数学の方程 式のように厳密ではなく、概算です。 この時、暴落した債券や資産の買いで、巨大利益のチャンスが生ま れます。 ■2.増え続けるデリバティブとその巨大損失 原資産(証券)から派生したデリバティブが、 ・確率論を元にした再証券化(Securitization)という技法を含ん で1970~80年代に開発され、 ・2000年代の金融機関の間では、新たなマネーとしての売買が、激 増しています。 1998年6月には、世界で$72兆($1を80円とした邦価換算で5760兆 円)に過ぎませんでした。 2011年の6月には、10倍の$705兆(5京6400兆円:世界のGDP 5000兆 円の11年分)という、誰にとっても、全体像を描くイマジネーショ ンを超える金額です(国際決済銀行であるBISの最新統計)。 http://www.bis.org/statistics/derstats.htm ▼BISについての「事実」 BISと言っても、普通は、なじみがないでしょう。世界の銀行の、 必要な自己資本比率(欧州を手始めに、世界で11%に上げる予定を 発表)を決める金融機関であり、世界の中央銀行間の為替決済(ド ル、ユーロ、円等の交換)をしている特殊な私的資本の銀行で、ス イスのバーゼルにあります。 世界の中央銀行の上に立つ「中央銀行の中央銀行」とされます。日 銀、FRB(米連邦準備銀行)、ECB(欧州中央銀行)に、情報権力で 命令し、金融機関の自己資本比率を決めて、金融政策を示唆してい る親玉と言えばわかるでしょうか。 銀行、金融機関の「自己資本比率」こそが、金融政策になるからで す。金融政策は、マネー量(マネー・サプライ、またはマネー・ス トックと言う)の調節です。マネー・ストックは、世帯と企業が金 融機関に預けた金融資産と考えればいいものです。 自己資本比率=中核的自己資本÷リスク資産=8%とすれば、銀行 と金融機関で作る銀行システムは、自己資本の12.5倍(=1÷8 %)の総信用創造、言い換えれば、リスク資産の保有ができます。 これが、マネー・ストックになります。 金融機関に必要な自己資本をBISが示しているように、リスク資産 の11%に上げると、世界のマネー(=マネーサプライの総金額)は、 8%÷11%=73%、つまり27%も縮小に向かうことを迫られます。 総預金と銀行の運用可能額が27%減るという意味です。これは、 (1)銀行からの貸付金の回収、 (2)証券の売却、 (3)PIIGS債のようにリスク資産になった国債の、売却です。 BISの11%政策を、本当に世界で実行すれば、強烈なデフレ型の恐 慌を生みます。このため、本当には実行できない。銀行は大丈夫で すよという見せかけです。バランスシートからはオフ・バランス (負債や資産の切り離し)もできるデリバティブ化した金融では、 損失飛ばしを含むごまかしが、堂々と通用します。 BISの資本は、一般には知られていないデル・バンコ(ベネチア、 スイス、ロンドンのシティ)が多く、その資本をたどると、ロスチ ャイルドの一族です。その資本の元は、ゴールドです。 世界の通貨信用は、政府財政の健全性がその信用の元です。しかし デル・バンコは、信用の元を金としています。2000年代に、工業化 から変わって、激しく金融化(ファンド化といっても同じ)した資 本主義の根底は、今も、この金です。 (注)世界の国債や、政府への貸し付けをしているロスチャイルド 家のことを書くと、学会では「陰謀論」とされ、世間に軽蔑される 風潮を、ロスチャイルド家が作っています。 正統派とされる金融・経済学者には、世界とわが国の「原子力ム ラ」の御用学者で見えたように、政府と電力会社がお金を出し(研 究費・基金・研究所)、立場を与えています。ノーベル経済学賞も、 です。 本当は、ロスチャイルド家の資産、負債、資本、目的、金融支配の 方法を論じないと金融論にはならないのですが、避けます。 中国人であり、確か、米国のファニーメイ(住宅証券を保証して売 る政府系住宅金融会社)に勤めていた宋鴻兵の、『ロスチャイルド 家:通貨強奪の歴史とそのシナリオ(2007年)』を挙げておきます。 詳細に読んだ当方は、内容は信頼できると判断しています。売る住 宅証券の保証から米国FRBに至り、そのFRBの元は何かをたどる習慣 があったのでしょう。 世界政府はないのですが、金融では、BISが世界政府に相当します。 世界の通貨および金融(ファイナンス)の奥の院、または金融マフ ィアとも言われる。日本の財務省、日銀、金融機関は、スイスの BIS本部に行くと、ここが世界の通貨とファイナンスの総元締めだ と感動するようです。・・・当然でしょうね。 明治以降の日本は、何事につけても、本家は米国、あるいは欧州 (英国)と考えます。天皇家は、英国スタイルを踏襲しています。 江戸時代までは、日本の大元は中国でした。漢文すら使った。今は 英語です。通貨の大元が本家です。国際決済銀行の意味は、「両替 商」です。 http://www.bis.org/about/index.htm <世界で唯一のBISは、世界の中央銀行、国際金融、監督団体(= 政府)の間で、議論し、金融を分析し、金融政策を決めて、情報共 有する会議体である。> <原文:The BIS is a forum for discussion, policy analysis and information-sharing among central banks and within the international financial and supervisory community.> BISのどんな権限(権力)が、皆に認められ、世界の中央銀行と銀 行の監督ができるのか? デル・バンコが、1990年代から、FRBや英 国中央銀行、そしてスイスの中央銀行から買い占めてきた現物ゴー ルド(数万トンだが実際は不明)でしょう。 原油の高騰で必ず増えてきた中東の王家の金も、現物はスイスの、 どこかの金庫に集まっています。1971年の原油は、1バーレル1ドル (360円)でした。2011年11月は$100付近(7500円)です。 米ドルは、原油に対し、40年で100分の1に減価しています。100分 の1に下がり、1年で10%も価値を減らし続けた米ドルを、原油を売 るアラブの王家(国有石油会社)が信用すると思えますか? ドル を信用したのは、日本政府と日本人だけかも知れません。 50%が海外売上のパナソニック(上場企業の代表)も、赤字通貨の ドルを信用し続け、結局は、国内のテレビ生産事業をやめます。い ずれ、トヨタも国内生産はできなくなるでしょう。 本来は、円高を呪詛し怨み続けるだけではなく、米国のIT株バブル 崩壊した2000年以降は、ドル以外で売る経営転換をせねばならなか った。長期のドル安は、米国の赤字が累増しているため、容易に予 測できたからです。この点で、経営に無策があったのです。 わが国は、下請けの部品代を下げて、国ぐるみで一生懸命に品質の いい製品を作って輸出を増やせば増やすほど下がる「ドルの罠」に かかっていました。ドル幻想と言ってもいい。 1年では11%のドル・インフレ(ドルの下落)です。円では21倍で す。円の価値下落は、ドルの1/5です。1年に3%程度の減価です。 金に対してもほぼおなじです。 通貨の価値は、ロスチャイルド家のように、40年、100年の長期で 見なければならない。金も下落したとき(1990年代の10年間)が大 きな買いどきで、デル・バンコは、それを実行したのです。赤字通 貨の米ドルの崩落は、分かっていたからです。 彼らは、10年以上、30年くらいの長期で考えます。ファンドは3ヶ 月しか考えない。日本政府は、ドルのことしか考えない。円高にな るとすぐドル買い介入を行うのが、証拠です。 FRBのゴールド(公称8000トン:保管場所は、核兵器で守られている というフォート・ノックス)が、売りで枯渇したのが2000年とされ ています。その金の現物は・・・。麻薬の売買や貿易のように、不 明です。 (注1)日銀は、バランスシートの金額では4125億円(11年11月)、 重さで765トンの金をもつと公表されています。ほとんどは、FRBに 預託され、日本にはありません。 日銀と財務省は、ドルを買う、FRBの子会社でもあって、金を増加 買いすることを、米政府から許されていません。当方、日本の国益 (高齢化費用の捻出)のため、財務省が外貨準備で、金を買うこと を提案したのですが、それは「行えない」ということでした。 (注2)米国FRBの公表B/S(バランスシート)では、金保有高は$ 110億(8800億円)です。1トンで平均1億円(1グラムで1000円)の 時、買ったこと、あるいは評価替えしたことになります。預託預か りの記述はありません。 FRBがフォート・ノックスにもつのは、金メッキした偽物(なまり 等)で、ホンモノは別のところ(スイス)にあるという説もありま す。1990年代は、金価格を下げるため、金融機関と金鉱山への金 リースと言う方法を含んで、売ってきたからです。 http://www.federalreserve.gov/releases/h41/current/ 2000年代に、金ETF(金証券)が作られ、上場されたのは(日本では 2007年から)、現物金への需要が増えて足りなくなって、米ドルの 通貨信用の下落のため、金価格が、新興国とアラブの買いで、更に 高騰する恐れがあったからです。 金証券は、取引所での金の流通在庫を、その発行額の分、増やすこ とができる機能をもっています。金証券=金と見なされるからです。 日本では3000円から買うことができます。金ETFに対応すべき現物 の金は、発行元が預かって保管することになっています。 ■3.BISの、最新のデリバティブ統計から読み取れること BISは、2011年11月に、デリバティブの統計数値を更新し、最新 データを、11年6月としています。 8月にこのBIS統計を読んで、その解釈から、$14.2兆(1136兆 円)の損失が、10年12月時点で生じ、それが現在、主に米欧の金融 機関とファンドの含み損になっていると示しました。 この損の1136兆円余の損が、何らかの形で、300兆円くらいに薄め られないと(それでも大きいのですが)、世界の金融機関とファン ドの損から、 ・世界の金融の大収縮(デ・レバレッジ=マネー・ストックの急減 少)に向かい、 ・流通できるお金がなくなると、 ・商品と不動産の商取引が減って、実体経済の恐慌と政府財政の破 産になります。 ▼デリバティブの「元本」総額:BIS ↓更新 08年12月 09年12月 10年12月 11年6月 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 総額 $598兆 $603兆 $601兆 $707兆 ・外為関連 $ 50兆 $ 49兆 $ 58兆 $ 65兆 ・金利関連 $433兆 $450兆 $465兆 $553兆 ・株式関連 $ 6兆 $ 6兆 $ 6兆 $ 7兆 ・商品関連 $ 4兆 $ 3兆 $ 3兆 $ 3兆 ・CDS $ 42兆 $ 33兆 $ 30兆 $ 32兆 ・その他複合$ 63兆 $ 63兆 $ 40兆 $ 46兆 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ http://www.bis.org/statistics/otcder/dt1920a.pdf (注1)外為関連は、通貨先物や外貨交換、および通貨オプション 金利関連も、金利先物、金利交換、および金利のオプション。株も 同様、資源(上記の商品)も同様。CDSはシングルネーム(保証債 券が1種類)と複合CDS。その他は、CDO(債務担保証券)等。 (注2)上記は、デリバティブがかかった元本資産の世界合計(アン ケート調査)です。11年6月の、デリバティブがかかった対象金融 資産の$707兆は、邦貨で5京6560兆円に相当します。これは、世界 の金融資産(1京5000兆円)の3.7倍です。 世界の金融資産には、ほぼ4重に、あるいはほぼ4層に、デリバティ ブという毛布がかかっています。このデリバティブは、2000年代の 10年で10倍に増えています。金融機関はデリバティブの機関になっ たのです。 2010年12月でのデリバティブがかった原資産は、$601兆(4京 8080兆円)であり、世界の金融資産(マネーストック)の約3倍で した。これ預金や証券の現物に、3重にデリバティブがかかってい ることを示します。 10~100倍のレバレッジがかかるため、現物取引よりはるかに多い 先物取引(対象は通貨先物、金利先物、株価先物、商品先物、CDS 等)も、デリバティブです。 これが、2011年6月には$707兆(5京6560兆円)と、$106兆 (8480兆円)も増えています。保有する金融商品(通貨、証券、 株)に、下落リスクを感じ、ヘッジをした人が半年で8480兆円分、 増えたことを示します。 デリバティブは、保険のような使い方ができます。 ▼証券価格の保険としてのCDS イタリアの10年物国債を、1兆円もっている銀行があるとします。 7%に金利が上がれば、国債の価格下落で大きな損をする。このた め3%の金利のうちに、2%の保険料(プレミアム:200億円)を払 って、CDSをかける。 懸念通り、イタリア国債の金利が7%に上がった(2011年11月)。 CDSをかけていないと、7%の金利になると以下のような損をします。 利回り3%のイタリア国債1兆円=1兆円×(1+表面金利3%×残存期 間10年)÷(1+期待金利7%×10年)=1.3÷1.7=7600億 円・・・2400億円の含み損 CDSの保険料が2%のとき、1兆円×2%=200億円の保険料を、たと えばゴールドマン・サックス等に払ってCDS(保証期間1年)をかけ ていたらどうなるか。 イタリア国債の期待金利が7%に上がると(現在が7%)、2%だった CDSの保険料も5%には上がります。CDSの保険料が5%に上がると、 200億円で買っておいたCDS証券の市場価値(CDSは株のように売買 ができます)は、500億(額面の5%)に上がって、300億円のリスク ヘッジができます。 毎年、保険料が上がる前に、CDSをかけておけば、手持証券のリス クヘッジができます。 10年後にはイタリア政府は、額面の1兆円を償還するでしょう。途 中で償還できないとき(つまり、満期前のデフォルトのとき)は、 1兆円が保険金として、ゴールドマン・サックスから支払われます。 以上のようなヘッジ機能をCDSはもっています。このために、CDSを 買う。 世界の金融機関とファンドは、$46兆(3680兆円:日本の国債残の 4倍の金額)の、国債を含む証券に対し、CDSをかけているというこ とを示すのが、上記のBIS統計です。CDSをかけるとリスク資産が安 全資産になると「されています」。貸借対照表から切り離すオフ・ バランスもできる。 低い金利のときCDSを買っていおいた人は、国債を含む証券の下落 (金利の高騰)があると、巨大利益を得ます。 CDSは、上記の事例のようにイタリア国債をもっていなくても、日 本からも、いくらでも、かけることができます。買ったCDSは、独 立した金融商品として、金融機関の間(OTC市場という)で売買が できます。 (注:参加は・・・)CDSの売買に参加できるのは信用ある大手金融 機関やファンドです。普通の人は参加できませんが、イタリア国債 の、CDSではない先物やオプション取引はできます。 売りのオプション取引(プット)もCDSと同じ効果です。限月内にイ タリア国債が下がったとき、つまり期待金利が上がったとき、利益 が出ます。 CDS証券をたとえれば、「誰に対してもかけることができ、市場で 売買もできる生命保険証書」です。がん等になると、それ以前にか けておいた生命保険証書の価値は上がるでしょう。払う累積保険料 が少なくて保険金が受け取れます。 ・ギリシア国債にCDS(生命保険)を大量にかけておき、 ・他方では、自分の傘下のファンドにお金を貸して空売り、国債の 先物売り、プット・オプションを行わせ(毒薬投与で寿命を短くし て)、2010年のギリシア国債の暴落に加担して、 金融の倫理にもとる利益を得たのは、ゴールドマン・サックスです。 インサイダー疑惑で裁判になり、数百億円の和解金が支払われまし た。 逆に、普通なら命にかかわる病が奇跡的に完治し、リスク率が下が ると生命保険の価値も下がるため、大病のときに高い保険金を払っ て保険をかけた人は、払った保険料を損します。 (注)普通、大病のときは、死を前にして命の値段とリスクを計算 する倫理的な問題があるため、生命保険を引きうける保険会社はあ りません。ここは「たとえ」です。 ■4.BISのデリバティブ統計から推察できるのが、金融機関の、デ デリバティブの保有での巨大含み損 上表のデリバティブの市場価値、言い換えれば価格は、 ・08年12月が$35.3兆(2824兆円)でした。 ・09年12月が$21.5兆(1720兆円) ・10年12月が$21.2兆(1736兆円) ・11年 6月が$19.5兆(1560兆円)に減っています(BIS)。 ●(重要)リーマン・ショック直後の08年12月には、$35.3兆 (2824兆円)の価値(=市場価格)があったデリバティブは、11年 6月で$19.5兆(1560兆円)に減り、$15.8兆(1264兆円)も小 さくなっています。 デリバティブがかかった、対象の金融資産が減ったのかというと逆 で、$598兆(08年12月:4京7840兆円)から、$707兆(11年6月: 5京6560兆円)と増えています。 とりわけ、2011年の1月から6月の(金融危機の)半年では、$106兆 (8480兆円)も増えています。 以上が意味するのは、世界の金融機関の、デリバティブ保有による 含み損の、増加です。CDSで考えると、これが分かります。 CDSの価値(市場価格)は、対象とした金融資産の価値がイタリア 国債のように下がると、損を保証する保険ですから、逆に上がりま す。CDSの価格が上がって、かけていたファンドや銀行が利益を得 ます。 しかしBIS統計では、デリバティブの対象資産は増えたのに、逆に、 かかったデリバティブの価値(市場価格)は、08年12月比で、$ 15.8兆(1264兆円)のマイナスです。これが、多くの金融機関と ファンドの、公表されるバランスシートには出ない含み損でしょう。 ここ二年半の、この損は金額が大きすぎ、決済できないのでロール オーバーされ、オリンパスの1300億円のように、どこかとどこかの 間で、限月が来ても決済されず飛ばされているはずです。 損の金額が、$15.8兆(1264兆円)と大きすぎます。世界の政 府・中央銀行では、救済資金を出すにも、出せない金額です。欧州 で600兆円、米国で600兆円は隠れているはずです。 米欧の主要な金融機関の、合計の自己資本は200兆円くらいです。 その6倍の含み損がある。この1264兆円の損は、時間がいつまで経 っても、とても決済ができない金額なので、デリバティブで利益が 出ている金融機関も、その利益が受け取れずにつぶれます。 ●(重要)デリバティブで利益を出したA銀行と、損をしたB銀行の 損害は、等価です。全体はゼロサムです。しかし、どの金融機関や ファンドも、利益分は待ちかねたように計上します。米欧の金融機 関の利益が、公表され財務諸表では、わずか半年で回復したように 見えるのは、デリバティブの利益だけを計上し、利益に見合うはず の損は飛ばすからです。 このため、デリバティブでは、レバレンジがかかった巨大損を生む 株価や国債の大きな下落期に、含み損だけが残ります。この金額が、 誰も言わない$15.8兆(1264兆円)と推計できるのです。 ●デリバティブで上がった売買利益は、銀行やファンドの利益とし て3ヶ月毎に公表され、その利益に対応する損が、飛ばされている のです。 損失は、調査のおよばない租税回避地の子会社やファンドに、本体 が損失を出さないように簿価で売ったようにして飛ばされています。 投資子会社との連結決算と、保有資産の時価評価は、08年9月以降、 米欧の当局が「しなくてもいい」としているからです。 理由は、損を公表すれば、封鎖を恐れる預金者からのとりつけにあ って、銀行がつぶれるからです。ファンドも、投資金の引きあげが 起こります。 同時に、経営者責任が追及され、損をした株主から代表訴訟も起こ って、トップ陣の個人資産が召し上げられ、政府資金(出資)を入 れるときは、株価もゼロになります。 損は損であり、どこに飛ばしても、消えることはない。利益でしか 消せないのが損です。 いずれ、決済を迫られます。そのときが、恐慌に至る可能性が高い、 世界金融の危機です。唯一、これを避ける方法は、飛ばされた損に なっている株価、住宅証券の価格、国債価格が同時に上がることで すが、それが期待できない。 以上が、世界の金融の総元締めであるBISの、デリバティブ統計か ら読み取れることです。BISは、主は米欧の金融機関とファンドの、 飛ばされたままの1264兆円の損を知っているはずです。 ■5.EU当局(政府)の、金融面では愚かな対策の三連発 ▼(1)空売りを禁止する愚かさ:先物売りとプット・オプションに 利益の機会を与えるだけのことになる。 EUは、ユーロ建て国債の、空売りを禁止しています。空売りで更に PIIGS債とフランス債が下がると見ているからです。 (注)空売りは、証券会社や親銀行から、ファンド等が国債、株、 証券を借りて売り(たとえば1億円で売る)、期限には市場価格で買 い戻して(下がった8000万円等で買って)返済することです。国債 相場が下がるとき、空売りの利益が出ます。株、社債、金証券でも おなじです。上がったときは損が出ます。 【先物売り】 空売りを禁止しても、空売りと同じ効果をもつ「国債先物の売り」 ができます。先物の売りは、たとえば3ヶ月先の先物価格(1億円と します)で、売りをかけることです。 3ヶ月後の限月日までのいつの日か、9000万円に下がれば、1億円で 売っておいた先物を9000万円で買い戻す。差し引きで、売った1億 円─買った9000万円=1000万円。1000万円の利益が出ます。相場が 上がれば損をするのは、空売りとおなじです。 【オプションのプット】 先物売りをしなくても、オプションの売り(プット)もあります。 ブラック・ショールズ方程式で計算されたオプション料を、たとえ ば500万円払って、1億円の権利行使価格で売る権利を売る。限月 (げんげつ)までの間に、9000万円の価格で下がれば、それを1億 円で売ることができます。 利益は1000万円─払ったオプション料500万円=500万円です。 9000万に下がった国債を、1億円で買う義務をもつのは、その500万 円のオプション料を受け取って、1億円で買う義務の行使価格を引 きうけた人です。 ●当局が「空売りを禁止する」理由は、市場に、相場が下がるとい う見込みがあるからです。 空売りが禁止されたら、即刻、上記の、 (1)国債の先物売り、 (2)または、オプションの売り、をしかければいい。ほぼ確実な利 益が上がります。 別の方法で、イタリア国債のCDSを、プレミアム(保険料)を払っ て買ってもいい。イタリア国債が下がれば、そのCDS証券の価格が 上がって利益が出るからです。 以上のように、当局の空売り禁止策は、市場に対し、無効です。 むしろ、安値を予想した「売り」に、利益の機会を与えてしまいま す。 2011年10月と11月に、日本政府が、二度のドル買い介入(ドル買 い・円売り)を、10兆円(貴重な日本のマネー)を使って行ってい ます。 これも市場の餌です。1日の外為取引は、500兆円もあります。バケ ツの一滴にしかならない。1週間くらいは、ドルの追随買いが起こ って、円安・ドル高に振れるでしょう。その後、また元に戻ります。 事実、そうなっています。「断固たる措置」としか答えない、現代 金融と経済の知識がない安住財務大臣をもったことを哀しみます。 安住財務大臣は、国会質問で「CDSとは何か」と、予定にないこと を聞かれ、「えー、あー、うー」と意味不明の答弁をしたことが記 録に残っています。日銀の上にも立つ財務大臣に基本の知識が、欠 けています。結果は、国益(国民益)の損です。選挙の方法だけを 学んできただけだからです。これ以上は、言いますまい。 一般に言って、わが国では、金融・経済の中等教育が欠けています。 ▼(2)CDSの発動を禁止した愚かさ:国債売りに拍車をかける ギリシア債にかかったCDSは、ギリシア政府が払えず、デフォルト したときに降りる保険金です。EU当局は、このCDSの適用をしない としています。 ギリシア国債は、50%カットされました(2011年10月)。額面1億円 の国債が、全部、5000万円の償還金へと減額になったということで す。こうしたことこそを「デフォルト」と言い、CDSが、減額され た5000万円を保証します。 ●ところが、EU当局は、「ギリシア国債の償還金の50%gへの減額 は、その国債をもつ金融機関とファンドが、自主的に、申し入れた ものである。従って、CDSの適用には当たらない」としています (2011年11月)。 ●これは、「とんでもないこと」です。金融市場では、どういった 動きになるか? CDSをかけておいても保証がない。危険だから、手 持ちのPIIGS債、特に、巨額のイタリア債(総額200兆円)を、減額 されないうちに売っておこうとなります。誰でもこれを行うでしょ う。 CDSの発動禁止が、イタリア債の金利が7%に上がって、10年ものの 長期国債の価格が下がった理由です。残存期間8年の国債は、金利 が3%から8%煮上がると以下のように下がります。 1兆円のイタリア国債=1兆円×(1+3%×残存期間8年)÷(1+期待 金利7%×残存期間8年)=1.24÷1.56=7948万円・・・21%の市 場価値(時価)の下落(注)本来は複利計算です。ここでは、便宜 上単利で計算しています。 これがイタリア国債を200兆円もつ、フランス、ドイツ、英国の金 融機関とファンド、および個人投資家の、200兆円×21%=42兆円 の新たな損になっているはずです。短期債が30%くらいはあるでし ょうから、35兆円くらいの損でしょうか。 イタリアの金利が7%に上がって、フランスの国債の金利も上がっ た(フランス債が売られて下がった)のは、これが理由です。フラ ンスの銀行が、もっとも多く、イタリア国債を買っているからです。 以上のように、国債市場では、市場が政府財政の破産を決めます。 政府があれやこれや対策を打っても、市場に見透かされるのです。 ▼(3)欧州金融安定基金1兆ユーロ(105兆円)を、新興国からの資 金拠出に頼った愚かさ:ユーロ売りに拍車をかける EU当局は、当面(たぶん機関は3ヶ月)の金融対策費として必要と 計算した1兆ユーロを、新しく作った同基金が、3%の金利の特別債 を発行して、中国を筆頭にした新興国(BRICs)に売るとしていま す。 BRICsからは、欧州の銀行が資金を引きあげつつあります。その上 に、 金融安定基金債を買えと言う。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、 中国)が、今後の、一層のユーロ安で、買えば損をすることが想定 される、ユーロ建ての金融安定基金債(長期債)を買うはずもない でしょう。 このため、欧州には、金融安定化のための基金がないと見なされる ようになったのです。三重に愚策を重ねる統一政府に呆(あき)れ ます。 EUがこうした「相場を一層下げる3つの愚策」をとる理由は、本当 は、裏でユーロを崩壊させ、通貨と国債の崩壊後に安価に買い占め て、その後の金融を支配することをねらう金融勢力があるのではな いか、とも感じるくらいです。相場は、「羊は太らせて、売って価 格を崩壊させ、その後に食え」です。 ●結論を言えば、PIIGS債の満期償還が増える2012年1月が、まず、 ひどく危ない。これを乗り切っても、次は2012年3月、6月が危機で す。ユーロは、1月危機になると見ています。 ユーロ危機は、つぎに・・・米国債の危機、米国債の後は、日本国 債の危機の順に連動するでしょう。 2012年は、年初から、危ない。8000本のファンドと金融機関の決算 期である12月にくるかも知れません。いや、すでにこの11月が危機 か。 世界の8000本のヘッジ・ファンドは、2011年は、平均で運用総額の 10%の損としています。運用総額は、30倍近いレバレッジ(デリバ ティブの機能)で4800兆円にはなっているでしょう。480兆円×10 %=480兆円です(2011年10月:英エコノミスト誌)。 30%の損のグループ(2400本)、10%の損(2400本)、損益なし (2400本)に分布するでしょう。(標準偏差) 30%の損をしたヘッジ・ファンドへの投資家は、その預託資金(元 本)を、ヘッジ・ファンドから引きあげます。 ファンドへの投資資金の引き揚げには、普通、45日前の通告が必要 です。2011年10月15日には、8月、9月の暴落で解約申し込みが殺到 したと思えます。 その償還期が、2011年12月末です。このときは、ヘッジ・ファンド は、手持ちの証券を、売れる物から投げ売りして、現金化の必要が 出ます。これが、まず、ユーロ債の暴落を示すのです。 【後記】 EU政府の愚策と、米国の財政赤字対策の、政治的な迷走を見ている と、先進国の国債のデフォルトは、意外に、近い時期かも知れませ ん。 3.11と原発以後、異常なことが続けて起こるため、「危機慣れ」 されているでしょうか? ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。以下は、項目 の目処です。】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述の際、より的確に書くための参考になります。 コピーして、メールに貼りつけ記入の上、気軽に送信してください。 感想やご意見は、励みと参考になり、うれしく読んでいます。時間 の関係で、返事や回答ができないときも全部を読みます。時には繰 り返し読みます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ■最近の有料版のテーマと目次 <560号:欧州の銀行危機は、世界の経済危機に至る(1)> 2011年10月19日号 【目次】 1.銀行の危機が、経済の信用収縮から恐慌になるメカニズム 2.PIIGSの国債価格の下落は、どこで収束するか? 3.ECBが、PIIGS救済資金を印刷すればどうなるか 4.輸出国の中国は、GDPの伸び率低下とバブル崩壊へ <561号:欧州の銀行危機は、世界の経済危機に至る(2)> 増刊+正刊 2011年10月26日号 【目次】 1.世界の金融での損失は、いくらくらいか 2.日本も、再びの金融危機になっている 3.欧州の金融機関も、国有化に向かうしか方法がない 4.最大の問題になったイタリアの対外債務:PIIGSの典型例 5.ゴールド価格での、噂(うわさ) 6.イタリアの経済成長、財政と経常収支の改善はない 7.G7の国債発行が、2012年には$10.5兆(816兆円)に増える <563号:これからのマーケティングの基礎データ集> 2011年11月9日号 【目次】 1.世帯と世帯人数では、独り住まいの世帯が最大構成に 2.世帯別の職業類型 3.世帯所得の観点から 4.世帯所得の分布 5.職業類型別世帯の、所得、貯蓄、負債 6.世代別の貯蓄と負債 ■1.無料のお試しセット(最初1ヵ月分): 有料版では、いつ申し込んでも申し込み月の既発行分は、全部を読 むことができます。最初の1ヶ月間分は、無料お試しセットです。 その後の解除は自由です。継続した場合に、2ヶ月目の分から、課 金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めた後、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。 【↓会員登録と解除の、方法の説明】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist 【登録または解除は、ご自分でお願いします】 (有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html 購読に関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ■2.解約していないのに、月初から、有料版のメールマガジンが来 なくなったとき(このメールが当方によく来ます) クレジットカードの有効期限が切れ、新しいカードになっていない か調べてください。ほとんどの原因は、クレジットカードの期限切 れです。お手間をかけますが、「新しい有効期限とカード番号」を 再登録してください。届かなかった月初の分の再送を含み、届くよ うになります。 https://mypage.mag2.com/Welcome.do ↑ この「マイページ・ログイン」から、メールアドレスとパスワード でログインし、新しい期限と番号を再登録します。 (以上) ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 のバックナンバー・配信停止はこちら ⇒ http://archive.mag2.com/0000048497/index.html |