トランプ相場は2017年も続くのか
Written by admin on 2016年12月26日 – 10:00
おはようございます。2016年も、押し迫りました。正月休みにはい った方もあるようです。2016年の政治、そして経済で驚きは、米国 メディアがこぞって反対を述べていたトランプの当選でした(54社 中52社)。 事前には、トランプが「金融緩和を続けるFRB議長イエレンの首を すげ変える」と言っていたことから、市場の暴落が予想されていま した。 開票の初期にトランプが有利になると、市場は、確かにドル売り (ドル安)、米国株売り(ダウ下落)、円買い(円高)、日経平均 の売り(日経平均安)で答えました(11月9日)。 しかしそれは一瞬でした。下げたあと、逆のドル買い、米国株買い、 円売り、日経平均高の相場になったのです。 本稿では、 (1)事前予想とは逆のマネーの流れがなぜ起ったのか、原因から 見極め、 (2)トランプ相場が2017年の1月、2月も続くのか、 (3)2012年10月から2013年のような、長期的な円安、株高になる のかを予想します。 見方は、二つに分かれています。 (1)トランプ相場が続く。円は1ドル120円を超えて下がり、130円、 140円にもなる。この円安が続くと、日経平均は2万3000円を超え、 2万5000円も目指すだろう。 (2)トランプ相場は終わる。1ドル117.1円(12月26日午前11時) は、次第に上がって、1万9410円(同日・同時刻)に上がっている 日経平均は、2万円を超えることはできず、下がるだろう。円安も、 120円をピークにゆり戻す。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.366:トランプ相場は2017年も続くのか> 2016年12月26日:無料版 【目次】 1.トランプ大統領の決定後、ドル高、米国株高になった理由 2.世界の金融市場は「織り込み相場」になっている 3.円安/ドル高と、日経平均の上昇の理由 4.なぜトランプ相場が、円安(ドル高)、日経平均高になったのか 5.ヘッジファンドが日本株を買い増すときは、 円の先物売りで、円安をヘッジする 6.トランプ相場をまとめれば 7.2017年の予想 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.トランプ大統領の決定後、ドル高、米国株高になった理由 想定外だったトランプ相場を解く鍵になるのは、米国の10年債の金 利の動きです。国債は、売りが増えると価格は下がり、金利は上が ります。 ▼国債の価格と、市場の金利の原理 金利が1.6%のとき発行された10年債(発行金利1.6%)は、市場の 期待金利が2.6%に上がると、以下のように価格を下げます。 (注)残存期間9年を事例にします。 (1+発行金利1.6%×9年) ÷(1+期待金利2.6%×9年)=1.144÷1.234≒0.927 ●$1万の額面の国債が、$9270へと、7.3%下がります。 国債は固定金利です。投資家の集合が考える期待金利が上がった場 合、流通価格が下がることによって、市場の期待金利に利回りを一 致させます。(注)逆に、期待金利が発行金利より下がったときは、 国債価格は上がります。 残存期間9年、発行金利1.6%の長期国債の価格が、7.3%下がると 満期までの利払いは、期待金利である2.6%に一致します(注)本 当は複利ですが、3%以下では単利との差が小さいので単利で計算 します。 下がった国債を$9270で買ったとき、金利1.6%の国債の9年後の元 利合計は、以下になります。(注)元本の償還額は額面の$1万で すが、金利は発行時の1.6%しかつきません。 $1万×(1+発行金利1.6%×9年)=$1万×1.144=$1万1440 満期には元利の合計が$1万1440になる国債を、$9270で買ったの で、9年間の平均利回りは、以下になります。 金利部分=元利合計1万1440-購入価格$9270=$2170 金利部分$2170÷購入価格$9270÷9年≒2.6%=市場の期待金利 つまり、 ・額面$1万、発行金利1.6%、残存期間9年の国債は、 ・市場の価格が$9270へと7.3%下がると、 ・その利回りは、上がった金利2.6%に一致します。 以上が、金利が固定されている国債と、変化する市場の期待金利の 原理です。期待金利が発行金利より上がると、国債価格は下がり、 期待金利が下がると、価格が上がって調整されるのです。 1980年後半からの金融自由化により、日米欧の長期金利は、長期国 債の売買価格によって、決まるようになっています。 現在の中央銀行の公定歩合(中央銀行が銀行に貸すときの金利)は、 短期金利を誘導するに過ぎないのです。 ▼米国の長期金利は、トランプ当選前の11月4日から上がり始めた トランプ当選が決まったのは、11月9日です。長期金利は、その前 週の11月4日から、上がり始めています。これは、期待金利の上昇 を予想した国債の売りの超過があったことと示します。 ・9月~10月の長期金利 1.5%~1.7% ・11月4日の長期金利 1.68% ・11月10日 2.11%(トランプ当選後) ・12月23日 2.54%(~現在) (ヤフー・ファイナンス) http://finance.yahoo.com/quote/%5ETNX?ltr=1 以上の金利の動きは、 ・投票日の1週間前に、トランプの当選を予測したヘッジファンド による米国債売りが始まり、 ・当選確定から、米国債の売りが本格化したことを示しています。 なぜトランプの当選が予想できていたのか。おそらくグーグルです。 グールグは、世界中のWEBの記事とメールを収集して、AI(人工知 能)で予測しています。 グーグルのサーバーには、世界のWEBのコピー情報があるからです。 8年数ヶ月前、グーグルは、泡沫候補とも見られていたオバマの当 選を予想していました。そのとき、「なぜ、グールグはオバマの当 選を予想できたのか」と話題になったのです。その後、グーグルは、 社会、政治、経済についての予想を公開しなくなりました。 今回も、米国を中心とするWEB情報とメールのAI分析から、「トラ ップ当選」を予測していたものと推察します。 これが、11月4日から米国債が売られて、金利が上がり始めた理由 でしょう。 ■2.世界の金融市場は「織り込み相場」になっている 【織り込みの増加】 織り込みとは、3か月後から6か月後の、金融・経済のファンダメン タルズ(金利、GDP、企業利益、通貨、物価などの実体経済の指 標)を予想し、それが実現したかのような売買を、今日行うことで す。 08年のリーマン危機のあと、中央銀行の巨大な金融緩和の合計約 1100兆円)により、金融機関の当座預金には、現金があふれ続けて います。(米国$4兆(468兆円)、欧州$2兆(234兆円)、日本 400兆円) このゼロ金利マネーが「織り込み相場」に拍車をかけているのです。 【選挙公約】 トランプは、選挙中に、経済面では2つの公約をしていました。 (1)10年で$6兆(700兆円)の減税 (2)10年で$1兆(117兆円)の公共投資 (注)クリントン候補は逆に、財政赤字を解消するための$1兆の 増税の公約でした。 【米国の財政赤字】 米国は、財政赤字(税収が少なく、政府支出が超過すること)を続 けています。2010年が$1.6兆、11年1.5兆、12年1.3兆、13年$ 7300億、14年7200億、15年6200億、16年予想$7600億(88兆円)の 赤字です。 米国の連邦政府の総債務は、$20兆と巨大です(2016年:2340兆円 :GDP比108%)。リーマン危機前(2007年)はGDP比64%でしたか ら、9年で44ポイント(年間5ポイント%)増えています。 米国の政府債務の増え方の速度は、日本(GDP比で年間3%ポイント い増加)より大きい。(注)この総債務のうち$16兆(1870兆円) が国債です。あとは借入金です。 【国内だけでは、国債のファイナンスができない米国】 米国は、年間80兆円ペースで増加発行している新規国債のうち、 40%から50%を、海外に売らねばならない。国内では、50%から 60%しか、買われないからです。 米国は経常収支の赤字国を続けています($4693億:55兆円: 2016年)。この赤字分、海外からの資金流入が必要になります。そ れが、海外からの国債買いという形になっているのです。 【公約の実行の想定】 トランプが当選し、公約を実行すると、米国の国債発行は以下のよ うに増加します。 (1)現在財政赤字分 $7600億(年間の財政赤字7600億) (2)減税分 $6000億($6兆の減税の1年分) (3)公共投資増加分 $1000億($1兆の公共事業の1年分) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 国債発行合計 $1兆4600億(170兆円) 発行額は、$1.46兆(170兆円)へと倍増します。ここから予想さ れるのは、米国内で引き受け難からの価格の下落です。1.6%の低 い金利では、米国債が売れず、国内と海外の買い手が増えるまで、 価格が下がって、金利が上がることが予想できます。 【ヘッジファンド米国債を売った】 もっとも多く米国債を売買しているヘッジファンドは、トランプ公 約の実行を想定して、下がる予想の国債を売ったのです。これが、 米国の長期金利が、それまでの1.6%付近から2.6%付近に約1%上 がった理由です。普通の時期は、わずか1か月でこうした大きな金 利の上昇はありません。 【国債を売ったマネーで米国株、日本株を買った】 米国債を売って現金を得たヘッジファンドは米国株と、日本株を買 っています。資金運用を預託されるヘッジファンドは、0%の金利 に現金をとどまらせることはできないからです。ヘッジファンドの 買を主因に、米国株と日本株は上がっています。 【米国株が買われた理由は、GDPの増加予想(4%)】 米国株が買われた理由は、 ・10年間で$6兆(700兆円)という大きな減税が実行されると、米 国のGDPの70%を占める個人消費(世帯の商品購入)が増える。 ・減税で企業の法人税も減るため、設備投資が増加する。 個人消費が増えて、設備投資が増えると、GDPが4%は増加し、企業 の売上が増えて、利益が増加する。(これが財政政策) 米国のGDPの増加予想は2%台でしたが、トランプ減税と公共事業の 実行がされれば、4%の増加なると期待されたのです。 ヘッジファンドは、トランプ減税の実行を想定して、 ・市場の期待金利が上がると、価格が下がる米国債を売って、 ・GDPが増えると、企業利益が増える株を買ったのです。 【ダウと日経平均】 米国ダウは11月4日の底値、$1万7883円から$1万9933にまで $2050(11%)上げています。米国株には、11月と12月で、ヘッジ ファンドと海外から、7兆円の買い越しがあり、これが株価を上げ たのです。 米国ダウに追随する性質をもつ日経平均も、11月9日の終値1万 6251円からは、3145円(19%)上がって、1万9396円になっていま す(12月26日)。 これは、1か月という短期の上げでは、2013年のアベノミクス相場 より大きな上昇率でした。 ■3.円安/ドル高と、日経平均の上昇の理由 日本の株式市場の70%の売買は、外国人投資家(ヘッジファンド) よるものです。日本人の合計(個人、金融機関、事業法人)は30% の売買に過ぎません。 このため、わが国の株式は、 ・ヘッジファンドが買い越すときは上がり、 ・売り越すときは下がるという、米国追従の単純な相場になってい ます。 以下は、16年11月から12月の投資家主体別の、買越額です。(東証 と安藤証券のデータをもとに筆者作成) (注記) ・自己は、証券会社の自己売買。日銀のETFの買いに対応して、そ の構成銘柄の一部を買う取引が多い。 ・個人は、個人投資家700万人の合計 ・外人は、オフショアからのヘッジファンドの売買。 ・機関は、わが国の銀行、生損保の機関投資家。2000年代以降、一 貫して売り越している。 ・信託は信託銀行。内容は、政府系金融(ゆうちょ銀行(資金量 210兆円)、かんぽ生命(同80兆円)、GPIF(同130兆円)の買い。 ・投信は、投資信託。 ・法人は金融以外の事業法人。自社株買いが、2016年は6兆円に増 えている。 ・日経平均は。該当の週間での騰落額(単位は円) 【投資家主体別の買い越し額:マイナスは売り越し】 (単位100億円) 11月 自己 個人 外人 機関 信託 投信 法人 日経平均 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 1週 -11 13 -6 -5 -3 2 7 +469 2週 16 -41 40 -5 -7 -9 9 +590 3週 18 -45 49 -7 -8 -16 12 +591 4週 28 -43 30 -2 -8 4 4 +412 5週 -10 -30 41 -5 0 5 3 + 45 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 11月計 42 -147 154 -23 -28 -25 38 +1521 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 12月 1週 -49 -37 56 -1 30 4 0 +570 2週 64 -48 8 -3 -5 -17 1 +26 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ http://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html 【ヘッジファンドの大きな買い越し】 外人分は、オフショア(タックスヘイブン)からの、ヘッジファン ドの買い越しです。11月には1兆5400億円という、1か月では史上最 大額の買い越しをしています。12月も1週が5600億円の買い越しで す。 ほぼ1か月という短期での、2兆円の外人の買い越しが、日経平均を 1万6251円から、1万9396円(12月26日)にまで、19%も上げた主因 です。(注)外国人の保有シェアは32%で約180兆円 【個人投資家の大きな売り越し】 外国人の次に大きな売買をする個人投資家(700万人:保有額84兆 円:シェア17%)は、上げ相場の中で一貫して売り越しています。 トランプ相場の中で、損失を抱えていた株を売って、利益を確定す る行動をとったのが個人投資家でした。 11月から12月2週までの売越額は、2兆3200億円です。個人投資家は、 下がる時は買い越して、上がるときは売り越すという「難平(ナン ピン)買い」の傾向を強くもっています。 【自己売買】 なお、証券会社の自己の、12月2週での6400億円の買い越しは、日 銀の株ETFの買いに対応した、構成銘柄の買いです。日銀は、月間 で5000億円、年間で6兆円の枠で、株ETFを買い続けています。日銀 の買いは、株価が2%(日経平均で300円~400円)下がると買いを 入れるという特徴をもっています。 【信託銀行】 信託銀行の買いは、政府系金融(ゆうちょ銀行、かんぽ生命)と年 金運用のGPIFの買いですが、これは、11月、12月には、大きくは動 いていません。外国人の買いで、大きく上がったからです。 【機関投資家】 かつては機関投資家と言われ、もっとも多く株をもっていた日本の 金融機関は、2000年代以降、「価格変動の大きなリスク資産」は売 却するという方針です。11月、12月も売り越しています。 【事業法人の買い越し】 事業法人は、11月に3800億円買い越しています。わが国の法人も、 EPS(1株あたり利益)を上げるための米国企業を真似て、2016年に は、年間5兆円という最大規模の自社株買いを行っています。 16年11月の3800億円の買い越しは、流通株を減らす自社株買いによ るものです。(注)自社株買いをすると流通株が減ります。その分、 1株あたり利益は増えたようになって、株価は上がることが多い。 以上のように、11月、12月のトランプ相場(日経平均+19%)は、 ひとえに、外国人が日本株を2兆円買い越したためです。国内の経 済要因による株価上昇ではありません。 ■4.なぜトランプ相場が、円安(ドル高)、日経平均高になったの か 円安は、「円売り/ドル買い」が、「ドル売り/円買い」を超過す ることから起ります。 米国のヘッジファドは、減税の公約の実行により、2017年からの米 国の金利が上がると想定し、金利が上がると価格が下がる米国債を 売りました。 米国債が、実際に大きく売られて価格が下がると、金利は上がりま す。(注)1.6%付近から2.6%へと、トランプ相場の1か月で、1ポ イント(%)も急騰したことは前述しています。 ▼日米の、イールド・スプレッドの拡大 日本は、ゼロ金利です。米国の金利と日本の金利の差をイールド・ スプレッド(利益差)と言っています。 ●このイールド・スプレッドが、2%を超え3%に近くなると、円高 (ドル安)のリスクをカバーできるため、「円売り/ドル買い」が 大きく増えます。 16年11月には、 ・まず、ヘッジファンドによる、米国債の売りがあり、 ・ゆうちょ銀行と、大手民間金融機関が、イールド・スプレッドの 拡大を見越して、売られた米国債を買ったのです。 米国債を買うことは、円を売ってドルを買うことです。 このため、円安に向かいました。 (1)日本の政府系金融と、民間大手銀行のドル買いと、 (2)ヘッジファンドが、日本株を買うときに、円安ヘッジとして 行う円の先物売りによって、円は107円から117円にまで、約10%も 下がったのです(買われたドルが上昇)。 1か月で10%の円安は、平時にはない、大きなものです。 ■5.ヘッジファンドが日本株を買い増すときは、 円の先物売りで、円安をヘッジする この約10%円安を促した要素は、 (1)わが国の政府系金融と大手銀行(三菱UFJなど)のドル国債買 い(円売り/ドル買い)以外に、 (2)日本の株を2兆円も買い越したヘッジファンドによる、株の買 いと同額の、円先物売りにもよります。 ヘッジファンドは、まさにヘッジファンドであり、日本株を買うと きは、そのリスクヘッジをします。 【300円の株価上昇と、1円の円安が対応している】 日本株は、株価が上がるときは円安になり、下がるときは、円高に なる根強い傾向をもっています。 2016年3月までは、300円(2%)の日経平均高に、1円(1%)の円 安が対応していました。1円の円安になると日経平均が300円上がり、 1円の円高で日経平均が300円下がるという関係です。 両方が別々に動くことはほとんどない。 この原因は、日本の株式市場で、株価を左右する70%の売買をして いるヘッジファンドが、 ・日本株を、例えば100億円買い越すときは、 ・円の先物も100億円売るという、ヘッジ取引をしているからです。 ヘッジファンドの買い越しで日本株は上がり、円の先物売りで円は 下がります。 こうしたヘッジ取引がある理由は、ドル圏にとっては、日本株が上 がるときのリスクは、円安だからです。具体的に言います。 ・100億円の日本株を買い、それが10%上がって、110億円になった とします。 ・そのときは、5円(5%)の円安が生じていることが多い。 日本株の2%の変動に、1%の円安・円高が対応しているからです。 http://lets-gold.net/market/chart2_usdjpy-nk225.php このサイトで、ドル/円と日経平均の推移を見てください。 2016年8月から12月まで、見事な対応が見えるでしょう。最近だけ ではない。2012年末以来、4年間、ほぼ同じ対応が見られます。 ▼株価上昇と同時に生じる円安をヘッジする方法 100億円で買った株が10%上がって110億円になっても、5%の円安 が進むと、ドル圏では為替差損が生じて、5億円の利益にしかなら ない。 これを防ぐには、円の先物を100億円売っておけばいい。 100億円の、円の先物売りでは、 ・例えば3か月先の限月(反対売買の期限日)までに、円が5%下が った場合、 ・それを95億円で買い戻すことができます。 利益は、〔売った100億円-買い戻した105億円=5億円〕です。こ の円安がもたらす利益によって、日本株の上昇10億円(10%)の利 益を回復できます。 ヘッジファンドは、11月と12月に、日本株を2兆円買い越していま す。同時に、円安ヘッジのための円の先物売りを2兆円行っていま す。これは円売りですから、円安の要素になったのです。 ■6.トランプ相場をまとめれば 2016年11月から12月のトランプ相場をまとめれば以下です。 ▼(1)まずトランプ減税の予想から、米国債の増発と金利上昇が 予想され、ヘッジファンドが、金利が上がれば下がる国債を売った。 その米国債は、 ・日米のイールドスプレッド(金利差)の拡大を予想し、 ・日銀に国債を売り続けていて、大量の当座預金をもつ日本の政府 系金融(特にゆうちょ銀行)と三菱UFJなどの大手銀行が買った。 これは「円売り/ドル買い」であるため、円は下落した。11月初旬 の1ドル107円は、117円にまで下がり、9.3%の円安が生じています。 ▼(2)米国債を売ったヘッジファンドは、ゼロ金利マネーで米国 株を買い、同時に、日本株を買った。 この買いが大きかったため、米国ダウは$1万7888(11月4日)から $1万9933にまで11%上がった。 米国株は、海外から1か月で7兆円も買い越されています。ヘッジフ ァンドの買いは、100%がオフショアからなので、米国株も海外か らの買いになるからです。 日経平均は、ヘッジファンドの2兆円の買い越しを主因に、11月9日 の底値、1万6251円から1万9396円(12月26日午後7時)へと19%上 がっている。 ▼主因は、米国の金利上昇である トランプ相場が起った主因は、トランプ政権が10年で$6兆(700兆 円)減税に向かうという予想からの、 (1)金利の上昇(1.6%→2.6%) (2)減税と公共投資の財政政策により、米国の実質GDPが2%台か ら4%台という、需要主導型の高い成長に向かうという期待からで す。 以上が、米国の株が7兆円買われて、上がった原因でした。 日本株は、ヘッジファンドの、日本株の買い越し2兆円として、そ の波及を受けたのです。同時に、2兆円の円の先物売りによる、円 安が起っています。 円安は、 (1)特にゆうちょ銀行と三菱UFJなどの大手銀行による、米国金利 の上昇予想(イールド・スプレッドの2.6%への拡大)からの「ゼ ロ金利の円売り/2.6%の利回りのドル国債買い」を主因に起こり、 (2)ヘッジファンドの円の先物売り(2兆円)によって、強化され たものです。 検討すべきは、 (1)米国金利の上昇とドル高 (2)その反対の、円安 (3)円安と米国株の上昇が生んだ、日本株の上昇が、2017年も続 くかどうかです。 ■7.2017年の予想 「織り込みの項」で述べたように、2000年以降の金融相場では、 「3か月あるは6か月先の予想が実現したと想定した売買」が行われ ています。 トランプ相場は、選挙公約が実行されたと想定した国債の売り、米 国株の買い、円の売り、日本株の買いから起ったものです。(織り 込み) 注目すべきは、2017年1月20日の、トランプ大統領就任式の後の、 上下院での議会演説です(一般教書)。 1月末からの金融市場は、次は3月から6月の、実体経済(GDP、金利、 企業利益、通貨)を予想して織り込むものに変わります。 一般教書での、選挙公約の減税($6兆)と公共事業($1兆)が、 実際は後退するとなると、それを織り込んだ相場に、反転が起りま す。これは、トランプ相場の逆になるのです。金利の低下(国債価 格上昇)、日米の株価下落、そして、円安・ドル高の反動です。 政治と経済の運営の基本を示す一般教書は、選挙公約より激しいも のにはなりません。むしろ、低下する可能性が高い。 となると、2016年末から1月初旬の金利、株価、ドルでピークをつ けて下がるでしょう。米国の年初の金利、株価、ドル高(円安)は、 注目に値します。 ゴールマンサックス出身のムニューチン氏が、財務長官に指名され ているので、ヘッジファンドには、一般教書の内容が伝わるからで す。米国に限らず、日本でも政策的なものは、インサイダー情報の カタマリになっています。 その次は、2017年2月の、政府の予算です。ここで、具体的に減税 と財政支出が明らかになります。これも、選挙公約より激しいもの になる可能性は低い。 【FRBの利上げの要素】 もう一点、FRBの利上げという要素があります。FRBは16年12月14日 に0.25%の利上げを行いました。しかしトランプ相場の織り込みで 長期金利はすで2.6%に上がっていたため、0.25%程度では、ほと んど話題にもならなかったのです。 FRBは、トランプ相場の金利上昇にのる形で、2017年には、少なく とも3回(0.75%)か4回(1%)の利上げに転じるという予想に変 わっています。 これが、実際にできるのかどうか。 【ドル高の限界】 金利上昇がもたらすドル高は、米国産業の輸出にとっては障害です。 ユーロ安、元安、円安になって、米国製品が高くなり輸出が減るか らです。輸出が減れば、米国産業の輸出($1.5兆:175兆円: 2015年)は減ります。それは、米国の自動車や武器輸出産業に打撃 を与えるからです。 米国は、円との関係で言うと「$1=120円以上」のドル高には、長 期では耐えるこことができないと見ています。輸出先の1位である カナダと2位のメキシコは、米穀との関税がないNAFTA(自由貿易 圏)です。関税がないため、もろに、ドル高が輸出を減らすことに なるからです。 米ドルを上げるFRBの年3回の利上げ(2017年)は、可能性が薄いよ うに思えるのです。 以上の諸点を考慮した場合、2017年の円は、$1=120円を超えるこ とがあってもこれは一時的であり110円台に戻る感じがしています。 日米の株価も、ダウで$2万、日経平均で2万円が頂点になるでしょ う。 ある週刊誌は、日経平均4万円や2万5000円、$1=130円から140円 とも言っていますが、これはない。2017年1月初旬は、売り時を迎 えるでしょう。 【ドル高で膨らむ米国の対外債務の実質負担】 ドル高に限界がある理由のひとつは、米国が、基軸通貨のドルベー スでの、対外債務国であることです。対外債務の総額は$17.5兆 (2047兆円:2015年)です。GDPに匹敵する海外からの債務です。 この債務はドルベースですから、世界の通貨に対するドル高が10% 進むと、債務の実質負担も[$17.5兆×1.1=$19.25(2252兆 円)]へと205兆円も膨らむのです。この負債からも、ドル高には 限界があることが、わかります。このため、$1=130円や140円に は、なり得ないのです。 本稿では、2017年の株価、通貨の予測をしました。 週刊誌が、円は130円や140円、日経平均は2万5000円や3万円と騒い でいるトランプ相場は、2017年1月末から2月には、ほぼ終わる可能 性型高いと判断しています。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、今後のテー マ と記述のとき、より的確に書く参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、 うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ ないときも全部を読み、多くの希望がある共通のものは、記事に反 映させるよう努めます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ◎購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ■最近の有料版の目次です。 <851号:出口のない異次元緩和の先は財政破産(1)> 2016年10月26日:有料版 【目次】 1.出口がない 2.マネタイゼーションだった 3.いったん始めた異次元緩和に出口がない 4.人々の認識の臨界点 5.債券市場での国債の大きな売買額 6.ゼロ金利国債の大きなリスク <852号:出口のない異次元緩和の先は財政破産(2)> 2016年11月2日:有料版 【目次】 1.金利と国債価格の関係の確認 2.市場が消える恐怖 3.マイナス金利の国債は、償還額面より高い 4.国債は、売買で年間1.5回転している 5.日本は、ハイバーインフレにはならない 6.「金融抑圧」を長期間続ける可能性 :英国の戦後国債の事例研究 7.ポンド暴落の結果は、低成長・高負担・貧困だった 8.わが国での金融抑圧の可能性 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ~~~ ■1.有料版のご購読の案内 新年にちなみ毎週、質の高い論を展開する有料版はいかがでしょう。 (↓)毎週水曜日に送信され、料金は月間648円(税込み)です。 http://www.mag2.com/m/P0000018.html (まぐまぐ有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (まぐまぐ無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html 【↓まぐまぐ会員登録と解除の方法】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist ■2.「まぐまぐの有料版を解約していないのに、月初から届かな くなった。」との問い合わせが、当方にも多いのですが、ほとんど の原因は、クレジットカードの「有効期限切れ」です。 なお、登録情報は、まぐまぐの『マイページ ログイン』の画面を 開き、登録していた旧アドレスとパスワードでログインして出てき たマイページで、メールアドレス、パスワード、クレジットカード を新しいものに変更できる仕組みです。クレジットカードの変更、 送信メールアドレスの変更、パスワードの変更などに使ってくださ い (マイページ・ログイン↓) https://mypage.mag2.com/Welcome.do または↓ https://mypage.mag2.com/mypage/creditcard/CreditCardMenu.do 新しいカードと有効期限を登録すると、その月の届かなかった分を 含んで、再送されます。 ↓わからないときの問い合わせ先: reader_yuryo@mag2.com 回答が来る時間は、休日を除く、午前10時から午後5時です。 【お知らせ】 新しいメルマガ配信サイトの『フーミー:Foomi』からなら、 (1)銀行振り込み、(2)携帯キャリア決済、(3)コンビニ決済 で、有料版の購読ができます。 クレジットカードの登録がイヤな 方はご利用ください(↓) http://foomii.com/00023 ◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます ※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 のバックナンバーはこちら ⇒ http://archives.mag2.com/0000048497/index.html?l=hpt0a0092e ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 の配信停止はこちら ⇒ http://www.mag2.com/m/0000048497.html?l=hpt0a0092e |