システムトレードのプログラムへの挑戦(1)
Written by admin on 2017年9月15日 – 12:00
こんにちは、吉田繁治です。しばらく送信が途絶えたことを、お詫び します。 毎週の有料版の8月号では、「現代ファイナンス論」をシリーズで書い ています。その過程で、4つのノーベル賞が与えられているファイナン ス論を、改めて研究しました。 ▼「会計(アカウンティング)」では、過ぎ去った過去の数字を複式 簿記に記帳し、損益計算(利益結果)や貸借対照表(資産と負債の対 称)を作成します。会社の経理担当が行っている、簿記と会計学の領 域がこれです。 ▼ファイナンスは、元は、企業の資金調達のことです。資金調達は過 去ではなく未来のことです。「ファイナンス」では時間軸が、過去で はなく未来です。意味がずれる「財務」という訳語しかない理由は、 わが国では、企業資金において、米国で発達したファイナンスの考え が弱いからでしょう。 ファイナンスでは、わが国の多い借入金だけではなく、米国に多い株 式発行による資金調達を含むので、理論株価も数式化しています。 未来の資金を扱うので、金融論にもなっているのです。将来の資金を 在価値に還元する(NPV:Net Present Value)がベースになっていま す。 現代ファイナンス論の元になっている考えは、金融商品(株価、株価 指数、通貨、金や原油を含むコモディティの日々の価格)の市場価格 は、 ・長期では、理論株価の近くに収束して行く傾向はもつものの、 ・1年以内の短期では、ブラウン運動をするということです。 ブラウン運動とは、水に浮かんだ花粉の動きのように不規則な、ラン ダムウォークのことです。 1999年から2017年の、18年間の日経平均で、これを調べてみました。 (注)日経平均は、東証1部225社の、単純平均の指数です。「今日の 株価の合計÷225社の発行済み株式数」で日経新聞が計算しています。 ダウは、米国の、時価総額1位のアップルを含む大手企業30社の株価指 数です。米国のナスダックは約3100社の株価指数です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.372:システムトレードのプログラムへの挑戦(1)> 2017年9月15日:無料版 【目次】 1.ランダムウォークしている株価 2.エクセルの関数を使うプログラム作り 3.「修正BB法」のバックテストの結果(第一回) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.ランダムウォークしている株価 18年の日数は、市場の開場日(週末と祝日は休み)では4697日でした。 (注)日経平均先物(225)は、24時間取引ができますが、データは、 開場日に合わせました。 前日比で上がった日と、下がった日をエクセルcountif関数で調べると、 上昇が2409日(51.2%)、下落が2268日(48.2%)でした。ほとんど 50:50の、サイコロの奇数、偶数のような「ランダムウォーク」です。 明日の株価が上がる確率は50%、下がる確率も50%であることを、見 事に示しています。もちろん、上げや下げが2日や3日、あるいは4日続 くときもあります。 2日続く確率は、0.5×0.5=25%(4回に1回) 3日続く確率は、0.5×0.5×0.5=12.5%(8回に1回) 4日続く確率は、0.5×0.5×0.5×0.5=6.25%(16回に1回)です。 価格のランダムウォークは、通貨(ドル/円)、金、コモディティでも 同じです。 長期での罫線の傾向(価格グラフの傾向)は、当然にあります。しか し、日々の価格の変動は、ランダムウォークです。これは、9月15日に 1万9929円(終値)の日経平均が、明日上がるか、または下がるか、 50:50であることも示しています。 8月に、現代ファイナンス論を書いているとき、その前提に触発されて、 システムトレードのプログラムをエクセルで作ろうと思い立ちました。 株価指数の先物(日経225=日経平均の先物)での、短期での売りと買 いを示すサインを出すプログラムです。株価の確率変動を利用し、確 率的な変動率を利益にするプログラムです。 現物と同様、先物は、安い日に買って、高い日に売ると利益が出ます。 短期売買ですから、1回の売買での利益率は、2%から最大でも10%く らいと小さい。損も混じります。リスクも低い、低い利益率を積み重 ねるプログラムです。 (注)限月(反対売買の期限日)が6か月の先物価格は、「現物価格+ 期間金利」ですが、現在は金利が0%なので、現物価格とほとんど同じ です。買うときと売るときは、資金は要りません。反対売買(清算) のとき、売りと買いの差額が決済されます。損が出れば証拠金が減り、 利益なら増えます。 日経平均などの、株価指数の先物では、年間利益が、売買の平均持ち 高(ポジション)に対して30%と低くても、個人でも、最大33倍のレ バレッジをかけることができます。 日経平均ラージ(1000株単位の売買:一回が約2000万円)の証拠金は 60万円です。最大売買額の3%です。ミニ(100株単位の売買:1回が約 200万円の)なら、証拠金6万円で始めることができます。 「先物取引は怖い」とする人が多いのは、利益もレバレッジで10倍、 33倍になりえても、損も10倍、33倍になるからでしょう。損益は同じ 倍数で、大きくなります。 現代金融のレバレッジは、一回の取引での利益は小さくても確実なも のなら、安定的に大きな利益を得る取引方法になりえることを示すの です。利益率は低く、確実であることが肝心です。利益率の低さは問 題ではなく、確実さが重要になったのです。 「システムトレード」での、 ・確率的にランダムウォークする株価を、安い日に買い、 ・高い日に売る短期売買のプログラムにより、 損の日を少なくするようプログラムを組める可能性があります。 年間52回(週1回)の清算で、30%(1回平均と0.6%)いう低い利益率 でも、それが確実なら、証拠金に対して、不安なく10倍や33倍のレバ レッジをかけ、利益を大きくできます。 10倍なら300%(証拠金の4倍)、33倍なら990%(証拠金の10.9倍)と いう高い利益額になります。 FX(通貨の証拠金取引)や金先物でも、レバレッジがかかることは同 じです。FXでは、個人は25倍、法人なら100倍のレバレッジまでが可能 です。 「ドル/円」や金価格も、1年以内の短期では、確率変動していますか ら、株価のシステムトレードのプログラムが適用できるでしょう。 (注)変動のパターンの違いと、価格変動の標準偏差の大きさの違い があるので、パラメータの調整は必要です。 ■2.エクセルの関数を使うプログラム作り まず、ヤフーファイナンスなどで、日々の始値、終値を18年分コピー して、エクセルに貼りつけます。1回1か月単位なので、手間がかかり ますが・・・。投資家700万人が追い、または賭けた血と涙のデータで す。 そして、(1)20日(1か月)、75日、20日等の単純移動平均や、指数 平滑平均で分析し、(2)株価の標準偏差(変動幅のボラティリティに 相当する)もとって、実際の株価と比較しながら、トレードを決める アイを考えました。 ●安い日をどう決めるか。高い日をどうきめるか、です。株価の、売 買を行うトレーディングで利益を出す方法は、要は「安く買って、高 く売ること」以外にないからです。 (注)買って保有を続ける投資では、長期の値上がりと配当でしょう が、システムトレーディングでは、最長でも、売るまでの3か月くらい の保有です。売りから入れば、買って清算するまでの買い持ちです。 ▼最初「修正BB法」を作った 移動平均と標準偏差を使うボリンジャーバンドは、広く知られていま す。たとえば、20日や75日、または200日の移動平均(関数では、 average(列C1:列C19))をつくる。 そして20日(1か月)の株価標準偏差(STDEV(C1:C19))をとり、それ を、√12倍=3.46倍して、年間の標準偏差(変動率)に変換し、移動 平均に、プラス・マイナスした幅が1σ(シグマ)の、ボリンジャーバ ンドです。 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=998407.O& ct=z&t=5y&q=c&l=off&z=m&p=m65,m130&a= ボリンジャーバンドが示すのは、長期変動です。長期ではシステムト レーディングには向かないので、工夫したのは、短期化です。そのた め「修正BB法(修正ボリンジャーバンド法)」と名付けました。 ▼(1)売りのタイミング [20日移動平均+20日標準偏差×係数1]・・・これが表すのは、この 数値より株価が上回る高値の出現確率は、16%ということです。 株価変動を正規分布とした場合、[平均+標準偏差]を上回るのは、 16%と予想できます。[20日×16%=3.2日]ですから、1か月のうち 3.2日が、この価格を上回る「高値」ということになります。 係数はパラメータであり、変化させます。係数を大きくすると、株価 の出現の確率は、減ります。小さくすると、増えます。 この高値のとき、翌日の始値で売るサインを出します。 ▼(2)買いのタイミング [20日移動平均+20日標準偏差×係数1]・・・これが表すのは、この 数値より株価が下回る安値の出現確率は、16%(1か月のうち3.2日) と予想できます。この安値のときが、売りです。翌日の始値で売りま す。 最初は、以上のように、きわめて単純なプログラムでした。しかし20 日移動平均では、うまく利益が出ません。標準偏差の係数も1ではダメ でした。多くの人が、これに近いことを実行していて、株価が歪んで いるのかもしれません。 いろいろパラメータを調整して、15日移動平均で、買いも売りも標準 偏差の係数では、1.20付近がいいことがわかりました。ただし、バッ クテストをしてみると、利益最適になる係数は、年度で微妙に変化す ることがわかりました。 (注)試行錯誤の過程を省いて、書いています。実際は、くだくだと 書かねばならないくらいの量の、エクセルの関数や利益計算の間違い を含み、多くの時間のトライ&エラーがありました。開始したのは8月 初旬です。 ■3.「修正BB法」のバックテストの結果(第一回) バックテストは、過去の既知のデータを使い、最適利益のパラメータ を求めるものです。各年度パラメータを最適にしたとき、以下の結果 になりました。 調整パラメータは、(1)移動平均の期間、(2)標準偏差に掛ける係 数と、(3)最大保有ポジションです。 各年度で、売りまたは買いの回数が超過するときは、年度の売買額が ほぼ同じなるように、買い倍数、または売り倍数で、調整しています。 売りの回数が2倍なら、買いの金額を2倍にする方法です。 売買の時期によって株価が違うので、厳密には一致しませんが、ほぼ 一緒になります。 買いのサインが出たとき、その翌日の始値付近で買い、売りのサイン が出た日は、同じく翌日の始値で売るだけであり、人間の判断は加え ません。使う時間は、新しい株価データ入力や利益、損失の確認などで、1日30分程度でしょう。 システムトレードは、人の判断がなく、片手間に行うことができます。 【前半8年のパフォーマンス:第一回試算】 年度 売りと買い 利益/ポジション ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 1999年8月~2000年8月 売買 76回 年間利益率61% 2000年8月~2001年8月 売買 61回 年間利益率65% 2001年8月~2002年8月 売買 68回 年間利益率21% 2002年8月~2003年8月 売買 90回 年間利益率46% 2003年8月~2004年8月 売買 61回 年間利益率47% 2004年8月~2005年8月 売買102回 年間利益率45% 2005年8月~2006年8月 売買 87回 年間利益率36% 2006年8月~2007年8月 売買 61回 年間利益率81% 2007年8月~2008年8月 売買147回 年間利益率 -6% ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 修正BB法で、各年度の最適パラメータに調整できれば、上記の表のよ うに、高い利益率が上がります。 ・利益を投資に回さない単利でも、平均年率50%くらいの利益率です。 利益が出た7年で350%(元金の4.5倍)の単利になります。 ・利益を投資に回す複利なら、1.5の7乗ですから、1700%(18倍)で す。100万円が1800万円に、1000万円なら1.8億円です。レバレッジを かければ、そのレバレッジの倍数が加わります。「驚くべき利益」が 実現します。 たとえば、初年度の1999年8月~2000年8月は、2000年4月の米国ITバブ ル崩壊のときであり、日経平均も1万8000円から1万3000円にまで5000 円(28%)下げています。しかし、最適パラメータのシステムトレー ドでは、売持ち・買持ちの、年間平均ポジション金額(92,339:約6 枚)に対して、61%の利益です。 先物で普通の10倍のレバレッジなら、1年間で証拠金に対して611% (7.11倍)の利益になります。1000万円が7110万円と聞けば、これは 大きいでしょう。一回は数%の少ない利益を積み重ね、それにレバレ ッジを掛けた結果です。(注)繰り返しますが、以上の利益は、「年 度の最適パラメータに調整」できたときです。 【修正BB法では利益が出なかった年度:07年8月~08年8月】 2007年8月から2008年8月は、修正BB法のパラメータ調整では、年間利 益が上がりませんでした(利益率は-6%)。 この年度は、最低価格7198円から、最高価格1万1339円までの、幅を変 動しています。1日の価格変化の平均は253円(2.8%)です。標準偏差 では2.59%です。 単純移動平均を、実績への追随性が早い指数平滑平均(加重移動平 均)に変えて、やっと、14%の年間利益が出ました。 修正BB法には、大きな可能性があることがわかりました。課題は、 「どのようにし、年度内の最適パラメータに調整するか」です。 ベストではなくても、次善なら、いろんな方法があります。 (1)利益が出なくなった時点で、損失の原因を分析して、パラメータ を再調整して、その後の売買を行う。 (2)3か月くらいのサイクルのバックテストで、パラメータを最適に して、次の3か月に適用する。 以上、本稿で書いたのは、8月の中旬までの過程です(利益計算の間違 いは修正しています)。次号では、それ以降の試行や、他の方法も書 きます。実際のデータを、システムにとっては未知のデータとするフ ューチャー・テストもしなければなりません。 有料版では、システムトレードのヒントを与えてくれた現代ファイナ ンス理論から6回くらいのシリーズで書いています。本稿はその概要で す。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述のとき、より的確に書く参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考になり、うれ しく読んでいます。時間の関係で質問への返事ができないときも全部 を読み、希望が共通のものは、記事に反映させるよう努めています。 【著者へのひとことメール、読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ◎購読方法と届かないことに関する問い合わせ先 → reader_yuryo@mag2.com ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ■1.有料版のご購読の案内 最新の有料版の目次ですが、目次だけで、相済みません・・・ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ <894号:常識と異なるところのある現代ファイナンス理論(1)> 2017年8月9日:有料版 【目次】 1.ファイナンス一番の基本であるDCFの理論から 2.株価の評価(=株主資本価値)でも、DCF法が使われる 3.債券の評価もDCF法である。 4.ランダムウォーク仮説 5.金融商品の不確実性を計る、標準偏差(ボラティリティ) <895号:常識と異なるところのある現代ファイナンス理論(2) 2017年8月17日:有料版 【目次】 1.ボラティリティ・インデックス(VI:変動幅)の意味 2.オプション価格の理論 3.オプション価格を決めるブラック・ショールズ方程式 4.ボラティリティを減らす方法がポートフォリオ 【後記】 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 毎週、質の高い論を展開する有料版はいかがでしょう。 (↓)毎週水曜日に送信され、料金は月間648円(税込み)です。 http://www.mag2.com/m/P0000018.html (まぐまぐ有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (まぐまぐ無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html 【↓まぐまぐ会員登録と解除の方法】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist ■2.「まぐまぐの有料版を解約していないのに、月初から届かなくな った。」との問い合わせが多いのですが、主因は、クレジット・カー ドの「有効期限切れ」です。 『マイページ ログイン』の画面を開き、登録していた旧アドレスとパ スワードでログインし、出てきたマイページで、クレジット・カード を新しいものに変更できる仕組みです。メールアドレスの変更やパス ワードの変更などにも使ってください (マイページ・ログイン↓) https://mypage.mag2.com/Welcome.do または↓ https://mypage.mag2.com/mypage/creditcard/CreditCardMenu.do 新しいカードと有効期限を登録すると、その月の届かなかった分を含 んで、再送されます。 ↓わからないときの問い合わせ先: reader_yuryo@mag2.com 回答が来る時間は、休日を除く、午前10時から午後5時です。 【お知らせ】 新しいメルマガ配信サイトの『フーミー:Foomi』からなら、 (1)銀行振り込み、(2)携帯キャリア決済、(3)コンビニ決済で、 有料版の購読ができます。 クレジット・カードの登録がイヤな方はご 利用ください(↓) 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