インフレは、デォスカウントストアの巨大な機会
Written by admin on 2013年7月25日 – 09:00
おはようございます。暑い日が続いていますが、いかがお過ごしで しょう。最近思うのは、何ごとにつけ、数日前のことが、またたく 間に古くなる感じがすることです。物理的ではない、われわれの意 識の、歴史的な時間感覚が、ジェット機のように速くなったのか。 大方の予想通り、自民党が圧勝しました。国政と経済政策を決める 選挙結果は、支持の移動や変化がどれくらいあれば決まるのかを見 ます。 国家の事業は、一般会計で92兆円(2013年度)、特別会計〔重複を 除く:09年度〕で169兆円です。合計で261兆円です。 特別会計では、金額で大きなものが、国債の償還、年金(54兆円)、 医療(35兆円)、介護等の社会保障(20兆円)の事業です。これら も国家事業です。国の全経済の50%くらいに、政府部門が関与して います。この意味で、どの政党が、どんな考えと価値観で国政を担 当するのか、重要です。 20歳以上の有権者は、人口1億2700万人のうち、約1億人です。今回、 投票に行った人は、53%の5300万人でした。53人の投票に縮小しま す。 ・100人のうち、53人が投票に行き、 ・53人の中の5人(10%)が、どう移動したかで、国政担当が決ま っています。 比例区での得票率は、政党の支持率です。傾向をつかむため、小数 点は四捨五入します。自民が34%、公明14%、民主13%、維新12%、 共産10%、みんな9%でした。 ここまでで92%です。あとは、社民2%、生活2%、大地1%、みど り1%でした。53人で言えば、以下の投票になります。右は、その 獲得票に対応する、実際の当選議席数です。 米国や英国のような2政党ではなく、わが国の「1党と小党」の小選 挙区制では、ほぼ国民の3分の1の支持(3人うち1人)の支持を集め た政党が、過半数の議席を獲得します。 比例区 比例区+選挙区の実際の 得票数 獲得議席:構成比 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 自民支持 18人(34%) 65名(54%)→政党支持の1.6倍 公明 7人(14%) 11名(10%) →0.7倍 民主 7人(13%) 17名(14%) →1.1倍 維新 6人(12%) 8名(7%) →0.6倍 共産 5人(10%) 8名(7%) →0.7倍 みんな 5人(9%) 8名(7%) →0.8倍 その他 4人(8%) 4名(3%) →0.4倍 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 合計 53人(100) 121名(100) 自民党の、3年前の参院選比例区では、得票率が24%(13名)でし た。これが10ポイント増えて、今回は34%(18名)です。クラスの 53人で言えば、前回より5名、他の政党支持(民主)から自民に移 ったのです。 この5名の移動が、比例区+選挙区での、自民党の、64名(当選議員 の構成比で54%)の当選の、原因です。 惨敗した民主党は、3年前の比例区では得票率が32%で、今回の自 民党並でした。これが、13%へと19ポイントも減っています。53名 で言えば、前回の民主支持は17名でしたが、今回は7名で、10名も 減らしたのです。 民主党から10名の支持者が減り、自民党に移動したのが5名です。 3年前はなかった日本維新の会が、新たに、12%(6名の支持)を獲 得しています。 53人(5300万人)の投票行動に例えて言えば、 ・民主党が17名の支持を7名へと、10名減らした。 民主党から離れた10人のうち、 ・自民党へ5名が流れ、 ・維新に5名が流れたと言えるでしょう。 他で目立つのは、共産党が前回の得票シェア6%から、今回は10% へと大きく増やしたことです。 2大政党ではない、わが国の小選挙区制では、1/3(33%)の国民の 支持を獲得すれば、今回の自民、2009年の衆院選民主のような圧勝 になります。 ●投票する人の10%(10人に1名)が、前回から、どこへ政党を変 えるかによって、国政の担当が決まっています。 衆参両院とも、選挙区では1人区が多い小選挙区なので、結果に大 差が出ます。政権と議席を決めているのは、10人のうちわずか1名 の、支持の移動です。繰り返し言います。10人のうち1名の変化で、 国政がひっくり返ります。 次回の参院選は、2016年です。衆議院は、任期の4年を全うするで しょう。自民党が295議席で、衆議院480名の枠のうち61%を占め、 公明党の31議席とあわせれば326議席で68%であり、2/3を超える圧 倒的多数だからです。 議席では過半数の自民党の支持も、選挙の支持率では、国民の1/3 にすぎません。ほぼ30%の支持をあつめれば、国政を取れます。 自民党も、次回、国民のうち10%つまり10人に1名の支持が、逃げ ると、再び、現在の民主党のような立場に堕(お)ちます。 自民支持も、1980年代までのようには盤石ではない。かつては、自 民党は、固定的な組織票(一次産業と土木・建設)でした。現在は、 「風」であり脆弱(ぜいじゃく)です。街角に立った議員は、肌で 知っているはずです。風は、数年サイクルで大きく変わります。 次回は、当選できるか、60%の議員は、不安をかかえています。こ のため、前回の民主党のように、次回の衆院選挙も任期ギリギリま でひっぱります。これから3.5年、自民・公明連立での政権が続く ことが確定しました。 今後の経済政策の核は、「インフレ目標2%と、その手段である異 次元緩和」です。 ▼わが国もついにインフレ傾向へ 経済は、昨年比で25%の円安による輸入の資源、エネルギー、食料、 商品物価の上昇から、次第に、インフレ傾向を示すようになってき ました。 天候や不作等での短期の変動が激しい食料と、投機的な価格変動が あるエネルギーを除いた消費者物価(CPI)の前年比を見ると、以 下の傾向です。生鮮とエネルギーを除くと、物価の、基礎的な傾向 が判定できます。 【消費者物価:前年同月比】 ~~~~~~~~~~~~~ 2010年 -1.2% 2011年 -1.0% 2012年 -0.6% 2013年2月 -0.9% 3月 -0.8% 4月 -0.6% 5月 -0.4% ~~~~~~~~~~~~ (総務省 統計局) http://www.stat.go.jp/data/cpi/kako/index.htm 現在の傾向では、2013年の年末に、円安での輸入価格上昇を原因に 消費者物価が±0%になり、2014年末には、ほぼ20年ぶりに+1%で しょうか。わが国の物価が下がりはじめたのは、1994年からでした。 (注)消費税の増税分は含みません。 数値では、まだインフレと言える物価上昇ではありません。しかし、 1994年からの20年、実感で言えば、年に1~2%物価が下がり続けて きたことに比較すると、+1%の上昇でも、物価感覚では+2%や+3% になります。インフレ感です。 ▼円の実効レートでは長期の円安へ 20年、物価が下がってきた原因うち、大きなものは、国際商品の価 格の基準通貨であるドルに対する、円高の傾向でした。 (注)日本以外では、スイスの消費者物価-0.5%(13年5月)です。 その理由は、長期傾向で見たときの、米ドルに対する、スイスフラ ン高です。1985年は$1=2.75スイスフランでした。2012年が0.8~ 1フランですから、27年間で、3倍くらいに上がっています。 長期で見たとき通貨が上がるか、下がるかを決めるのは、経常収支 の黒字です。黒字国の通貨は、赤字国の通貨(米ドル)に対し、高 くなる。もちろん短期では、騰落があります。ここで言うのは、数 年以上の長期傾向です。(注)経常収支=貿易収支+所得収支 日本はまだ、海外投資の対外純資産(296兆円:12年12月末)から の所得を含む経常収支は、黒字です(2013年予想5兆円:GDP比1 %)。 しかし、貿易収支は、2011年の4-6期から赤字になり、その赤字額 はどんどん大きくなり、年間12兆円レベルに拡大しています〔13年 3月〕。 日本の貿易では、赤字傾向が定着しています。それを、所得収支 の黒字(年間15兆円くらい)で補います。しかし、貿易赤字が大き くなると経常収支の黒字額は、減ります。 過去の経常収支の黒字は、以下のように大きかったのです。経常収 支の黒字とは、その通貨(円)が世界から買われることを示し、円 の実効レートを上げる要素でした。 この経常収支の黒字が、2011年からの貿易の赤字化で、急速に減っ ています。 【経常収支の黒字の、12年間の変化】 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 2004年 18兆円 2005年 20兆円 2006年 21兆円 2007年 25兆円 2008年 14兆円 2009年 15兆円 2010年 15兆円 2011年 7兆円 →2011年以降、貿易が赤字になった 2012年 4兆円 2013年 傾向では、ほぼゼロだが・・・ 2014年 経常収支ゼロ付近 2015年 明確な円安傾向から、輸入金額増で経常収支赤字 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ GDPの4%もあった経常収支の黒字が、ほぼゼロになるくらいに減る ことの意味は、「円が長期で、実効レートでの円高になる時代の終 わり」を意味します。 (注)実効レートは、貿易額で重要度に加重値をつけた世界通貨に 対する円の価格です。円は、1994年以降、2012年までの18年間、世 界の平均通貨に対する実効レートでの円高傾向を続けていました。 (↓) http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5072.html 18年間の円高から転じた、2012年末からの「実効レートでの円安傾 向(長期傾向)」は、日本の物価が、上がる傾向を生みます。 物価が下がることは、通貨の価値が上がることです。通貨の価値が 上がるのは、その国の通貨が、世界から買われることです。 しかし、経常収支の黒字が小さくなると、その通貨が買われる度合 いが減ります。赤字になれば、売られる。このため、その国の通貨 は下がる傾向に向かいます。 (注)世界の通貨で、例外は、基軸通貨ドルです。米ドルは、世界 の貿易が増えると、ドルが必要になって買われます。そして、各国 の政府・中央銀行は、外貨準備としてもドルを買って貯める。この ため、米国が、年間$5000億(50兆円)の経常収支の赤字(=ドル のバラマキ)を続けていても、ドル・ニーズがあるので、無際限に は下落しないのです。 円は、世界の人が買う基軸通貨ではありません。このため、経常収 支の黒字が減って行くと、実効レートでの円安が生じます。円安は、 円の価値の下落です。それゆえ、日本のデフレ(=円の価値が高く なること)は終わり、インフレ傾向に向かうようになります。 経済は、2013年で、大きく転換したのです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <665号:インフレは、ディスカウント・ストアの巨大機会> 2013年7月24日 【目次】 1. インフレへ 2.インフレとは何か? 何がどうなることか? 3. GDPギャップが3% 4.肝心な世帯所得 5.確実に起こるのは、 輸入物価上昇からのコストプッシュ型の2%インフレ 6. 14兆円の負担増 7. 米国の80年代のスタグフレーションと、 ディスカウント・ストアの勃興 8.輩出したディスカウント・ストア群 9.専門店商品の領域では、 スペシャルティ・ディスカウント 10.日本はこれから10年:ディスカウント・ストアの時代へ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【後記】 毎週、有料版のプロローグ部をお届けしています。参考にしてくだ されば、幸甚に存じます。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、 うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ ないときも全部を読み、共通のものは、記事に反映させるよう努め ています。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ◎購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ■1.有料版は、新規に登録すると『無料で読めるお試しセット』 が1ヶ月分送信されます。以下は、最近のものの、テーマと目次の 項目です。興味のある方は、登録し、購読してください。 まぐまぐの有料版では、新規に月中のいつ申し込んでも、その月の 既発行分は全部を読むことができます。最初の1ヶ月間分は、無料 お試しセットです。その後の解除は自由です。継続した場合に、2 ヶ月目の分から、課金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードをきめた後、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。 【↓まぐまぐ会員登録と解除の方法】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist ◎登録または解除は、ご自分でお願いします。 (まぐまぐ有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (まぐまぐ無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html (以上) ■2.「まぐまぐの有料版を解約していないのに月初から届かなくな った。」との問い合わせが、当方にも多いのですが、ほとんどの原 因は、クレジットカードの「有効期限切れ」です。 なお、登録情報の変更は、まぐまぐの『マイページ ログイン』の 画面を開き、登録していた旧アドレスとパスワードでログインして 出てきたマイページで、メールアドレス、パスワード、クレジット カードを新しいものに変更できる仕組みです。クレジットカードの 変更、送信メールアドレスの変更、パスワードの変更などに使って ください (マイページ・ログイン↓) https://mypage.mag2.com/Welcome.do または↓ https://mypage.mag2.com/mypage/creditcard/CreditCardMenu.do 新しいカードと有効期限を登録すると、その月の届かなかった分を 含んで、再送されます。 なお、有料版と無料版メルマガの、購読方法の電話での問い合わせ は、以下です。075-253-1244 (まぐまぐ:平日午前10時~午後5 時まで) 【お知らせ】 『フーミー:Foomi』からなら、まぐまぐのようにクレジットカー ドではなくても、振り込み(自動)で、有料版の購読ができます (↓) クレジットカード登録がイヤな方は、ご利用ください。 http://foomii.com/00023 ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 のバックナンバー・配信停止はこちら ⇒ http://archive.mag2.com/0000048497/index.html |