とめどなく上がっているように見える株価
Written by admin on 2024年2月10日 – 17:00
米国のS&P500は年初来4600から4997へと397ポイント(8.6%)上が り、日経平均は3万3200円から3万7117円と5177円(15.6%)上昇して います。米国株の約2倍の上昇率です(24.02.09) ・・・長文の正刊と増刊を毎週書くことは、物理的にはかなりの負担 ですが、自分の頭を追い込むためにやっています。書き終わったあと は、風船のように何もない。しかし1日経つと、幸いなことに、汲ん だ井戸のようにわいてきます。 〔問題にすること〕1989年のバブル株価だった3万9800円(現在から+ 5.5%)を超えるという見方が、市場の投資家の70%という。過剰な 楽観があるようです。バブル株価の特徴でもあります。 日経平均の5.5%の上昇は、短期変動の「ボラティリティ」の確率の 範囲なのであるかもしれない。問題は、2024年3月~12月の株価です。 〔予想〕例年3月には、1月、2月に買い越してきたガイジンファドが、 四半期決算のため、含み利益を確定する売り越しを行う傾向があるか らです(確率は約90%)。今年は例外年という要素は、いまのところ ない。 まず、日経平均が上がった原因を、投資家主体別の買い越し(買った 主体は上昇期待)と売り越し(売った主体は下落期待)から見ます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1407号:土曜増刊: とめどなく上がっているように見える株価> 2024年2月10日:有料版・無料版共通 【小割した目次】 ■1.主体別売買による判断の、前提の知識 ■2.日本の自社株買い増加の手助けは、東証が行った ■3.年初からの主体別買い越し、売り越し(日本株) ■4.投資主体別売買での予想 ■5.個人がファンドを出し抜くには主体別売買の予想をすること ■6.年初からの株価を上げた2つの原因 ■7.個人と機関投資家は売り越している ■8.ガイジンファンドの日本株への投資パターン ■9.2023年から24年のヘッジファンドの利益は少ない ■10.2024年3月の市場 ■11.後記:大切な人が亡くなる ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.主体別売買による判断の、前提の知識 〔前提〕主体別売買の前提として知っておかねばならないことは、東 証の総売買高(2月現在は5兆円/日と多い)のうち約70%が、ガイジ ンファンドからのものであることです。租税回避地のオフショアから のシステム売買です。顔は見えない。 日本の株式市場では、国内の機関投資家(銀行、生損保、民間ファン ド)は、リーンマン危機のあともほぼ一貫して売り越しているためガ イジンファンドの売買シェアが70%に高まりました。東証は東京にあ りますが、売買の中身はウォール街のNYSEと変わらないのです。 上がった週は売り、下がった週には買い越すという「逆張りの傾向」 が強い日本の個人投資家の売買は、東証の売買の30%くらいです。 個人投資家の所有シェアは、1970年の37%から20%に減っています。 一方、ガイジンの持ち株比率は、1990年の5%から30%へと6倍に増え、 持ち合いが多い国内金融機関の持ち株比率である30%と同じです。な お、持ち合いが多い事業法人のシェアは、22%です。まとめれば、東 証の株価時価総額(908兆円)の50%が持ち合いや長期保有で固定性が 高く、残り50%がガイジンファンドと個人投資家の、流動株でしょう。 ガイジンが、流動性の高い部分の売買シェアで70%(短期売買が多 い)を占め、持ち株シェアでも30%という構造変化が、日本のバブル 崩壊から7年目の金融危機だった1997年から起こっていたのです。 https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0705.html ◎1990年の株価バブル崩壊のあと、日本の株式の価格は、70%の売買 をするガイジンファンドに支配されています。このため、上げも下げ も、米国株のあとを追った価格です。 〔ポートフォリオの維持〕米国株が上がると、ポートフォリオの米国 株割合が、予定より増える。ファンドは、3か月はポートフォリオの 割合を、プログラムで一定に保つことが多い。理由なく、日本株も機 械的に買ってシェアを維持します。米国株が下がったときは逆です。 このため、米国株と日本株のサイクルが同期します。 ガイジンファンドが買い越す週や月のときは、 ・日経平均は、上がり、 ・売り越すときは、下がる。 この傾向には95%程度の相関性があって、例外は少ない。 【ガイジン買いと自社株買いが、日経平均を上げた】 2022年から、日経平均を上げる要素として、ガイジンの買い越しに加 わったのは、持ち株シェアを増やしたガイジンファンドが、日本の上 場会社に強く「自社株買い」を要求し、日本の会社はそれに応じて、 少なかった自社株買いを、10兆円スケールに増やしたことです。 2022年、23年には、約1000社が実行しました(上場企業の1/3)。(注) 2021年までの年平均では、5兆円から6兆円くらいでしたから倍増しま した。 現在は、株価時価総額に対する自社買いの金額は、米国と同じになっ ています。 2022年からの、日経平均の上昇には、 (1)ガイジンファンドの買い越しと(上昇要因の50%)、 (2)日本の、短期マイナス金利が続くなかで設備投資に回らない余 剰マネー(過剰な預金)が生じ、年10兆円に増えた自社株買いになっ たことがあります(日経平均の上昇要因の約50%)。 インサイダーによる「八百長相場」に近くなっているのが、日本の株 式市場です。証券会社と大手ファンドは企業と近く、インサイダーに 近い。自社株買いは、完全な法人インサイダーです。日銀とGPIF GPIFが筆頭である日本の政府系ファンドの、株ETFの買いもインサ イダーです。21世紀の株式市場では、売買の約70%はインサイダー市 場でしょう。政府や東証の意向で、株価の上昇操作ができることを意 味します(政府は政権支持率が下がる下降操作はしませ ん) 自社株買いは、発行済みの株のうち、市場で流通する株を減らして見 かけ上のEPS(1株あたり純益=もっとも重要な株価の指標)を上げま す。事業利益が好調だと見せ、投資家の買いを誘って株価を上げます。 「自社株買いの発表→市場からの買いの増加→株価上昇」になる。株 価時価総額の大きな会社ほど、自社株買いの金額は大きいのです。 ■2.日本の自社株買い増加の手助けは、東証が行った 日本の株は、EPSとPBR(株価÷純資産)が極端に低いという米国ファ ンドからの非難があって、2020年ころから東証はそれを受け、企業に 改善要求を出してきました。東証は、米国新自由主義(=グローバリ ズム)の「株主ガバナンス」の空気のなか、米国ファンドの要求を聞 き入れます。株主ガバナンスは、企業経営、人事、株価への株主の関 与を大きくする思潮です。 1990年代まで、「自社株買いは株価操作にあたる」として禁じられて いました。株数を減らすのですから、株数では、1株株価を上げる目 的の減資になるからです。 2020年の、コロナ後の日米欧の中央銀行が超金融緩和(金利0%でマ ネー供給15兆ドル:2180兆円)をしたことが、2021年からの米・欧・ 日の自社株買いの増加原因です(3カ国で1兆ドル:145兆円)。 米国株は、日本の6倍から9倍の大きさの自社株買い(4000億ドルから 6000億ドル/年)により、現在の株価の、30%部分が押し上げられて いると判断しています(ダウ3万8671ドル×30%≒1万1000ドル部分→ 自社株買い分を引けば2万7000ドル台。)。 2021年、2022年には、コロナ後の金融緩和(日米欧の通貨増発10兆ド ル:1450兆円)から、自社株価買いが急増しました。 2023年には、1)米国での自社株買いへの課税と、2)利上げの結果、 米国では30%くらい減少しましたが、日本、欧州では、依然、増えた ままです。 (日本と世界の自社株買い:2019-2023) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC167GJ0W4A110C2000000/ ■3.年初からの主体別買い越し、売り越し(日本株) 株価の原因としては、1)金利の変化予想、2)企業純益の予想、3) GDPの予想、4)雇用の変化、5)中央銀行のマネー政策の予想など、 多くの経済・金融指標が挙げられます。 株価は、3か月から6か月先の、経済・金融指標の投資家予想を「織り 込ん」で、売買され決定しています。 ◎こういった「織り込み」を理解しておくことが、株の売買にあたって の基本です。対象とする株価が、1)何を織り込んでいて、2)何を織 り込んでいないかという判断です。 【遅れた予想への重要な注意】 注意しなければならないのは、「市場の予想」を形成する、小さな情 報でも、それが出た途端に、株価はその情報を織り込んだ価格を実現 していることです。 ◎つまり、今日の株価には、3か月から6か月の、経済・金融指標の、 「市場の空気による予想」が織り込まれています。 例えば現在の米国株は、「4月から6月の米国FRBの利下げ」を織り込 んで、すでに上がっているのです。 〔株価とイベント情報〕株価では先の変化が、予想された途端に起こ ります。大型新薬の開発、AIや半導体でも同じです。発表があった日 に、株価は上げます。そして実際に生産されたときは下がることがあ ります。株価に織り込み済みの「古い材料」になったためです。 具体的に言えば、投資家の市場(勝負の場)で、「上がるという予想 が勝つと、すでに上がっています」。逆に「下がるという予想が勝つ と、株価はすでに下げています」。 ↓ 市場の上がるという予想を、今日の価格に織り込んでいる株を、個人 投資家の多くは、遅れて買って損をするケースが多いのは、このため です。また下がるという予想を織り込んだ株を売って、その後に上が って機会損をするのもこのためです。 金利、雇用、企業利益、通貨レートの、複合的な予想の変動で変化す る3か月以内の短期売買には、個人の参入は、なかなかむずかしい。 新NISA(年間の株とETFの投資1800万円までの売買益は非課税)に誘 われた株投資が増えているので、警告しておきます。 「行うな」というのではない。実質所得や年金が、下がる時代です。 投資信託としてやってもいい。重要なことは、今日の株価にすでに織 り込まれている市場の空気(代表は日経新聞の記事)に、惑わされな いことです。 市場の今の空気ではなく、2、3か月先の、市場の空気の変化を読まね ばならない。しかし報道は、起こった事実を報じます。多くの人は、 3か月先の変化の予想はしていない。 ■4.投資主体別売買での予想 株価を決めている、投資主体別の売買額の変化は、買い越し/売り越 しの結果を示すものです。 2021年からの日本株の特徴は、 1)ガイジンファンドが買い越して、事業法人が買い越すときは上が る。 2)ガイジンファンドが売り越すか、事業法人の買いが減るときは下 がるという、明確な傾向をもっています。 ■5.個人がファンドを出し抜くには主体別売買の予想をすること 1)経済・金融指標の予想で売買するのは、情報の予想の織り込みが 素早いファンドに、遅れます。 2)しかし投資主体別売買の、1か月、2か月先の予想では、個人であ ってもファンドに先行ができます。 安藤証券は、2016年からの主体別の買い越し、売り越しを東証の売買 データから集計してまとめています。1週ごとに更新されますが、週 間単位の売買なので、集計が約10日遅れます(これは東証も同じで す)。 いつも参照していますが、現在出ているのは、2024年2月の1週までで す。これでも、先の傾向を読むときの、参考になります。 (安藤証券:投資家主体別の買い越し/売り越し:週間単位) https://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html ■6.年初からの株価を上げた2つの原因 日経平均は、3万3200円から3万7117円と、5177円(15.6%)上がって います。上昇率は、米国株の2倍です。なぜ、上がったのか。 〔ガイジン買いの大きさが原因〕23年1月のガイジンファンドの買い 越しは、4週で2兆693億円という異例の巨額です。自社株買いが多く 含まれる事業法人の買いは3767億円です。証券会社の、短期の自己売 買の買い越しは2474億円であり、3つの主体の合計で、2兆6934億円。 そのなかで、ガイジンファンドの買い越しが77%を占めています。つ まり日経平均は、元日の能登半島地震と日航機事故の年初から、ガイ ジンファンドの大きな買い越しで米国株の2倍上がったです。 ↓ 2月、3月と上がって、市場最高価格(3万8900円)を超えるには、ガ イジンの大きな買い越しが続かねばならないことは、容易にわかるで しょう。 ■7.個人と機関投資家は売り越している 「逆張り」が多い癖がある個人投資家は、株価が上がった1月には 9370兆円売り越して、機関投資家(銀行、生損保、政府系ファンド、 投資信託)も、合計で1兆7200億円売り越しています。個人投資家と 機関投資家の売買は、株価を下げる要素だったのです。 日本の機関投資家の、保有株の売り越しは、日銀保有が37兆円に達し、 年金基金のGPIFが持つ国内株58兆円になって、株ETFの買い増しをし なくなった2019年からの約4年間は不変です。 今後も、日銀とGPIFが買い越すことはない。ゼロ金利国債の下落から、 FRBとともに財務超過スレスレなっている日銀は、逆に売って、株の 含み益を確定する方向です。GPIFは残高保持でしょう。 まとめれば、24年2月、3月も、 1)ガイジンファンドによるキャリートレード(マイナス金利の円を 借りて株を買うこと)を含む積極的な日本株の買い越しと、 2)自社株買いの増加がないと、2月末から3月末の株価は危うくなる でしょう。 (注)証券会社の、委託売買を超える自己売買は、受動的なものであり、 相場は作りません。 ◎日本株で、2020年代の相場を作っているのは、ガイジンファンドと、 自社株買いです。 【「クジラ」だった日銀とGPIFは買い終わっている】 アベノミクスの時期には、日銀の株ETFの買い越しと、GPIFの国内株 の買い越しが日本株を上げていました。 GPIFの国内株での運用は、総資産(226兆円:23年12月)の25%枠で す。海外株(ドル株)25%、国内債(国債)25%、海外債(ドル国 債)25%の、各々1/4のポートフォリオを守っています。 このポートフォリオは、株価が上がるときはいいのですが(2020年か ら現在まで)、下げる可能性の高い時期になると、危険です(2024年 3月~)。 GPIFの年金基金の、運用のポートフォリオ(↓)。226兆円の年金基 金の所有者は、年金保険を払ってきた国民です:1人平均で226万円。 https://www.gpif.go.jp/operation/53748269gpif/2023_3Q_0202_jp.pdf ■8.ガイジンファンドの日本株への投資パターン 昨年は、以下のパターンでした。3月、6月、9月、12月の四半期決算 では、「含み益を確定させる売り越し」が多い。プラスは買い越し、 マイナスは売り越しです。 以下は、ガイジンファンドの2023年のパターンです。決算月では、6 月だけ買い越しています。しかし、8月、9月と、その分大きく売り越 しています。 (安藤証券:投資家主体別買い越し/売り越し:週間単位) https://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html ▼ガイジンファンドの買い越し(+)、売り越し(-):2023年 ・1月+5090億円;2月+1864億円;3月-2兆2500億円、 ・4月+2兆1510億円;5月+2兆3907億円;6月+1兆5705億円、 ・7月+4043億円;8月-4081億円;9月-2兆314億円、 ・10月+9848億円;11月+1291億円;12月-4945億円。 ・24年1月+2兆269億円 2024年1月の、2兆693億円のガイジンファンドの、巨額買い越し (+)が、日本株を米国株の2倍も上げて、日本の市場に超楽観の空 気を醸成しています。 問題は・・・ファンドの四半期決算の3月です。 2023年の四半期決算では 3月は -2兆2500億円、 6月は +1兆5705億円、 9月は -2兆314億円、 12月は -4945億円。 2023年の合計では、この4か月で、-3兆2054億円の売り越しです(決算 月の平均では-8000億円)。 ◎短期運用のガイジンファンドが、四半期決算月(3、6、9、12月) に売り越す傾向は、過去から、変わっていません。 24年2月は買い越したとしても、3月には、相当に大きな2兆円以上の 「売り越し」に転換し、日本株上昇の含み益を確定する可能性が高い (確率80%か)。24年3月の、ファンドの売り越しを否定する要素は、 今のところ見当たらない。 20%の確率で、3月売り越しがなかったときは、先延ばしされた5月、 6月の売り越しが、3兆円以上に大きくなるでしょう。 まとめれば、2月の日本株は、約30日後からの下落の淵で、上がって いるように見えます。 3月から、世界の株価バブル崩壊(30%下落)に至るかどうかは、ま だ分からない。しかし、24年3月に、上がらないことあるいは下がる ことは、およそ決定しているようです。 ■9.2023年から24年のヘッジファンドの利益は少ない 日米の株価指数が上がるなかで、毎月メールで送ってくるヘッジファ ンドの利益率は、想定以上に低い(HFR合計運用益)。24年1月までの 1年間の、世界市場の株がポートフォリオの対象である、世界のヘッ ジファンドの平均利益は、以下です。 年間利益の低さに驚きます。 ヘッジファンドとインデックスファンドを合わせると、5000兆円以上 の投資預託マネーを運用するファンドは、世界の株式市場の、最大の プレーヤーです。世界に8000本はあるでしょう。 エクイティヘッジ合計指数 4.5%(2023年2月~2024年1月) ・HFRI400 6.5% ・エネルギー鉱物 -0.77% ・マーケットニュートラル11.31% ・成長株 4.81% ・ヘルスケア株 7.36% ・マルチ戦略 2.64% ・テクノロジー株 15.04%(もっとも利益率が高い) 特に2023年からIT&AIの期待成長が株価を引っ張っています。 イベント・ドリブン、マクロ、相対価値の1年の運用利益も、エクイ ティヘッジ合計指数4.5%という年間利益と、大同小異で低い。ファ ンドにマネーを預託した投資家には、不安が大きいでしょう。 反対売買のヘッジをすれば、損は小さくなりますが、保険のリスクコ ストの分利益率も低くなるのです。 ◎世界の大口投資家からの預託マネーを運用するファンドは、3月決 算では、低い利益率を、数ポイントは上げなければならない。損を出 すか利益率が低いと、投資家からの解約が増え、ファンドそのものが 消えるからです。 過剰流動性で一層膨らんだファンドへの、投資家のマネー預託は、預 金より不安定です。銀行の合計より、推計5000兆円の総資金量は大き くなっていて、ノンバンクまたはシャドーバンクとも言います。米国 では許容されている、銀行と証券を兼ねる、米英の投資銀行が作った のです。ファンドは国際金融資本の牙城になっています。 (注)1929年からの大恐慌後、1933年に作られた金融法が、日本にはな い「グラス・スティーガル法」であり、銀行と証券会社の兼業を許す ものです。ここから、投資銀行とファンドが大きくなったのです。な お米国の不動産融資は、地方銀行の領域です。 先週までの(1)正刊、(2)増刊、(3)正刊で、翻訳・紹介した 2025年からの、米国の金融変革を示す『Project 2025』には、維持可 能ではない資産格差(上位1%(330万人)の国民が、米国資産の54% をもつ)を作ってきた、FRBと投資銀行の解体・再編成も書いてます。 昨年来日して、日本人に株投資を煽ったウォーレン・バフェットは、 投資信託のバークシャーハサウェイを率いる、ノンバンクです。運用 資金は125兆円。株価指数や債券に投資するインデックス・ファンド のブラックロックは、もっと巨大であり、運用総資産は10兆ドル (1450兆円)です。バンガードは、6.2兆ドル(900兆円)です。世界 市場の、株の売買の約70%は、想像を超えるくらい巨大なガイジン・ ファンドが行っています。 ▼ファンド長期的な狙いは、世界の買収 2008年のアジア金融危機のとき(タイ・バーツ、マレーシア・リンギ ット、インドネシア。ルピア、韓国ウォンは暴落)、ファンドが、韓 国の5大財閥の資本をそっくり買収したことは、ご存知でしょう。現 代自動車、LG電子、サムスンの過半の株は、米国系ファンドのもので す。ITで世界的な企業に成長した韓国の大企業は、米国系です。 現在は、1ドルが150円に近い、超円安です。巨大ファンドは、円安の 日本の良質な大企業の支配権を狙っています。高い株価が暴落したと き、あるいは敗戦のとき底値で買収するのは、ロスチャイルドが150 年使った方法です。近代でも、マネーは戦争だったのです。現代では マネーとIT戦争でしょう。 日本で最高のトヨタの時価総額が48兆円、アップルは2.92兆ドル (420兆円!)、マイクロソフトは3.12兆ドル(450兆円)、現金が要 らない「株式交換」なら買収は容易です。 トランプとバイデンはともに、日本製鉄によるUSスティールの買収を 阻止します。この意味は、マネー戦争の観点からわかることです。 米国のIT企業の、高い株価(時価総額1000兆円)では、世界の主要企 業を買収し、世界を植民地にすることができます。マネーパワーとイ ンターネットを使えば、ウクライナやガザ・イスラエルのような近代 の物理的戦争は、要らないのです。 ■10.2024年3月の市場 ◎24年3月には、ガイジンファンドは、含み益を持ち越す買い越しで はなく、売り越しに転じ、米国株の2倍上がった日本株では、利益確 定をする可能性が高いと見ています。 トレンドとなった相場への投資は正しい。しかし、肝心なことは、1 か月後に下げの傾向が出たときすぐに逃げ、次の機会を狙う現金にし ておく準備を怠らないことです。 ■11.後記:大切な人が亡くなる 当方の見方は、市場の、20%の少数者のものです。 世界的な指揮者小澤征爾が亡くなりました。なぜか最近、日本にとっ て大切だった人がいなくなることが多い。88歳は寿命でしょうが、ひ どく残念です。ガンにかかったというここ数年、気にしていました。 人の記憶の時間である時代は人とともに消える。さっき小澤征爾の 「私の履歴書」(日経新聞)をネットで読みました。彫刻のようにム ダな言葉のない文章。懐かしい大音楽家が次々に出てくる。昭和の三 島由紀夫、小林秀雄、吉田秀和とも知己以上の親交があったという。 虎は死して皮(観念の記憶と、物理的な記号の文章と演奏)を残す。 35年経ち、昭和は彼岸になったのか。小沢指揮のマーラーの5番を聞 きました。当方には、評価する力はない。指揮では小沢、ピアニスト ではアルゼンチン生まれの巨匠マルゲリッチ、妊娠中も演奏会を開い たという烈女。両者の演奏はまだよく分からない。ピアニストではも う1名、私にはポルシェのように見えるポリーニも、何がコアか分か らない。後世の楽しみです。 最近発見したピアニストは、風変わりなイヴォ・ポゴレリッチ (Pogorelich)。演奏が心の波動に合致します。お薦めです。この3年、 ストリーミングのTIDALで聴いています。あらゆる楽曲と演奏があり ます。同じ曲を異なる演奏者で聞く。広大なバラエティがあります。 晩年は「サイトウキネン」を率いて、クラシック音楽の習慣がない長 野県の村の人たちに聞かせ、感情の共通語、音楽の喜びを味わった。 無料だったという。 あるときは聴衆が1000人だった。別の村では4、5人しかいなかった。 その前で、サイトウキネンのオーケストラが演奏することを想像して ください。たぶん初めて聞いた交響曲に、聴衆が涙を流していたとい う。 指揮台の小沢も慟哭(どうこく)するくらい感動したと書いています。 プロも演奏は人のために行う。文章も人のために書く。音楽のコミュ ニケーションの表現は、人に向かう愛でしょうか。小沢の考えと指揮 で感じることがこれです。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【プレミアム読者アンケート&感想の、項目のメド】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は、進みましたか? 3.疑問な点は、ありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、横顔情報があると、テーマ設定と記述の際的 確に書くための、参考になります。 気軽に送信してください。感想は、励みと参考になり、うれしく読ん でいます。質問やご要望には、可能なかぎり、回答をするか、あとの 記事・論考に反映させるよう努めます。 返事や回答ができないときも全部を読み頭に入れたあとと。読者の感 想・意見・疑問・質問は、考えを広げるのに役立ちます。 著者のメールアドレス:yoshida@cool-knowledge.com 購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール(↓)。 配送の管理は、著者ではなく配信サイトの「まぐまぐ」が行っていま 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