「金融抑圧」になった日銀の金融政策
Written by admin on 2018年8月3日 – 09:00
おはようございます。もっとも新しい有料版の前半部から6ページ くらいをお届けします。 18年7月末の、国債価格の下落(長期金利の上昇)、実際には、国 債の売りの超過の中で、定例の「日銀 金融政策決定会合」が開か れています(7月31日) (1)日銀の想定より「物価上昇が低いこと」を認め、 (2)長期金利の上昇は0.2%程度まで許容するが、それ以上になっ たときは、対策(買う国債の価格を高く指値する指値買い)をして 下げること、 (3)金利面では「フォワード・ガイダンス」の方法で金融緩和を 持続することが、例によって分かりにくく表明されています。 これを解くには、日銀のマネジャー以上の金融への知識が必要です。 「知識源」ですから、それを明らかにする義務を負っています。知 識の、狙いをもった実行がインテリジェンスでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <953号:金融抑圧になった、日銀の金融政策> 2018年8月3日:無料版(有料版の抜粋) 【有料版の目次】 1.ここまでに至った、基礎的なことの確認 2.フォワード・ガイダンスとは何か 3.日銀が、0.2%までしか金利上昇を許容しない理由 4.英国の金融抑圧 5.金融抑圧をフォワード・ガイダンスと言い換える日銀 6.英国の金融抑圧の歴史 7.戦後インフレの中の英国経済 8.金融抑圧の1946年から1959年の名目GDPの増加 9.現在との違いは、通貨の固定相場と国際金融 10.日銀の「フォワード・ガイダンス」という金融抑圧 【後記】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.ここまでに至った、基礎的なことの確認 表現の分かりにくさは、海外金融機関とファンドが「金融緩和の鈍 化(金利上昇、国債価格下落)」と見て国債を売り、直後に「中身 は金融緩和の強化(金利上昇の抑制策)」だったとして、国債を買 い戻したことにも表れています。 日銀の、金融政策の表明は、従来から、数字がなく形容詞と副詞の 「日銀文学」と言われ、分かりにくいものでした。 その中で年80兆円の国債買い増しと、6兆円の株ETF(上場投信)の 買いという「量的・質的緩和」は、異例に分かりやすいものでした。 ところが、 ・日銀が「物価安定化」と言い換えている「2%のインフレ目標」 の達成は無理との認識が、日銀内に生じ、 ・「量的・質的緩和」が目標を失って、ふたたび、金融政策につい て分かりにくい表現を使わざるを得なくなったのです。 達成目標がクリアでない政策は、何事も分かりにくいものになりま す。政策には、必ず目標があるからです。 もともと政策とは、行政の権限を与えられた政府・日銀が、目標の 達成を期すために実行するものです。行政とは、法によって制定さ れた内容を、政府機関が実行することです。 金融政策は、経済分野でのもっとも重要な行政です。行政は、国民 の税をもとに行われるものですから、「目標と手段を分かりやすく する義務」が政府・日銀にはあるのですが、その点は、顧慮されて いません。 ■2.フォワード・ガイダンスとは何か 会合でのキーワードは、これもまた分かりにくい「フォワード・ガ イダンス」でしょう。フォワード・ガイダンスという方法も、 2012年の異次元緩和以前は、ありませんでした。リーマン危機対対 策として、米・欧・中国・日本がとった「非伝統的」と言われる金 融政策のひとつです。 フォワード・ガイダンスとは、 ・日銀が、「将来の金融政策」を金融市場と国民に向かって表明す ることにより(つまり近未来の金融政策を約束することにより)、 ・金融市場を、政策の方向に誘導するものです。 金利の決定と国債市場では、通貨(ベースマネー)の制限のない発 行もできる日銀がメインプレーヤーであるため、金融政策を実行す ることができます。「国債を買うお金はいくらでも、無コスト作れ る」とされるからです(日銀の立場)。 しかし本当は無コストではない。国民経済での、マネー1単位の価 値の下落というコストを伴います。通貨価値と金利を下げるのが、 日銀の権限とされる信用創造です。 ▼長期金利0.2%以上は許容しない:国債価格が決める金利 7月31日の会合では、「長期金利0.2%以上は許容しない。0.2%以 上に上がれば、指値買いをして下げる」としました。 これは、「円国債価格は、将来にわたって下げない」と日銀が保証 したことと同じです。 (注)会合後には、0.10%に上がっていた長期金利が0.06%に下が っています。7月20日までの0.03%からすれば、まだ2倍ですが、金 融機関が「売っていた国債を買い戻した」ことを示します。 http://www.tokaitokyo.co.jp/kantan/term/detail_1166.html ・金利の上昇とは、「国債売り(オファー)の超過」による国債価 格の下落であり、 ・金利の下落とは、「国債の買い(オファー)の超過」による国債 価格の上昇を言うものだと理解すれば、日銀の金融政策が分かりや すくなります。 満期10年未満の中短期債を、今でもマイナス金利に誘導している超 低金利策は、国債価格を上昇させ、維持することが目的です。 あまり知られていない、国債の利回りを示しておきます。 【国債の金利:7月31日】 ・40年債 0.865% ・30年債 0.745% ・20年債 0.530%(20年以上は超長期債) ・10年債 0.060%(これが長期金利) ・5年債 -0.090%(5年債以下はマイナス金利) ・3年債 -0.115% ・1年債 -0.160% (注)既発国債1000兆円の、加重平均の満期は、財務省が満期償還 (返済)を将来に繰り延べる方針から、8年に長期化しています。 中短期債を減らして長期債を増やし、結果として10年債付近がもっ とも多くなったからです。 http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/main_rate.php 日々、金融機関の店頭の債券市場での、国債価格も売買する金融機 関のオファー額により、金利は変動していますが、金融政策会合の 後の7月31日のものを挙げています。 そういえば、今日から8月です。穏やかな暑さになればいいのです が・・・2週間は暑さが続くようですね。8月は、過去から、世界の 金融の転換点になることが多かった。米欧のファンド・マネジャー が長期休暇に入り、9月からはマネー運用の新年度を迎えるからで す。 トランプの登場から、世界の金融(ドルの価格)と貿易(米国の経 常収支の赤字)が、マネーを武器として、米国の利益を追求する戦 争状態にあると見ておいたほうがいいでしょう。 これが関税、核開発を名目にしたイランの制裁、新興国の通貨・株 売りによるドル引き揚げです。北朝鮮との首脳会談も、その一環で す。米ドル圏に入ることを誘ったのです。 【闇のなかの国際金融(国際金融はタックスヘイブン)】 日本に対しては、超低金利の修正による円高(ドル安)を要求して います。これが、0.2%までの金利上昇を容認という日銀の表明の 理由かもしれませんが、4000兆円の資金量をもつタックスヘイブン を含み国際金融は、公式の統計が及ばない闇の中なので、分からな い。 日本の株式市場で60%から70%の売買シェアを占めるヘッジファン ドの本拠は、ほぼ全部が、ごく一部の名前が出たパナマやケイマン 島やタックスヘイブンだからです。日経新聞はこれをなぜか「投機 筋」と書きます。 現物の売買より多い、先物・オプションの、デリバティブの売買を しているからでしょう。先物は、売買の差益を求めた、国債、債券、 株の取引ですから、投資ではなく投機になるのでしょうか。 その意味では、日経平均先物の売買をするシステムトレードも投機 でしょう。国債に対しても、システムトレードが作れますが、まだ 作ってはいません。 バックテストでは、金先物は、日経平均のおよそ2倍の利益です。 上げも下げも、トレンドが株よりはっきりしているからかも知れま せん。通貨(ドル先物)では、なぜか、利益が出ません。理由を研 究しています。各国政府の、データに出ない人為的な介入が大きい ためか? 【国債の金利と他の金利】 国債の、市場での変動金利がベースになって、その国の預金、貸付、 社債の金利が決まっています。世界に金融を解放した「金融ビッグ バン」のあとは、実は、規制金利ではなく、銀行の裁量でつける自 由金利になっています(日本は1995年から)。その自由金利は、国 債の金利をベースにしているのです。 ・貸付金利=国債金利(%)+リスクプレミアム(%) ・預金金利=国債金利(%)-預金保険料-事務手数料 【金融の自由化】 金融の自由化(中国では解放)とは、外貨との交換(売買)を規制 せず、上限を設けないことです。円の売買は1日に200兆円もありま す。 外貨との交換額が巨大なので、金融の自由化がない規制金利の時代 では有効だった公定歩合(日銀が、国際担保などで銀行に貸すとき の金利:2014年から0.3%)の、実質的な効力がなくなったのです。 (注)人民元は、政府が決める規制金利の体制であり、外貨の売買 は自由化していません。ドルでの元買いは自由ですが、元での外貨 の買いは、元の海外集出になるので貿易額に制限しています。 ■3.日銀が、0.2%までしか金利上昇を許容しない理由 なぜ「国債の長期金利0.2%以上を許容しないのか」。日銀がこれ をいうことはありません。長期金利0.2%以上を許容しないという 金融政策にも、目標があるはずです・・・ ・・・恐縮ですが、ここまでにさせていただきます。これ以降では、 金利を人為的に抑える金融抑圧が、長期的に、どんな結果をもたら すか、書いています。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です 】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、テーマ選択 と内容記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は励みと参考になり、うれ しく読んでいます。時間の関係で、返事や回答ができないときも、 全部読みます。共通のものは、後の記事に反映させるよう努めます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com 購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ■1. 有料版の新規登録は、最初、無料お試しセットです(1か月 分):月中のいつ申し込んでも、その月の既発行分は、その全部を 読むことができます。最初の1ヶ月間分は、無料お試しセットです。 その後の解除は自由です。継続した場合に、2か月目分から、課金 されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めた後、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。 【↓会員登録と解除の、方法の説明】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist 登録または解除は、ご自分でお願いします。 (有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html ・・・以上 ◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます ※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 のバックナンバーはこちら ⇒ https://archives.mag2.com/0000048497/index.html?l=hpt0a0092e ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 の配信停止はこちら ⇒ https://www.mag2.com/m/0000048497.html?l=hpt0a0092e |