こんにちは、吉田繁治です。久しぶりで申し訳ありません。先月の<
紀行:都市を憧憬させる街 パリ>以来、この無料版の発行が遅れ恐
縮に存じます。。
ライブドアの堀江貴文氏によるニッポン放送に続くフジテレビジョン
の買収劇が、話題と関心を呼んでいます。マスコミ各社は、自分の業
界のことでもあるので詳細に取り上げています。
既存メディアのほぼ共通の論説的な反応は「堀江氏のインターネット
とTVのメディア融合の意図とビジョンが見えない。」ということで
す。堀江氏が何をやろうとしているのか分からないということです。
「見えない」という言葉に違和感を感じます。
80年代以降、主に米国で流行った古典的とも言えるM&A(エム・
アンド・エー:併合・買収)という方法が、この国では少なかったた
めでもあります。
内容を解けば、極めてクリアで単純です。
【1.M&Aが成功するには】
M&Aは、
(1)その企業の「資産と経営資源」が、十分な利益を生むように活
用されていないと判断されるとき、
(2)あるいは、公開された資本市場(株式マーケット)で、株価と
して反映されていないときに起こります。
M&Aでは、マーケットの企業価値評価(株価)より、自分の判断が
先行していなければならない。マーケットが、企業価値を株価として
織り込んでいれば、M&Aの意味はないからです。
企業価値が、資金市場で低く評価されているから、言い換えれば皆が
気が付いていないからM&Aが成功する。
M&Aでは、まず株式市場を驚かせねばならない。
「なぜ?」と皆が思えば、M&Aの第一幕は成功です。
【経営資源という、評価が分かれるもの】
「資産」は会計上のものです。帳簿上の資産は取得価格や時価で金額
になって、上場会社なら誰でも見ることができるように公開されてい
ます。公開とは、誰でも買うことができるという意味です。
「資産」は数字になっていても、資産を生かす「経営資源」は金額へ
の置き換えが難しい。経営資源を一言で言えば、利益を生む元になる
もの、つまりリソース(資源)です。
社員、組織、業務システム、ビジネスモデル、顧客との関係、経営者
の先見の総体が経営資源を構成します。これらは会計上のバランスシ
ート(貸借対照表、つまり資産、借金、資本の目録)に数字で載る資
産ではない。
われわれは「資産+経営資源」を総体で金額評価するのに、株価とい
う方法しか持っていません。
M&Aが起こるときを、具体的に言えば、
・資産を十分に活用したと想定するときの株価時価総額(例えば将来
の可能時価2兆円)が、
・現在の時価総額(今のフジテレビの総時価約8000億円)より大
きなときです。
フジテレビの「資産+経営資源」に対し、今の株式市場の評価は80
00億円ですが、M&Aを仕掛ける側の評価は、もっと高い。だから
買う。安く買えば利益が出るからです。
可能価値から見れば低くしか評価されていない株を51%以上買い、
代表者や取締役を変えて経営を変えれば、マーケットが評価する企業
価値(=時価総額)がもっと上がると考えるのがM&Aです。
【2.株価形成のゆがみ】
まとめれば、今の経営と市場の見方が含む「株価形成のゆがみ」を先
に見つけ、利益を得る方法です。その点で、一般の人が株を買う動機
と変わらない。金額が大きいだけの違いです。
経営を一言で言えば、資産と経営資源の活用によって、利益を生むこ
とです。今の経営が十分に利益を生んでいない、またはマーケットの
評価に偏りがあると思う人が、M&Aを仕掛けます。
まずこの問題から解いて行きます。
LBO(レバレッジド・バイ・アウト)という、買収するフジテレビ
の資産を担保にいれることを約束した3000億円〜4000億円相
当の外資からの資金調達までもTVで解説されるようになっています
ね。(注)実際には5000億円が必要になるでしょう。
M&Aの「公開買い付け」も、ダイエーの企業再生に群がった商社、
ファンド、イオン、IY堂、ウォルマートなどの行動と本質で同じで
す。
自分か、または自分の意を受けたCEOと取締役が経営をすれば、資
産を活用しもっと利益を上げることができ、株価も上がるという判断
から企業を買う。
しかし「株を買うこと」から、金額を大きくし「企業を買う」と言っ
た瞬間に、過去のわが国の常識から飛躍します。
企業は売買するものとは見られていなかったからです。だからニュー
スになった。人々の会社というものに抱く常識を壊すものだったから
です。
M&Aができるのは、少数のファンドマネジャーが、多額の金額を預
かって運用するファンドの資金が世界中で増えたからです。
【3.日本の株式市場】
株価の低さを収益の機会と見るM&Aが行われなかった日本では、M
&Aをやりつくした米国との比較では、株価が安いままの会社が目に
つくからです。
日本の会計基準も、順次米国風に変わっています。そうすると数字を
見ただけで、米国企業に比較したときの株価評価の低さも発見できる。
そうした変化が起こっています。
米国人の考えには、いつも単純化の傾向があります。言葉に言霊が含
まれているという思考法を取らないからでしょう。
日本の株式市場では、世界で最大の個人金融資産1400兆円をもつ
個人の売買が極めて少ない。銀行が運用力を失ったので、米国の年金
の401Kのような株での自己運用も、今後増えるだろうと世界は見
ているようですね。
米国株が、日本に比べ高止まりしている理由は、90年代末に個人の
資金を呼び込んだこと、そして、貿易黒字国の日本そしてアジアが米
国債と米国企業の債券を保有し、資金提供しているためです。
今、米国ファンドはドルの20%下落のリスクを感じ、他の通貨での
運用先を探しています。堀江氏のマネーはそこから来ている。
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<Vol.206 :「利益」はどこにある?(1)>
【目次】
1.本質はトービンのq(キュー)
2.純資産と会社価値
3.マスコミ一般における超過利潤の存在
4.買収の本質
5.根拠がないインターネットとマスメディアの融合
6.今のTV局は衰微することが確定している
7.目指すはファンドのミドルマン
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■1.本質はトービンのq(キュー)
トービンは、ノーベル賞をもらったイェール大学の経済学者。「企業
はなぜ、新しい設備と会社を作らないで、既存企業を買収することが
あるのか?」ということを経済合理的に研究した。
M&Aはトービンのqによって、理論的な市民権を得たと言えます。
決して難しい理論ではない。常識と一致します。
▼当たり前のことですが・・・
トービンの結論は、
・既存企業の資産と経営資源が「十分に」活用されず、
・マーケットが評価する株価も相当に安いとき、
・企業買収が生じるということです。
[店頭で32万4000円の価格(現在のフジテレビの株価)がつい
ている商品が、その価格以上の価値があると見られたとき、買われる」
ということです。これは株を買うことであって、当たり前のことで
しょうね。
しかし金額を大きくすると、株を買うことも性格を変えます。
企業買収のM&Aが起こるのは、[同等の会社を作るための総費用>
その会社の現在の株価時価総額]の時です。
M&Aを仕掛ける側の考えは、自分で長年をかけて会社を作るより、
公開企業のなかから安い株を見つけ買収したほうが得だということで
す。
わが国では、株式を公開することが企業を売ることだとは一般に考え
なかった。商品は売っても、企業は売買の対象ではないという考えが
ありました。
外部からの資金の調達を、会社を担保に売ることと等しいとは考えな
かった。増資での資金調達も株主からの借り入れですが、なぜか「自
己資本の調達」とされていた。この自己資本という感情的な表現には
、論理的な誤りがあります。
会社にとって、株主は外部からの資本提供者だからです。
【フジテレビ】
フジテレビの05年3月18日(金曜日)時点での時価総額(株価×
発行済み株数)は8257億円です。
8257億円(上がる前は約6000億円でした)は、今のフジテレ
ビに相当する会社を新しく作るときの総費用より安いと見たのが、堀
江氏です。買収を支援したのが、外資のファンドです。
M&Aを支援をするファンドがあるから堀江氏が買収力をもったと言
えます。彼は自分の「信用」を活用しています。
発行株の51%以上(現在は4129億円分)を買い占め、経営権を
支配するのがM&Aです。支配できる理由は、過半数以上の株をもて
ば、経営にあたる取締役の選任権を独占できるからです。
http://quote.yahoo.co.jp/quotes?SYMBOLS=4676&detailed=t
(注1)事実、フジテレビの25%くらいの株主であるニッポン放送
は、買収前の株価純資産倍率(PBR:Price Book Value Ratio)が、
1倍くらいでした。純資産とは無形の経営資源を含まない帳簿上の
資産です。そのため純資産は解散価値とも言います。
■2.純資産と会社価値
純資産、つまり解散価値(=資産評価額−負債額)は、数字になって
いるので誰でも分かります。解散価値とは、その会社組織を解体し、
資産を売却したときの価格です。
しかしその資産を、経営で使って活用する「経営資源の価値(会社価
値)」は、評価(アセスメント)がしにくい。
「純資産±経営による活用価値=会社価値」という図式が成り立ちま
す。経営による活用価値が少ないと市場が見たとき株価は純資産のみ
の評価に近づきます。これがPBR(株価純資産倍率)の1です。
放送は政府による許可産業です。自由には作れない。「公共性」とい
う分かりにくいものがあるため、政府の認可対象とされている。
▼規制産業の超過利潤
規制産業のマスコミをM&Aで買収しようとする人は、過去、ゼロで
した。従って、そこにチャンスがあると見た。
規制産業には、自由に参入ができ激しい価格競争をする業界であれば
得られないような「超過利潤」があるからです。
どこにその超過利潤が見えるか? 意外に簡単なところです。
■3.マスコミ一般における「超過利潤」の存在
大手マスコミは、
(1)編集能力と編集権、
(2)TVなら視聴率(新聞なら発行部数)が経営資源の本質でしょ
う。
番組の多くは外部の下請けプロダクションが作っている。番組企画も
、プロダクションが出すことが多い。
フジテレビの社員は単独で1380人、株式持合いでの関連会社を含
める連結社員数は3255人です。
以下、数百字を使い、あえて週刊誌風に言います。買収の本質にかか
わる「超過利潤」の存在を証明するからです。
社員の平均賃金は1529万円と高い。
平均年齢は39.8歳です。
賃金は日本の上場会社の2倍以上に相当するでしょう。
http://profile.yahoo.co.jp/biz/fundamental/4676.html
マスコミは一般に年収レベルが高い。航空会社も官僚も、政府関連企
業も似ています。これらは規制産業に特有の「超過利潤の存在」と解
釈ができます。
この賃金を誰が負担しているかといえば、最終的には国民です。テレ
ビの収入である広告費は、宣伝される商品売価の数%、ときには2桁
%を超える構成要素だからです。
他方、新興企業のライブドアは、468名(連結で1019人)。平
均年齢30.1歳、平均年収501万円です。フジテレビと見事な対
照ですね。
http://profile.yahoo.co.jp/biz/fundamental/4676.html
以上で、週刊誌風の記述を終わります。
結論は、「超過利潤がある企業を買収し、リストラを含む経営改革を
すれば、企業利益は大きく増える可能性が高い。」ということです。
■4.買収の本質
本質は、フジテレビの超過利潤にあるでしょうね。それが賃金になっ
ている。
フジテレビの社員に、ライブドアの社員の3人分もの仕事の能力、管
理力、企画力、実行力、有益な番組を作る創造力があるのかと言えば
疑問です。しかし賃金差で言えば3倍です。
経営資源が会社利益を生むように十分には活用されていない。
ここに疑問があると見れば、買収後の「経営改革やリストラ」でメス
を入れることができる。そうすれば、フジテレビの利益は、今の数倍
になる可能性がある。
今の株価は、もっと上げることができる可能性がある。
買収される側の社員も、超過利潤があることがよく分かっているでし
ょうね。ここから「権益」を守るための抵抗が起こる。
ライブドアがフジテレビを経営すれば、今のような高い賃金やポジシ
ョンに伴う厚い待遇は得られないだろうと思うのは普通のことだから
です。
この点をどう判断しますか?
【判断のポイント】
フジテレビの高い年収は、
・既存マスコミ一般における超過利潤の存在を示すのか、
・あるいは、社員の高い能力と働きの成果を示すのか。
超過利潤であるとすれば堀江氏の買収は成功します。その賃金が、社
員と組織の実力が正当に評価されたものから来ているものなら失敗し
ます。
フジテレビに規制産業としての超過利益と特権があると見たのが堀江
氏です。
■5.根拠がないインターネットとマスメディアの融合
▼インターネット
インターネットの本質は、情報提供の経路と提供方法を変え、「情報
の価格を下げること」です。価格を下げることによって顧客を増やす。
新しい企業が行うことの本質は、どの産業領域でも価格破壊です。
[商品価値=商品の効用・便益÷価格]です。番組が同じでも、それ
を作って提供するコスト(=価格)が半分になれば、顧客にとっての
商品価値は2倍になる。
インターネットのWebサイトの価値は、建物や機械設備の物的な資
産ではなく「顧客との関係の多さの価値」です。サイトの経済価値
(=企業評価)はクリックして訪れる人の数で決まる。
銀座通りの地価が高い理由は、多くの人が集まるからです。地価も本
質では、インターネットのWEBの価値と同じです。
【集中】
放送は電波の届く範囲での「地域産業」でした。インターネットは少
なくとも世界の10億人を潜在顧客にするグローバル産業です。
しかし、参入障壁が極めて低いグローバル産業であるためにこそ、自
分求めるものにたどり着く手間(時間コスト)が高い。そのため「ネ
ーム・ブランド」への一極集中も生じます。有名ブランドは、選択の
コストを下げてくれる機能を果たします。
地域産業では2番手、3番手も存在価値がありました。しかしインタ
ーネットやIT産業では、ちょうどマイクロソフトのように、一番手
だけが巨額利益を得ます。2番手には利益が少ない。
こうした性格をもつものを「インターネット・ブランド価値」と言っ
てもいいでしょう。
ライブドアだけでは、人を多く集めるメディアとしてのブランド価値
は低い。その点で、明らかに規制産業であるフジテレビのほうが価値
が高い。
「フジ−ライブドア」となったとき、ライブドアは信用を獲得し、イ
ンターネットブランド価値が高まる可能性がある。一極のブランド価
値も獲得できるかもしれない。そうした狙いも含まれます。
▼しかしメディアの本質が異なる
ところがマスメディアのインターネット参入は、世界のほぼすべてで
、成果を上げていない。過去に、新聞社が異なるメディアであるラジ
オやテレビの放送局を作ったときの成功のようなわけには行かない。
インターネットは本質が「個対個」だからです。
放送は「1:大衆」でした。新聞も放送も「1:大衆」でした。メデ
ィアの性格が似ていたので、新聞社が放送局を作ることができた。
しかしインターネットはメディアの本質においてマスメディアと違う。
新聞記事や放送のWEB化では有料化での成功はほとんどゼロです。
今のTV番組をインターネット化することでの成功はないと見ていま
す。
堀江氏が、マス・コミュニケーションとインターネットのメディア融
合を信じているとすれば、彼は、見事に失敗します。
インターネットで、いつでもどこでも、好きなTV番組をセレクトし
てできるものを「TVライブラリー(TV図書館)」と名づけましょ
う。
TVライブラリーで、人は今のTV番組を見るようになるのか?
インターネットには回線のデータ容量制限があるので無理です。
送信データ量が極めて大きい「動画+音声」のサイトに、例えば10
00万人が同時にアクセスすれば、光ファイバーであっても瞬間に動
かなくなる。
そのため、世界中で回線パンクの状態が起こります。
地震のときの、殺到する電話の不通と同じ状態です。
電波を使う放送(1:多数)と、回線に圧縮したデジタルデータを流
すインターネット(1:1)では、情報伝達の方法が異なる。
インターネットは、
・放送のような「1対同時多数」ではなく、
・「1対同時少数」のメディアです。
マスメディアのインターネット化は無理なことです。
これは人々の想像とは異なって、夢想に過ぎない。
今の電波を使うマスメディアの放送は、インターネットには変わらず
に残る。(マスコミの方々、安心されたでしょうか?)
今のフジテレビをインターネット化することはできない。
カラスは黒いと言うのと同じくらい明白なことです。
多くの人は見ないTVライブラリーができるだけでしょう。
堀江氏の狙いがこれなら、ダメな先見です。
2年もせず、インターネットのAOL(アメリカン・オンライン)が、
総合メディア企業タイム・ワーナーを数兆円で買収したような失敗
に終わる。そうなれば先見性のある事業家としての生命も終わります。
■6.今のTV局は衰微することが確定している
アップルのi-PODも加わって、すでに音楽CDのマーケットが、ダウン
ロードという新しい方法に変わり、わが国では3600億円(過去の
60%)くらいに小さくなっています。その分、一曲の価格が下がっ
た。
テレビ番組も、DVDやハードディスクに貯められるようになると、
コマーシャル価値が飛躍的に下がる。この方法は、今後2年で普通の
ことになります。これによって、TV局が今得ている超過利潤がどん
どん減ります。
テレビ自体には、次第にリアルタイムの放送メディアとしての価値し
か残らなくなる。これは事件の「劇場化」という方向です。
スポーツ中継は、結果が分かった後のビデオでは興味が激減します。
見えない将来を共有し、選手のギリギリの挑戦に仮想的に参加し心を
躍らせるリアルタイム性に価値があるからです。
NHKは高い受信料を国民からとる今の方法では、存在が無理になり
ます。受信料を払わない人が増えているのは、番組の価値がないと多
くの人が思い始めたからです。
基金が空洞化しつつある国民年金の不払いと同じ原因です。
受信料を払っているのは、単に惰性からでしょう。
今のNHKの寿命はせいぜい5年でしょう。昨年の紅白歌歌合戦を見
てそう思った。紅白の視聴率が今の半分に減れば、NHKは維持でき
ない。
情報を売る産業は、情報が安くなる情報化時代には、多くが死滅か統
合されます。雑誌、本、CDマーケットの縮小がその証拠です。情報
が入手しにくく高かったから、インターネットが広がったのです。
▼重要:モノと情報の違い
商品は1人で多くを買うことができます。これがGDPの成長だった
。TVや車は何台でももつことできます。住宅も広くできる。モノは
1人が大量に持つことができます。
ところが情報は大量に持っても意味がない。時間を使って見たり読ん
だりしなければ、DVD、CD、本はごみです。
「時間消費」を売る情報産業では、例えば本を読めば、TVの視聴時
間は減ります。インターネットで情報を集めれば、TVや新聞に使う
時間は減る。1人1人24時間という時間資源は有限です。
上限で、24時間×1億2700万人=日本人の総時間資源、しかな
い。
インターネットにつなぐ時間が増えれば、新聞、本、雑誌、TVに使
える時間が減ります。メディア産業の規模は、生活時間のように有限
です。
ハリウッドが世界化し、日本の映画産業は衰えた。
今、TVの総視聴時間は減りつつあります。
人口が減れば、もっと減る。
しかし、人々がインターネットに使う時間は増えます。そのためTV
の視聴可能な時間は減って、コマーシャルの総広告料も減ります。
衰微することが確定しているTV局をなぜ買収するか?
少なくともここ2年、規制による超過利潤があるうちに買収し、話題
を作って株価を上げ、高いうちに空売する手段を使う売却でしょう。
(注)空売りとは、今の株価の1000円が高すぎると見たとき、手
数料を払って株を借り1000円で売って、期限が来たとき買い戻す
契約での売買です。買い戻すべき日に800円に下がっていれば20
0円が利益になります。見込みと違って1000円が1300円に上
がれば300円の損をします。
■7.目指すはファンドのミドルマン
以上述べたようにインターネットとTV局の融合は不可能な事業です
。堀江氏は、メディア業ではなくファンド業をやろうとしています。
ライブドアはそのための踏み台です。
低金利の数兆円を動かすファンドマネジャーになろうとしているのが
堀江氏でしょう。3年も前に無料版で書いた<フロントビューとバッ
クミラー>の孫正義氏の方法を真似ています。
http://www.cool-knowledge.com/0206Frontview(1).html
ファンドマネジャーは自分の資金を使うのではない。
預かって運用し、利益を上げて配当を払う「ミドルマン」です。
このミドルマンが、企業経営に大きな影響力をもつようになった。
買収を避けるには、経営者が、資産を活用し十分な利益を上げること
です。
フジテレビはそうでないと見られたのです。
▼ファンドバブルの利用
ファンドマネーは今後もどんどん増えます。ファンドバブルの時代を
迎えたと判断していいでしょう。
彼が仕掛けた買収劇の本質は、低金利のファンドバブルの利用です。
リスクを恐れ行き先がないマネーが、短期の運用益を求めて世界であ
ふれています。
ほんの一例を言います。日銀当座預金には、今30兆円もの無利子の
銀行からの預け金が眠っています。銀行が有効な貸付先や運用を見つ
けていないからです。
4月1日からペイオフが解禁されます。これによって、地銀の定期性
預金が激減します。多くは、支払いが保証される決済性の預金になる
。決済性預金の金利はゼロです。ここにも無金利の、動きやすいマネ
ーがあふれています。
5000億円が必要なフジテレビの買収劇を見て、世界の金融の背景
に、日本発の膨大な無利子資金があるために、これができると思った
のです。
借りたお金で、土地ではなく企業を買う。日本の株は、米国からは少
なくとも30%くらい安く見えています。
日本の株式市場では、売買の50%(1日6000億円〜8000億
円)は、租税回避地のオフショアからを含むガイジン買いです。ガイ
ジンの持ち株で言えば、360兆円の時価総額のうち70兆円(20
%)です。
日本人は、金融機関を含む企業も個人も一貫して「売り」でした。
株価純資産倍率(PBR)が1倍に過ぎなかったニッポン放送の株を
先駆けて買い、堀江氏に売り抜けて、すでに数百億円の利益を確定さ
せた村上ファンドの村上世彰が上手でしょう。
元をたどれば日米の国債増発が原因である「ファンドバブル」の利用
です。
こうしたM&A劇から見える新しい変化は「わが国でも32歳の一人
の事業家に、ファンドは数千億円もの運用を託すようになった」とい
うことです。
<利益はどこにある>のテーマは、素材を変えて続けます。
今回の素材は、ライブドアでした。
【後記】
ファンドバブルの最終決着は、金利の上昇です。
金利が上がれば、低金利を前提にしている多くのファンドが潰れます
。
ちょうど、日本の土地バブルが崩壊するきっかけが、金融引き締めう
(金利の上昇)だったのと同じです。
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▼(1)有料版の最新号の目次です。
<201号〜203号:50年の対称>
【201号の目次】
1.50年の見事な対称
2.態度:「確定した未来の受容」について
3.日本人の自然的な歴史観
4.自分のこととなれば・・・
5.日本の人口構造に特有な問題は、政府政策からだった
6.重要:優生保護法の施行以降、谷間世代ができたこと
7.生産性の上昇という希望
8.日本の設備投資(総固定資本形成)は、圧倒的に高かった
【202号の目次】
1.マクロ経済:GDP(国内総生産)と人口問題
2.もっとも難儀をするのは肥大した政府部門
3.国民負担率=(税金+年金・社会保険料+赤字国債)/GD
P
4.ミクロ経済:企業活動と個人所得
5.事例:40%は人員過剰の小売部門
6.生産性を2倍にする
7. 結論
【203号の目次】
1.転換の時期:諸前提
2.生産性について
3.いたるところでの現象は共通原因をもつ
4.減損会計のプラス効果
5.企業経営の障害要因ではない
6.年金の支払額と受け取り額
7.政府事業である年金・福祉の問題
8.年金額、所得額の比較
9.現在の高齢者世帯の所得
10.増税という、優良企業や金融資産を国外に逃がす策
11.金利変動と債券価格騰落の原理
12.短い結論
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